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2019年08月31日16:01

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ヴァインベルク: 交響曲第2番&第21番

(CD1)
交響曲 第2番 Op.30(1946年)

 クレメラータ・バルティカ(弦楽合奏)
 ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(指揮)

 録音:2018年12月7ー9日,Vilniaus Plosteliy Studje,ヴィリニュス

(CD2)
交響曲 第21番 Op.152「カディッシュ」(1991年)

 ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
 ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(ソプラノ)
 Oliver Janes(クラリネット)
 Georgis Osokins(ピアノ)
 Iuri Gavryliuk(コントラバス)
 クレメラータ・バルティカ(弦楽合奏)
 バーミンガム市交響楽団(管弦楽)
 ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(指揮)

 録音:2018年11月24ー26日,シンフォニー・ホール,バーミンガム

CD:DG 4836566 (セッション)


このCDは,作曲家ヴァインベルクの初期と晩年の交響曲を収めたアルバム。今年で生誕100年を迎えたヴァインベルクを記念するCDであるとのこと。

そして,このCDは指揮者,ミルガ・グラジニーテ=ティーラのドイツ・グラモフォンレーベルへのデビュー・アルバムでもある。彼女は1986年,リトアニアのヴィリニュスに生まれ,グラーツ芸術大学を卒業したのち,ライプツィヒ,ボローニャ,チューリヒでも研鑽を積む。2016年からバーミンガム市交響楽団の音楽監督を務める。

ミチェスワフ・ヴァインベルク(1919−1996)は,ポーランド生まれのユダヤ人作曲家。ヴァインベルクはワルシャワ音楽院で学ぶが,1939年のナチス・ドイツのポーランド侵攻に伴い,ソ連に亡命する。そこでショスタコーヴィチの知遇を得て,作曲家生活を送る。作曲に関しては,ショスタコーヴィチから大きな影響を受けたとされる。このディスクを聴くと,ショスタコーヴィチを経由してマーラーの影響も感じられる作曲家である。

このアルバムに収められた2曲の交響曲は,アメリカの作曲家,サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」を思い起こさせる。とはいえ,しかし,同じ暗い曲調の作品とはいえバーバーの音楽のようなアメリカの楽天性の対極にある,あくまでもスラブ世界の悲痛なまでの雰囲気が濃厚に立ち込める。おそらく国土が戦場になったか否かを超えた,民族的・文化的な違いに根ざした相違のような気がする。

ヴァインベルクの交響曲の第2番と第21番の共通点は,墨水画のような淡い味わいにある。この作曲家の作品はこの2曲しか聴いていないが,原色の油絵とは異なる色調の音楽を書いた音楽家ではないかと思う。しかし,第2番と第21番が同じく淡い色調の音楽だとしても,第2番が典型的な墨水画だとすると,第21番はパステル画のような色彩が感じられる。まだ,戦争の記憶が生々しく残っている1946年に完成した第2番と最晩年の1991年に書き上げた第21番とでは色彩や曲調の点で大きな隔たりがある。第21番では,音楽のパレットの色も増え,オーケストラは弦楽器に管楽器や打楽器が加わるのはもちろん,ヴァイオリン,ピアノ,クラリネット,コントラバスの独奏も参加し,ソプラノによるヴォカリーズの独唱も登場する。ある意味とても色彩的な音楽といえるが,フランス音楽の色彩とは質的に異なる,言うなればドイツ表現主義を思わせるやや毒々しい色調を感じさせる。マーラーの音楽のエコーが微かに響いている。もちろん,ショスタコーヴィチの影響は一聴瞭然であるが。

これら2曲の交響曲を聴いて,これらの作品に耳を傾けるべき季節は夏ではなく秋なのではないか。ヴァインベルクの交響曲は,向こうから押し寄せてくる音楽ではない。耳を澄まして細かなニュアンスを聴き分けることを求められる音楽なのだ。そして,作曲者がこれらの作品に織り込んだ過去の音楽の引用を察知し,その細やかなニュアンスを嗅ぎ分ける作品なのではなかろうか。たとえ鈍い感受性を棚上げしたとしても,おそらく開放的な暑い夏には向かない聴き方を要求する作品のようだ。

とはいえ,率直なところ,晩秋に聴いたとしてもこれらの作品を堪能できるか否か自身はない。やはり薄味過ぎる味付けが個人的な好みに合ってない可能性も否定できない。近頃,クレーメルとクレメラータ・バルティカは,ヴァインベルクの作品を盛んに録音しているようだが,あまり食指が動かない。彼らの最近の傾向は淡白過ぎるように,ヴァインベルクの音楽も薄味過ぎるのだろう。

ヴァインベルクの名前を最初に聞いたのはかれこれ20年以上前の話。知り合いの演奏家から,「最近,ヴァインベルクというとても美しい音楽を書く作曲家を見つけた。彼のピアノ五重奏曲を演奏してみたい」という話を聞いたとき。そのとき以来,ヴァインベルクのことはずっと気になっていた。これから涼しい季節を迎え,ヴァインベルクに馴染めないのは,音楽の味付けのせいなのか,集中を妨げる気候のせいなのか,答えが出るはずだ。
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