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2019年07月12日22:55

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【映画】Girl/ガール

http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=4761144


7月10日(水)、シネリーブル梅田にて、『新聞記者』の次に鑑賞。
客入りはざっと6割くらい、その9割以上は女性だった。


公式 http://girl-movie.com/about.php




数週間前、アメリカ版『グッド・ドクター』で、
たまたま「トランスジェンダーである思春期少女」の物語を見た。

 (#14 彼女たち)https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07KYDYQH2

 『Girl』の作品理解に深く関係するので、あらすじを紹介したい。


 クインは12歳。見た目は綺麗な女の子だ。
 トランスジェンダーである彼女の右精巣は、がんに冒されていた。

 第二次性徴遮断薬の副作用で、深刻な骨減少状態であることも判明した。
 服用中止すべきだが、この薬をやめれば第二次性徴が始まってしまう。
 しかし、性別適合手術は18歳にならないと受けられないーー。


 「醜い男の体になんか、絶対なりたくない!!」と、クインは激しく訴えた。

 すると、それを聞いたKYの権化(笑)マーフィーが、グッジョブな提案をした。

 「ならば、精巣を両方取ればいい。男性ホルモンが出なくなるので一石二鳥だ」

 クインは目を輝かせた。「どのみち取るつもりだから、今取って欲しい!」と。
 これまでの人生でずっと悩み抜いてきたからこそ、彼女の判断に迷いはなかった。


 しかし、家族や他の医師達は、この提案に「気持ちが」ついていけなかった。

 トランスジェンダー治療に理解がある両親と違い、祖母は断固として受容できない。
 「所詮子供の考えだから」「将来、子を持てなくなる決断をするのはやめて!」と
 かき口説き(彼女の体・彼女の人生でもないのに)自分の価値観を強く主張した。

 家族が治療方針で揉めていたとき、クインは睾丸捻転を起こし、緊急手術に。
 即時の決断を迫られた親と医師達は怯み、結局「子種を残す」道を選択する。

 手術から目覚めたクインは、結果を聞いて落胆するも
 「私、18歳になったら必ず性別適合手術を受けに来るから」と力強く宣言した。
 
  ーーー END ーーー





さて、『Girl』について。

主人公ララを一目見た瞬間から、私は彼女に激しく感情移入した。

なんという自然さ。 なんという説得力。 なんと透明な美しさ!


「踊れる」新人、ビクトール・ポルスターの発掘は
ビョルン・アンドレセンの発掘に匹敵するかもしれない!と思った。




トランスジェンダーのララは15歳、バレリーナを目指している女の子。

努力が実り、難関のバレエ学校に編入学できた。ただし、8週間は様子見期間。


男手一つで彼女と6歳の弟を育てるタクシー運転手の父は、 理解ある良き父親だ。
ララの学校のために転居し、治療面でも彼女を一生懸命に応援している。
親戚にちゃんと根回ししたおかげで、ララは自然に振舞えている。


けれど、ララは、ただでさえ内向的な性格の上、思春期でさらに口が重い。
パパが心配して悩みを聞き出そうとすればするほど「大丈夫」と言って閉じる。

本当は、大丈夫なんかじゃないから。

その葛藤は、シスジェンダーの人たちでも、多かれ少なかれ経験すると思う。




医者たちも、バレエ学校の先生たちも、一応の理解はある。

でも、日常の「ささいなこと」が、ララの心を傷つける。


「君は完璧な女の子だよ!」と力説する、独善的な男性精神科医。

バッキャロー! 「この体が完璧」なら、誰も悩まないっつーの。
患者の気持ちを否定し、建前を押し付け、本音を封じる無神経ぶり。

「およそ15歳は、見た目を非常に気にするお年頃」という基本理解もないとは、
児童精神科医の看板が泣くね!


「ララ、悪いがちょっと目をつぶっていて。
 君が女子更衣室を使うことが不快じゃないか、他の女子に挙手してもらうから」
と、男子もいるホームルームの場で言う男性教師。

マジ、デリカシー! 横着するな! 影で個別に聞け! いじめの元凶になるわ!


優しいパパでさえ、うっかり失言する。「どんなタイプの男性が好み?」

「男が好きか女が好きかも、まだよく分からないわ」と、ララは煙に巻いていた。
「性自認」と「性的指向」は別物だ。
たとえば、「理系か文系か」と「甘党か辛党か」に相関関係がないように。




他方、子どもたちは分かりやすく残酷だ。
奴らは相手が一番痛いところを本能的に察知し、容赦なく攻撃してくる。

無理やり学校へ行かせようとするララに抵抗する、幼い弟は
「ビクトール、やめて!」と、わざと男名前で呼んだ。

クラスメイトを誕生会に招いたボス女子は「皆にアレを見せて」と強要した。
「もうやめなよ」と注意する子もいたが、気が強いボスには通じない。
結局、ララは卑劣なセクハラ&パワハラに屈する他なかった。

ブース! お前みたいな性格ブスは、プロのバレリーナに絶対なれないって!


