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2019年07月05日04:50

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Omotenashi

おもてなしと過重労働(上)

 日本のサービス文化、おもてなしは世界でもトップ水準にある。だが日本の暮らしには何となくゆとりがない。そう考えている人は多いのではないか。
 ドイツは逆である。サービス精神は薄いし、おもてなし貧国である。大半のドイツ人の暮らしは質素であり、日本人ほど消費活動に重きを置かない。
 それでも私は全体としてみるとドイツが豊かな国だと感じている。その最大の理由は、全ての人が仕事だけに束縛されずに、自由時間を楽しんでいるからだ。人口が一極集中していないので、大都市に住んでいても自然の中で息抜きをすることができる。日本に比べると、「会社の都合」だけではなく「労働者の都合」が配慮されている社会だと言っても良い。
 そのゆとりを生んでいるのは、1日10時間を超える労働が禁止されていることや、社員に対して最低24日間の有給休暇を与えることが義務付けられていることなど、法律や規則だけではない。
 むしろ重要なのは、人々の意識だと思う。たとえばこの国の人々は自分で出来ることは自分で行い、他人に頼らない。商店やホテルでも過剰なサービスやへりくだった態度は期待しない。このようにサービスへの期待度が低くなっているので、サービスを提供する側には心の余裕が生まれる。宅配便の会社に務める人も、帰宅していない客に荷物を届けるために、何度も電話をして在宅を確認する必要はない。スーパーマーケットやレストランの店員も、身体の前に手を組んでお客様に最敬礼をする必要はない。ドイツではお客さんと店員の目線の高さは日本ほど大きく違わない。店員は客に隷従するような態度を見せる必要はない。いわんや外国人の店員に対し「外国人ではなくてドイツ人の店員を出せ」などと無茶を言う客はいない。
 日本では企業、他人に対する依存心や過剰な期待感が、知らず知らずの内に社会の中で過剰なサービスを増やし、労働者の負担を重くしているのではないだろうか。過剰な期待感は、「自分は金を払うのだから、客として手厚いサービスを受けて当然だ」という甘えでもある。日本で店員さんの丁重なサービスを見ていると、こういう期待感を持つ客を怒らせたくないという畏れが感じられる。(続く)
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de




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