桜が咲き始めたぞ〜と言ってる間に、もう五分咲きの木もあったりして、こりゃあ、あっという間に満開になっちゃうかも。
ここは、池袋にあるぐーちゃんの会社近くの練習スタジオ「ノア」。
ギターやベースをかかえた、若いミュージシャンが、ひっきりなしに入口から入ってくる。
このスタジオは、楽器も全てそろっていて、レンタルしてくれるので、手ぶらできても演奏が楽しめるようになっている。
サラリーマンが気分転換に、お昼休みを利用して、演奏を楽しむなんてことも可能だ。
そこへ、どう見ても場違いな感じの老人が、ひとり入ってきた。
頭部には、ほとんど毛が残っていないので、いかにも寒そうな感じがする。
こういう人は、イチローみたいに、毛糸の帽子なんかがいいね。
何かキョロキョロするばかりで、落ち着きがないので、受付の女の子が「あのぉ、お客さま、何かお探しですか?」と、声をかけた。
「あ!はふはふはふ、はのね、も、漏れそうなのよ」
「あ〜・・・トイレですね。右側のドアをあけまして、まっすぐ500メートルほど行きますと、介護用トイレがございます。普通のでよろしければ、こちらです」と、大変親切にゆっくりと案内してくれた(おかげで軽い尿漏れがあったようだ)。
股間を押さえて固まっている老人、彼の名はぐーちゃん。
昔は誰でも知っている有名人だったが、時代の流れには逆らえず、今は知る人も少なくなってしまった。
彼は88才になっているのだが、いまだに現役で働いている。
しゃれでやっている社内バンドでは、リード・ギターを弾いているが、本来はミスター・ベースマンなのだ。
彼は50年前に、新宿ニューACBというジャズ喫茶で、グループサウンズらしきことをやっていた。
たった3年間のバンド生活だったが、それはとても中味の濃い3年間でもあった。
ごくごく一部のファンの間では、「伝説のロッカー」と言われていたらしいが、定かではない。
〜つづく〜
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