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2019年05月28日16:55

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ビリーブ 未来への大逆転(On the Basis of Sex)

 アメリカの貧しいユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は、すべてに疑問を持てという亡き母の言葉を胸に努力を重ね、名門ハーバード法科大学院に入学。だが1956年当時、500人の学生のうち女性は9人、女子トイレすらそこにはなかった。家事も育児も分担する夫マーティ(アーミー・ハマー)の協力のもと、大学を首席で卒業したルースだったが、法律事務所で働くことは叶わなかった。当時は女性が職に就くのが難しく、自分の名前でクレジットカードさえ作れなかった時代。やむなく大学教授になったルースは、70年代になってさらに男女平等の講義に力を入れ始めるのだった。そんなある日、弁護士の夢を捨てきれないルースに、マーティがある訴訟の記録を見せる。ルースはその訴訟が、歴史を変える裁判になることを信じ、自ら弁護を買って出るのだが……。(movie walkerより)







 この女性、別の映画の予告で見ました。同じタイミングを狙ったのか、日本では5月にルース本人のドキュメンタリー映画が公開されるんですね。確か小さな鉄アレイみたいなもので鍛えてる年配女性が「忙しいから、どいて」みたいなせりふを言ってたと思うのです。”確かに85歳には見えないな”とか”まだ現役判事ってすごすぎる”とかいろいろ思ったのを覚えているのですが、この映画を見て納得。本当にすごい女性です。すごいって一言で表現していいのかと思うほど。いや、だめでしょうけれど、本当にすご過ぎて他の表現が出てきません。

 まだほんの50年?60年?前のアメリカ。女性の基本的人権は守られていませんでした。夫の名前でなければクレジットカードも作れなかった時代。仕事は当然選べない。そもそも”真剣に働く”という前提はなかったのでしょうね。優秀だったルースは、名門ハーバード法科大学院に入学します。しかし「女性に門戸を開いた」業績を自慢している学長は、ルースたち女生徒のみを別途呼び出し「なぜ男を押しのけてまで入学するんだ。それなりの理由があるはずだ」などと普通顔に詰問するなど、これが教養のある大人の言うことか、と思うほどの侮辱・暴言を浴びせます。この辺は少し前に見た「グリーンブック」にも共通しますね。

 ルースは結婚も出産も早かったので、大学院に入学するころは既婚でした。夫も学業優秀な院生。夫と世界観・価値観を共有したかった、というのも勉強の動機です。しかし、ここで夫は精巣ガンを発症。幸い、若くて発見が早かったので回復するのですが、その間ルースは二人分の講義を受け、ノートを取って夫に見せ、夫の口上をタイピングして提出。もちろん自分のレポートも提出。赤ちゃんだった子供の子育てもやってのけるという(しかも自分の成績はトップ)、とても人間とは思えないバイタリティを見せます。卒業はもちろん首席。でもね、女性だという理由だけで、働き口がないのです。本当は現実社会に出たかったルースですが、大学教授に。他になかったのです。もちろん、大学教授だって立派な仕事で誰にでも務まるわけではありません。しかしながら、これが将来、裁判を起こしたときに「経験がない」「現実を知らない」などという壁となるのです。

 自身のキャリアの中で幾度となく男女差別の厚い壁にぶつかってきた彼女は、弁護士、法律学者、判事として、男女平等や女性の権利について長年闘ってきました。この映画は、その最初の裁判を描きます。それまでの固定観念により、女性差別に関してはどんな裁判を起こしても勝った判例がないとわかっていた彼女は、夫の進言もあり、逆の裁判を起こします。すなわち、「”男だから”と認められなかった権利」についての裁判です。これは日本でも聞いたことがあります。もうずいぶん前にはなると思いますが、「母子家庭」には免税や医療費無償・他手当があるのに「父子家庭」にはなかった、つまり”男は稼ぎがあって当然”という思想ですね。子育てするために収入が激減しても、です。日本でも論議になったのを覚えています。ダスティン・ホフマンの映画みたいですね。たぶん今は平等に認められているはずです。

 映画を見ながら、同じ女としてムカつく場面が一杯ありました。こういうことに、若いころはムキになっていたなぁ、とも思いました。もちろん私はルースほど優秀じゃないので、「私とは違う」と思ってしまうところもありますが、こういう慣習に憤っていた時期もあったなぁって。でも、日本は大きくは変わってないと思います。いやむしろ、価値観は逆行しているのではないでしょうか。結局、女性が働くといっても、出産は女性しかできないし、しわ寄せがすべて女性に押し寄せた結果、「アホらし」と思って昔に回帰しているのではないかなぁ、と思うのです。必死に頑張ったところで報われないし。一時期、キャリアがもてはやされた時代より、専業主婦が増えているような感じを受けます。ちょっとだけのパートとかね。結婚しないのも、それだけの主婦に収まることができる収入の男がなかなかいない、とか、そうでなければ自分の負担が際限なく増えるから、とかいうことなんじゃないかなぁ、という気がしています。いや、違うかもしれませんけどね。でもまた、うんと最近は、子育て費用が無料とか、私たちが子育てしていたころに必死こいて払っていたものが不要になっているから、また育てやすいのかもしれませんけれど。

 ともかく、これだけの女性って、なかなかいないと思います。また、夫も協力的だったのですね。妻の才能を信じ、自分が一部の男たちから笑われる(「妻にしゃしゃり出られるなんて」と言ってのけるような輩)ことも厭わずに協力を惜しまなかったところが先鋭的ですね。映画ですから、美化されているところもあるのかもしれませんが(笑)。

 監督はミミ・レダー。久しぶりに名前を聞きました。昔「ピースメーカー」「ディープインパクト」を見て「強い女性だな」と思ってました。ちょっとキャスリン・ビグローと混同するほど(笑)。「ザ・エッグ ロマノフの秘宝を狙え」もそうなんですね〜、実はこれも見ました。バンちゃんとモーガン・フリーマンのね。そうそう、主演のフェリシティ・ジョーンズは、今、資生堂クレ・ド・ポー・ボーテのモデルをやってますね。くっきりきれいにメイクしていてわかりづらいですけど。知的なきれいさのある人ですね。次のドキュメンタリーも、見たいです。田舎にも降りてくることを願います。

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