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2019年03月23日16:12

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ベルチャ弦楽四重奏団&葵トリオ

<ベルチャ弦楽四重奏団>

【プログラム】
1 モーツァルト: 弦楽四重奏曲 第22番 変ロ長調「プロシャ王第2番」K.589
2 バルトーク: 弦楽四重奏曲 第6番 BB119 Sz114
3 メンデルスゾーン: 弦楽四重奏曲 第6番 へ短調 Op.80

コリーナ・ベルチャ(Vn)
アクセル・シャハー(Vn)
クシシュトフ・ホジェルスキー(Vl)
アントワーヌ・レデルラン(Vc)

2019年1月27日(日),14:00開演,札幌コンサートホール

<葵トリオ>

【プログラム】
1 ベートーヴェン: ピアノ三重奏曲 第4番 変ロ長調「街の歌」Op.11
2 アイヴス: ピアノ三重奏曲
3 メンデルスゾーン: ピアノ三重奏曲 第2番 ハ短調 Op.66

小川 響子(Vn)
伊東 裕 (Vc)
秋元 孝介(Pf)

2019年1月27日(日),16:00開演,ふきのとうホール


この日は室内楽の演奏会が2つ重なってしまい,梯子をする羽目になった。ベルチャSQのチケットを買った後で,葵トリオの演奏会があることがわかり,少し迷った末に演奏曲目の一部を犠牲にしてでも両方の演奏会を聴くことにした。2つの演奏会場の移動時間などの関係から,葵トリオのベートーヴェンとアイヴスは聴けずじまい。

なにぶん,2か月近く前に聴いた演奏会なので,記憶も印象もかなり薄れてしまった。覚えていることを簡単に記すに止めることに。

ベルチャSQの演奏会でひときわ強烈な印象を受けたのがメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番。軽快な曲調の作品を多く書いたメンデルスゾーンとのイメージが覆りかねないデモーニッシュな雰囲気に満ちた弦楽四重奏曲である。初めて聴いた曲なので断定は避ける必要はあるものの,作曲家自身の個人的な感情が露わになった分,楽曲の内容も充実しているような気がしないでもない。メンデルスゾーンが書いた最後の弦楽四重奏曲であり,姉の他界や多忙を極めた仕事などがこの作品へ影響を与えたとされる。作曲家自身もこの曲を書き終えた後に逝去している。

また,この作品と同じ調性のベートヴェンの弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」やピアノ・ソナタ第23番「熱情」から強い影響を受けていることも明らかだという。第1楽章での激しく暗い情念を表現した第1主題と情緒的に歌われる第2主題のコントラストは,「熱情」のスタイルを踏襲しているとされる。第2楽章も冒頭のシンコペーションの不安定なモチーフと中間部のなめらかな進行のモチーフとの対比が鮮烈な印象を残す。第3楽章は憂いを感じさせる緻密な書法の緩徐楽章で,第4楽章では暗い感情を爆発させる。

ベルチャSQの演奏は,透明な弦の響きの向こうに東欧の夜の暗さを背景に,そこで暮らす人々の情念を抉り出すような濃厚な表現が目立つ。この作品自体の持ち味を引き出した演奏であることはもちろんだが,やはり並外れた表現力の賜物だろう。また,この悲劇的な色彩の濃い作品の悲劇性を強調し過ぎることなく,ある程度の抑制を効かせつつ作品全体を再現した知的な明晰さも兼ね備えた演奏でもある。当然のことながら,演奏技巧に不満はない。

バルトークの弦楽四重奏曲第6番も夜の音楽だ。第1楽章の冒頭でヴィオラによって演奏される「悲しみの主題」が全楽章の曲調を支配しており,ヨーロッパで書かれたバルトーク最後の作品はヨーロッパへの惜別の辞なのだろう。とはいえ,バルトークの場合,内面で煮えたぎる個人的な苦悩や悲しみを同時代の革新的な作曲技法で表現する。なので激越でありながらスタイリッシュでもある。ベルチャSQは持ち前の透明な響きでこの作品を造形した実に手際のいい整ったバルトークだが,この作曲家の不純物を排除し過ぎたような気がしないでもない。モーツァルトのプロシャ王第2番は,ウィーンの音楽という側面を強調したメロディーと情緒が印象に残る演奏である。

無理をしてまで葵トリオを聴こうと思ったのは,このトリオが昨年のミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で第1位に輝いたことを知ったのがきっかけ。

メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第2番を聴くと,メンバー3人全員はそれぞれ確かなテクニックを持っていることがよく分かる。そのうえ,力強い演奏をしてもアンサンブルが乱れることはなく,音の響きが汚れてしまうこともほぼないと言っていい。ヴァイオリン,チェロ,ピアノのヴィルトォーゾがアンサンブルを組んで室内楽を楽しむという雰囲気も十分だ。とはいえ,メンバー3人は常にトリオを組んで活動しているわけではなく,独奏者として演奏活動を行なっているようだ。その意味では,常設のトリオとは一味違う3人の個性がにじむ演奏でもあった。とにかく,このトリオが順調に育ってくれることを願う。このトリオの演奏でアイヴスのピアノ三重奏曲を聴いてみたかった。ところで,葵トリオ(AOI Trio)の名称は,3人の苗字(Akimoto,Ogawa,Ito)の頭文字に由来する。
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