去って行く差し入れのお菓子

　最近まで、オイラの勤めている現場の一つは急激に人が少なくなっていた。
　それで、他の現場からヘルプの人が来ている。
　でも、それも、最近、新しい人が入るようになり、人手不足はじょじょに解決されてきたので、ヘルプで来ていた人も元の現場に戻ることになった。

　ところがである。
　うちらの現場ではあまり喜ばれていないのであった。
　その理由はヘルプの人はお菓子を差し入れで持ってきてくれるからである。
　しかも、そのお菓子というのが美味しい物ばかりだったので、なおさら出て行かれるのをよしという雰囲気ではないのであった。

　なんでも、ヘルプの人はお金持ちがたくさん住んでいる街にあるお寺のお嬢さんで、檀家の人達からたくさんの差し入れをもらっているので、その一部をうちの現場に持ってきてくれていたのである。
　それを考えると、差し出されたお菓子は高級さを感じる美味しい物ばかりであった。
　その上、ヘルプの人は有名なお嬢様学校の出身とだそうで、なんでそんな人が清掃の仕事なんてやっているんだと、みんな不思議に思うのであった。

　ヘルプの人が来なくなるというので残念な空気が流れている中、なんとヘルプの人はうちの現場で働いていたいと望んでいた。
　そこで責任者は、オイラが働いている地区の担当マネージャーにそのことを伝えるのであった。
　けれでも、却下されたらしく、元いた現場に戻るのであった。

　仕事の能力が良くて、その上、お菓子を持ってきてくれるのである。
　とてもおしい人材をなくしてしまったと、みんな、残念がるのであった。