下記は、2019.6.13 付の 産経ニュース【北京春秋】 です。
記
北京でサッカーの試合を観戦したときのことだ。
試合前、場内アナウンスでアウェーのチームの選手紹介が始まるや、スタンドから「シュー!」という声がわき起こった。隣の友人は「ブーイングだよ。品がないね」と嘆いた。
漢字で「嘘」と書いてシューと発音する。言葉自体にウソの意味はない。反対や不満の意を示す擬声語だという。
その後、意外なところで再び「嘘」に遭遇した。天安門事件30年の取材で1989年の民主化運動に参加した元大学生から話を聞いていたときだった。
89年5月19日夜、政府が戒厳令を近く布告するとのニュースが流れると、「天安門広場に泊まり込んでいた学生たちから一斉に『シュー!』の声がわき起こった」という。
彼によると、それから半月後の天安門事件で民主化運動が武力弾圧されたその年の秋、北京でこんな出来事もあった。
当時の政府報道官、袁木氏がある大学で講演し、先の運動について「反革命暴乱だ」と厳しく非難した、そのときである。突然、「嘘」の声が上がった。それはアッという間に会場全体に広がり、袁氏は講演を続けられなくなったらしい。
天安門事件後、学生たちは報復を恐れて沈黙したとされている。でも、無抵抗というわけではなかったのだ。(藤本欣也)
https://www.sankei.com/world/news/190613/wor1906130021-n1.html
ログインしてコメントを確認・投稿する