mixiユーザー(id:6002189)

2019年05月18日14:57

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VW

2016年に書いた記事です。排ガス不正事件の全容はまだ解明されていません。現在進行形。
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フォルクスワーゲン排ガス不正とドイツ人の環境意識

 去年9月に米国の環境保護局(EPA)が公表したフォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正は、世界中の消費者や行政当局者に強い衝撃を与えた。欧州最大の自動車メーカーで、トヨタ自動車と世界で首位の座を争っていたグローバル企業が、法律で禁じられているソフトウエアをディーゼル・エンジン車に搭載することによって、米国の窒素酸化物(NOx)規制にパスしていたのだ。
 VWが違法ソフトを搭載していた車は、世界中で約1074万台にのぼる。同社は問題の車両のリコールを行っているが、全ての車の改修作業が終わるのは、まだ当分先のことになりそうだ。
 不正の発覚から1年以上経った今も、欧州自動車史上で最大のスキャンダルは終息していない。米国とドイツの司法当局は、今もVW幹部らに対する捜査を続けている。米国の司法当局が、VWに対して大気浄化法違反のために100億ドル(1兆1000億円・1ドル=101円換算)を超える制裁金を科すことは確実と見られている。今年秋には、VWで約30年働いたドイツ人の元エンジニアが、排ガス不正に直接関与したことを告白。彼は詐欺の罪で起訴されているが、量刑を軽くするために米国での裁判で検察側証人となることを明らかにした。VWにとっては、極めて都合の悪い事態だ。VWは米国の弁護士事務所を中核とする調査委員会を設置し、1年以上にわたって内部調査を行ってきたが、いまだに最終報告書を発表していない。
 同社は「マルティン・ヴィンターコルン前CEO(最高経営責任者)ら取締役は、不正に直接関与しておらず、エンジン開発部門の一握りのエンジニアたちが違法ソフトの使用を決めた」という公式見解を発表している。だが、ヴィンターコルン前CEOがいつ違法ソフトの使用を知ったのか、そしてEPAが記者会見を行うまで、なぜVWがその事実を公表しなかったのかは謎に包まれている。
 VWは世界各地で巨額の民事訴訟に直面している。米国ではVWの車を買った消費者ら約50万人が、損害賠償を求めるマンモス訴訟を起こした。今年6月末に、VWはゴルフなど2リッターエンジン車を買った原告や司法当局との間で、補償金の支払いや車の買取などを含む和解案に合意。VWは消費者救済のために147億ドル(1兆4847億円)の出費を迫られる。だがアウディなど3リッターエンジン車を買った消費者の救済策については、監督官庁が承認を拒んでおり、和解が成立していない。また「VWが米国の消費者だけに補償金を支払い、ドイツなど欧州の消費者に補償金を支払わないのは不公平だ」として、欧州の数百万人のユーザーを代表した訴訟を計画している弁護士もいる。
 またVWは、世界中の約6600人の投資家から、株価の暴落をめぐり、100億ユーロ(1兆1500億円・1ユーロ=115円換算)を超える損害賠償の支払いを求められている。原告には米国の年金基金やドイツ最大の保険会社など、多くの機関投資家も含まれている。彼らは「VWが排ガス不正の事実を迅速に公表しなかったために、株価の暴落によって経済的な損害を受けた」と主張しているのだ。
 さてVWが使っていた違法ソフトは、車が検査台の上にある時だけNOxの排出量を減らし、路上ではNOx削減装置を作動させないという物だった。ドイツの消費者は、VWの排ガス不正をきっかけとして、自動車メーカーが様々なトリックによって排ガス規制をかいくぐっていること、そしてこの事件が氷山の一角にすぎないことを知った。たとえばドイツ連邦自動車庁(KBA)は国内外の自動車メーカーの56車種について、ディーゼルエンジンの試験台および路上でのNOxの排出量を調査させた。その結果、調査対象となった車種の39%に相当する22車種で、路上でのNOxの排出量が、法律が定める上限値を大幅に超えていたことがわかった。NOx排出量が高かった車の中には、ドイツだけでなくフランス、イタリア、米国、日本の製品も含まれていた。
 またフランス政府の環境省も、ルノーの一部の車のNOx排出量が上限値を上回っていたとして、調査を続けている。
 欧州連合(EU)は、来年から新車の認証時のNOx排出量検査の際に、検査台だけではなく路上での走行時の実測を義務付ける。さらに、2020年以降EUで販売される新車は、1キロメートル走行する際に排出する二酸化炭素(CO2)の量を95グラム以下に抑えなくてはならない。現在EU圏内で使われている車が出すCO2の平均値は130グラムである。このため内燃機関を使う車の製造コストは、大幅に上昇する可能性が高い。
 VWやBMWなどの自動車メーカーは、すでに「ディーゼル技術に今後も多額の投資を続ける意味があるだろうか」という疑問を公言している。特にVWのマティアス・ミュラーCEOは今年6月に「2025年には、年間販売台数の中に電気自動車が占める比率を、20〜25%に高める。電気自動車のための電池の開発・製造に多額の投資を行う」と発表している。現在VWが売っている電気自動車は2種類だけだが、2025年にはその数を30種類に増やす予定だ。
 消費者のディーゼル離れも始まっている。KBAによると、今年1月に認証された新車の内ディーゼル車の比率は48.7%だったが、今年8月には45.3%に低下している。
 ドイツの自動車業界の関係者の間では、「VWの排ガス不正が、欧州の自動車市場の非炭素化に拍車をかける」という見方が強まっている。







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