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2019年08月09日12:42

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Paris agreement

2017年に書いた原稿です。
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トランプ大統領のパリ協定離脱宣言に欧州で怒りの声

 米国のドナルド・トランプ大統領がパリ協定から離脱する方針を明らかにしたことに対し、環境問題への関心が高いドイツなどEU加盟国では強い反発の声が上がっている。

*「米国の信頼性が失墜」

「米国は、パリ協定離脱宣言により、歴史的な合意を弱体化させ、各国の地道な外交交渉の成果をないがしろにした。米国の信用性は地に落ちた。米国の世紀はこれで完全に終わったことになる」。ドイツのポツダム気候影響研究所のハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー所長は、地元紙「ポツダム・ノイエステ・ナハリヒテン」紙とのインタビューの中でこう慨嘆した。
彼は、トランプの決定は米国自身にとって不利益を及ぼすと考える。その理由は、欧州と中国が地球温暖化防止の戦いの先頭に立ち、環境への負荷の少ないエネルギー技術を進歩させることになるからだ。それに対し米国は、孤立主義によって過去のエネルギー技術にこだわり続けることになる。シェルンフーバーは、「トランプと彼の側近は、未来を見据えるのではなく、タコツボにこもって過去ばかり振り返っている」と形容した。
彼は同時に、米国がパリ協定に背を向けても、地球温暖化との戦いの手を緩めてはならないという姿勢を打ち出した。「米国の離脱決定によって、パリ協定が崩壊したわけではない。世界の国の中でパリ協定に調印しなかったのはシリアとニカラグアだけで、そこに米国が加わった。他の国々は粛々と温室効果ガス削減を続ける。最も重要なことは、温室効果ガスの排出量が世界で最も多い中国が、削減のための努力をこれまでよりも強めるかどうかだ。そうすれば米国の離脱決定が、逆に他の国々の削減努力を加速することになるかもしれない」。

*パリ協定のイメージに深い傷

ドイツの知識人の間には、「来るべきものが来た」という反応も強い。シェルンフーバーによると、各国で地球温暖化問題に関わっている学者や官僚の間では、去年トランプが大統領に当選した時から、すでに不安感が漂っていた。トランプは、2012年に「地球温暖化は中国が米国経済に損害を与えるために、でっちあげたものだ」と発言していたからだ。彼は、温室効果ガス削減のための世界的な枠組みが、米国の石炭産業など化石燃料に関連する産業を弱体化させ、失業者を増やすと主張していた。
ゲッティンゲン大学の経済学者、シュテファン・クラ―ゼン教授は、「仮に米国がパリ協定から離脱しなくても、トランプが大統領である限り、米国は温室効果ガス削減に真剣に努力しなかっただろう。ただし米国にとっては、トランプが大統領を辞めた後に温室効果ガスの削減努力を再開できるように、パリ協定に残っていた方が良かった」と指摘する。
だがトランプの決定が、パリ協定のイメージに与える政治的な「傷」は過小評価できない。パリ協定に調印した国々は、「地球温暖化に歯止めをかける」という大義のために、国民経済へのコストが増えても、パリ協定を順守しようと決意した。だがこれらの国には、エネルギー集約型の産業など、「環境保護のために経済成長にブレーキがかかる。石炭や褐炭を使い続けるべきだ」と主張する反対勢力もいるはずだ。トランプの決定は、こうした反対勢力にとって、追い風となる。欧州で最も懸念されているのは、米国に追随してパリ協定を離脱する国が現れることだ。その意味で中国がパリ協定順守の方針を表明したことは、ドイツなどEU加盟国をひとまず安心させた。

*「トランプは市場の流れを変えられない」

ドイツには、「トランプの決定も、エネルギー市場の動向には逆らえない」と指摘する識者もいる。
ベルリンのドイツ経済研究所(DIW)でエネルギー・環境部を率いるクラウディア・ケムファート部長は「トランプは、米国のこれまでの地球温暖化防止のための努力をぶち壊した。だが世界中で再生可能エネルギーによる発電のコストは急速に下がり、原子力と火力発電のコストが上がっている。世界的なエネルギー転換の流れを、もはや止めることはできない」と強調した。
ドイツの有力紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)のワシントン特派員ヴィナント・フォン・ペータースドルフ・カンペン記者は、「米国のエネルギー関連のCO2排出量の増加率が近年鈍化しているのは、政府の規制によるものではなく、市場の要請だ」と指摘する。カンペンは、その理由として、まずフラッキングによるシェールガスの採掘が進んだために、エネルギーコストが低下し、CO2排出量が比較的多い石炭火力発電からガス火力発電への移行が進んでいることを挙げる。米国のエネルギー情報庁(EIA)は、来年初めてガス火力発電所による発電量が、石炭火力を上回ると予測している。
もう一つの理由は、再生可能エネルギーのコストが以前の予想を上回る速度で減少したこと。EIAは、米国でのエコ電力の比率が来年15%に達すると予想している。このためカンペンは、「米国がパリ協定から離脱しても、同国のCO2排出量の増加率は鈍化する」と主張するのだ。
世界の主要機関投資家の間でも、化石燃料を使う企業への投資をためらい、再生可能エネルギー関連産業への投資を増やす動きが目立っている。
今後EU諸国は、この世界規模のエネルギー転換に、トランプの決定がどう影響を及ぼすかに注目せざるを得ないだろう。

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