よぉ、ひさしぶり。
そっちでは愉快にやってんのか?まぁ、おまえのことだから、どこでもきっとうまいことやっていけるんだろうと思うけどな。今ならダンキンドーナツだってピザだって、いくらだって食い放題だ。よかったな、夢が叶って。
こっち?こっちか。こっちは、まぁ、相変わらずだな。相変わらずだ。みんなそれなりにやってる。
あれから、おまえが言ってたこととか、思い出すよ。結婚式でダンスを踊ってたところとか。おまえが好きだって言ってた『バグダッド・カフェ』のこととかも。
おまえがよく、安っぽい商業主義で塗り固められたものたちに純粋に感動してるのを、あの頃おれはよくからかってたよな。そんな時おまえはおれのことを、「キリスト教の福音に耳を傾けない、異教徒である頑迷な10世紀頃のフィンランド人を憐れむ宣教師」のような目で苦笑したり、怒ったりしてたよな。
おまえが最期のときに、"I love you"って言ったって聞いて、おれは気付いた。おまえの安っぽさは黄金でできた安っぽさだったんだ、って。おまえは生きてるみんなを最期に祝福してくれたんだな。
ありがとな、おれたちのマリア様。
まぁ、でもそれはそれ、これはこれだ。おれは改宗せずに異教徒として生きるつもりだ。そしたら再会したときに、この年老いたフィンランド人を眺めて、またあの目つきで笑ってくれるんだろう?
DATA:Leica M6 Summicron 2/50 Foma Fomapan400 f5.6 1/125
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