黙って耐え続けるララの代わりに、私は泣きそうになりながら、腹の中で毒づいた。




そうやって、ララは密かに自分を追い込んでいく。

膨らみを隠すためにホワイトテープを貼った下腹部は、かぶれて真っ赤になっていた。

(ホワイトテープはかぶれるけど、パパの言う特殊ショーツで抑えるのは絶対無理!)

通常は12歳から徐々に慣らすポワントを急激に履いたつま先は、ひどい血だらけ。

股にがっちりテープを貼っているから、レッスン中は絶対に水を飲まない。

他の女子達に体を見られたくないから、レッスン後にシャワーも浴びない。




ララが、自室で裸を鏡に映しては苦悩する姿は、本当に切なく、痛々しかった。

第二次性徴抑制薬を使っていても、体はどんどん男になっていく。
膨らまない胸。広い肩。伸びる身長。そして…。


稽古場で、ララは他の女子と比べて頭一つ以上大きい。明らかに男子並みだ。
骨も太い。つまり、リフトする男子にとって「重たい」はず。

シスジェンダーの女子でさえ、背が高すぎだとか、胸が大きすぎだとかで
バレエ学校をクビになってしまう厳しい現実なのに…。

(オードリー・ヘップバーンは背が伸びすぎてバレリーナの道を泣く泣く断念した)

(胸が大きくて退学処分になる子のエピソードは↓『二人のスワン』にあった)
  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1967734408&owner_id=1833905



見初めた男に思い切ってアタックし、せっかくいい雰囲気になっても、
ララは相手に秘密がバレる前に、自ら逃げ帰るしかない。

しかし、その様子は↓『リリーのすべて』と全然違い、素直な共感を誘った。

  https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1951461005&owner_id=1833905




ストレスと厳しいレッスンで体重がどんどん落ち、衰弱したララは、
ついにドクターストップ。今のままでは手術できないと宣告された。

人一倍頑張ってきたのに、初めての舞台公演は、とうとう出られなかった…。




ラストに流れる「オンブラ・マイ・フ」に癒された。

瑞々しい感覚にあふれる、思春期ものの傑作。

ただし、「バレエ映画」としては、見所があまりにも少なすぎる。笑







【以下、結末ネタバレ】




このままでは手遅れになる。 ある日、ララは恐ろしい決断に踏み切った。


彼女は氷を準備し、アパートのドアをわざと少し開けて、救急車を要請した。

それから、自室へ行き、氷で冷やした下腹部をハサミで切り、倒れ込んだーー。



一度「男の体」に変化してしまったら、もう2度と元には戻らない。

(カバちゃんみたいに、命の危険を冒して全身整形しても、骨は太いまま)

ララの体は、もはや その一線を超えつつあった。



踊るために。 本当の自分らしく生きるために。

彼女はこうするより他になかったのだ。

女だからこそ、バレエの世界を少し知ってるからこそ、私はララに深く共感した。




ただし、「男の子を育てたオカン」目線で言うと、この結末には疑問がある。

前置きした『グッド・ドクター』の話で説明した通り、
体の男性化を防ぐには「精巣を2つとも」取らなきゃダメなのだ。

また、陰嚢(精巣)は「冷却」や「恐怖」によって自動的に縮んでしまう器官。

だから、ララの目的を達しようとするなら
「冷やす」のではなく「温めて伸ばす」ことこそが必要になる。

出血を抑えるために冷やすのは「切った後」の話だ。

ハサミを1回しか入れてなかったみたいだし、彼女は何を切ったんだろう…。

勇気を出して超〜!!!痛い目を見たのに
まったくのムダだった…という残念な結果でないことを、ただ祈るばかりだ。



それにしても。


トランスジェンダーの性別適合手術は、第二次性徴前に行えないものか?

特に「心は女」の場合、体が変わっちゃってからでは、取り返しがつかない。


そもそも、トランスジェンダーとは
「生まれながらに決定しているタイプ」なのであって、

「まだ子供だから、大人になったら気が変わる」類のものではないはず。

少数派である本人の苦労もよく知らず、本人の人生に責任も取れない大人達が、
「いつ、どうするか」を決めていいものでは断じてないはず!と私は思う。





ケイケイさんの感想
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972170674&owner_id=1095496

zooeyさんの感想
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972290732&owner_id=547825




「描きたかったのは、誰もが思春期で体験する、
 自己イメージと現実との間で引き裂かれる苦しみと成長の物語です」

ルーカス・ドン監督インタビュー  https://bunshun.jp/articles/-/12674



【トランスジェンダー】映画『リトル・ガール』  2021年12月06日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981033781&owner_id=1833905

 
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