mixiユーザー(id:5456296)

2019年06月06日22:45

180 view

コンサル集団に変われない銀行は捨てられる 再編統合しても、社内がややこしくなるだけ

 下記は、2019.6.6 付の 東洋経済オンライン に寄稿した、橋本 卓典 氏の記事です。

                       記

 地方銀行の2019年3月期決算は、全体の約7割が純利益で減益か赤字となり、2020年3月期も同様の見通しだ。これまでの銀行決算ですっかり珍しくもなくなった有価証券取引の益出しや不良債権処理費用の圧縮という苦し紛れの「利益捻出策」を除く、正味の収益力の悪化はいよいよ深刻といっていい。

 原因は、構造全体にある。預金などの短期で資金を調達して長期で運用することによる「長短金利差」で稼ぐという伝統的な銀行のビジネスモデルが崩壊したからだ。既成概念にとらわれず、ビジネスモデルの終焉が示すこの意味を真剣に考えねばならない。

 直言すれば、「再編統合で規模拡大すれば銀行は生き残れる」という認識はもはや古い。旧来発想の銀行同士が一緒になっても事態は打開できていないのが現状だ。

 筆者は、これからの銀行経営が直面する改革の難しさを鑑みるに、むしろ安易な再編統合は、社内政治をはびこらせるリスクばかりを増大させる恐れがあると考えている。何かを変え、管理するには、規模は小さいほどいい。優先すべきは規模ではなく、ビジネスモデルの抜本的転換だ。

構造不況に追い打ちをかけるデジタライゼーションの波

 銀行は、長らく「資金需要があれば、審査をして、格付けに基づいて貸します」を続けてきた。しかし、企業は長期にわたり生産拠点の海外移転を加速し、財務戦略も見直してきた。M&A(合併・買収)すら金融機関には頼らない企業もあるくらいの時代だ。

 いくら低金利でも有利子負債の拡大には慎重な企業が少なくない。銀行は、もはや日銀のゼロ金利政策を悪玉論と呪うだけでは済まない状況なのである。さらに、押し寄せているデジタライゼーションの波が旧型銀行にとって、決定的追い打ちとなるからだ。 

 できるだけ店舗には行かず、対人接点を持たずにスマートフォンで諸事万端、手続きを済ませたい10〜20代の「Z世代」を中心とした消費行動(筆者は「行かない革命」と呼んでいる)は、銀行のみならず百貨店、スーパーなどの流通はもちろん、働き方、生き方にまで革命的変化を起こしている。

 こうしたデジタライゼーションの猛烈な普及は銀行に、預金・送金・決済といったトランザクションバンキングサービスの自動化を迫る。そうした変化は、今後数年間で劇的に進むだろう。すでにメガバンクでも業務削減の動きが顕著だ。

 かといって、トランザクションサービスに従事していた人材を営業に配置転換すればいいという単純な話では済まない。金融庁は、資産運用の活性化を重要政策として掲げ、顧客本位の取り引きを求めているためだ。投資信託の回転売買、手数料の高い外貨建て保険商品や複雑な仕組み債の販売、資産形成につながらないアパートローン、カードローンなどにも監視の目を光らせている。

 苛烈なノルマで営業を推進して荒稼ぎする伝統的な手法も長続きしない。結局、営業に人手を回しても、現実的には経費に見合う収益につながらず、人手がコストを圧迫するのは目に見えているというわけだ。もはや銀行が社会に提供する価値に照らし、その給与が高すぎるという現実を直視せざるをえない。

 当然、経営が考えるのは人員削減だ。しかし、生き残りのために規模拡大や再編統合に邁進し、肥大化した組織で社内政治に忙しい多くの銀行員にとって、まさかの「人切り」には相当の抵抗があることは想像に難くない。

「課題解決型のコンサル集団」に生まれ変われるか

 では、「未来の金融」とは一体どのようなものか。

 それは「銀行が銀行であることをやめ、未来創造業として生まれ変わること」だ。かつて人力車を引いたり、馬車の御者(ぎょしゃ)をしていた人間がドライバーになったように、銀行員の仕事もいずれ変わる。

 未来に必要になるのは、取引企業がグーグル検索だけではたどり着けない課題解決策を提供する「銀行員の総コンサルタント化」だ。銀行によるビジネスマッチングなどの押しつけ型(プロダクトアウト)コンサルではない。融資機能も持ち合わせているが、顧客が真に悩んでいる課題の解決まで伴走型で取り組むコンサルティング集団だ。顧客企業の生産性向上、IT(情報技術)インフラの導入、人材育成など、事業者の悩みは実に深く、幅広い。

