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2019年07月06日05:17

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おもてなしと過重労働(下)



 私は、世界でもトップクラスにある日本のサービスの水準を低くするべきだと言っているわけではない。私が提案しているのは、過剰サービスを無くすことだ。たとえば、私はパン屋で1個1個のパンを別々にビニール袋に入れてから、大きな袋に入れることは、不必要なサービスだと思う。客の側がサービス期待度を下げることによって、社会の過剰サービスを減らし、より多くの人々が労働時間を減らしたり、現在よりも多い有給休暇を取れるようにしたりすることである。
 私は日本で収入が少なくても、生活のゆとりを楽しめる社会を作るための第一歩は、過剰サービスをなくすことだと思う。企業や商店が過剰サービスをやめることによって商品の価格を引き下げ、労働者の負担を減らすことは、政治が変わらなくても可能なはずだ。これは民間経済が率先して行うことができる改革だ。
 その意味で、一部の宅配便会社が日曜日の配達をやめたり、小刻みな配達時間の指定を変え始めたりしたことは、歓迎するべきだと思っている。我々消費者は、働く人々の生活の質にも思いを致すべきだ。つまり我々ユーザーも意識を変えることを求められている。企業への依存心や手厚いサービスを求める甘えを減らすことである。そのためには、自分で出来ることは自分でやるという基本的な姿勢が重要だ。
 営業時間についても、日本は顧客の都合優先が当たり前になっている。たとえば日本のデパートや小売店では、閉店時間が過ぎても顧客がゆっくり買い物をしているのを見かける。ドイツではあり得ない光景だ。この国では閉店時間になったら、時間ぴったりに客が追い出されるのは常識になっている。デパートの閉店時刻直前には入り口に警備員が立ち、シャッターを下ろす準備を始める。
 日本のこの慣習も顧客の都合を大事にする一種の「おもてなし」なのだろうが、従業員にとっては労働時間が長くなり、重い負担である。本来客は営業時間の中で買い物を楽しむべきであり、従業員が休む権利も尊重するべきではないだろうか。
 みんなが自由時間を楽しめる社会を作るためには、客も従業員に対するいたわりの気持ちを持つ必要があるのではないだろうか。みんながちょっとした不便を我慢し、サービスに対する期待値を下げることによって、みんなの負担を軽くするのだ。こうした客側の意識改革は、「働き方改革」の中でも重要なポイントだと思う。
(・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de

 


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