 また、銀行がこうしたコンサルサービスを展開するには自行の組織改革も不可欠だ。銀行本部からコンサル営業に人員を送り出すにしても、本部の決裁承認手続き、報告、経営会議の議事録、本部申請書、社内稟議(りんぎ)などを簡素化、効率化しなければならない。

 顧客の悩み事をせっかく受け取ってきたのに「やりっ放し」では元も子もない。顧客の課題情報の管理や解決のレスポンスの早さも含めた、銀行の本部と営業店の生産性向上は不可欠だ。皮肉を言えば、自分の組織内でさえできない生産性向上の改革を銀行が顧客企業に導入できるはずもない。

 さらに言えばペーパレスなどの目に見える変化はもちろん、社内政治を持ち込まない組織文化づくり、真の意見交換ができる会議の運営など、旧型銀行の常識を捨て去るスピード感と実行力が求められる。これらを同時に行うにはシステム戦略、店舗統廃合などのコスト戦略、人事・業績評価を「総取っ換え」しなくてはならない。基本ソフト(OS)を交換するくらいの改革の覚悟が必要だ。実は、このような改革は一部の銀行ではすでに始まっている。

持続可能な未来を描くために「原点回帰」せよ

 地銀グループの子会社や、地銀が中心となって設立している地域商社にも銀行の未来を変える1つの可能性がうかがえる。

 山口銀行を傘下に持つ山口フィナンシャルグループの地方創生コンサル専門子会社「YMFG ZONEプラニング」(下関市)は、地域全体の課題をコンサルし、解決に取り組む会社だ。日本マイクロソフトと組んで、自社のペーパレス化・職場を選ばないフリーアドレス化に取り組むだけでなく、企業・自治体の導入提案、支援を通じた地域全体の生産性向上を目指している。

 ほかにも副業・兼業を含めた首都圏からの人材還流でベンチャー企業と協業し、長門湯本温泉のまちづくりファンドも組成した。下関市のまちづくり事業の受託業務では、デザイナーのナガオカケンメイ氏が創設したD&DEPARTMENTなどと連携し、ワークショップや観光ガイドの作成にも取り組む。これまでの「お堅い銀行」のイメージとは、かけ離れたセンスが光る。

 北海道銀行が中心となってつくった地域商社「北海道総合商事」(札幌市)も地銀業界で話題だ。

 ロシアやベトナムなどでの商機拡大を後押しするユニークな商社だ。企業進出支援はもちろん、寒冷地技術を活用したホテル建設プロジェクトの参画やゴミ処理施設の輸出をも手がける。農業法人と共同で植物工場への野菜の生産指導、ベトナムでの高糖度のトマト栽培、野菜の買い取りと道内外への販売、牛丼チェーン「松屋」のロシア進出支援など農業や食の販路拡大、生産性向上にも本気だ。

 今、地銀では未来に絶望し若手が大量に早期退職をしている。金融庁も地銀の持続可能性を点検するために導入する「早期警戒制度」で、ヒューマンアセットの頑強さを確認する方針だ。地滑り型で若手が大量退職する銀行の持続可能性が警告信号であることに議論の余地はない。

 一方、ここで紹介した地域商社などで主人公となっているのは同じ銀行員であることを忘れてはならない。「理想論だ」と耳をふさいでいる場合ではない。取引企業の持続可能な発展、個人顧客の着実な資産形成を通じて「地域の役に立つ」という原点回帰をせずに、一体、どのような未来を描けるのかに目を向けるべきだ。

 https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%83%ab%e9%9b%86%e5%9b%a3%e3%81%ab%e5%a4%89%e3%82%8f%e3%82%8c%e3%81%aa%e3%81%84%e9%8a%80%e8%a1%8c%e3%81%af%e6%8d%a8%e3%81%a6%e3%82%89%e3%82%8c%e3%82%8b-%e5%86%8d%e7%b7%a8%e7%b5%b1%e5%90%88%e3%81%97%e3%81%a6%e3%82%82%ef%bd%a4%e7%a4%be%e5%86%85%e3%81%8c%e3%82%84%e3%82%84%e3%81%93%e3%81%97%e3%81%8f%e3%81%aa%e3%82%8b%e3%81%a0%e3%81%91/ar-AACrVIm#page=2
0 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する