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2018年12月28日15:37

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ヒラリー・ハーンの新譜

マイミク紹介のヒラリー・ハーンのバッハ新譜を発注。ついでに、過去の手持ちの協奏曲録音を聴いている・・・・なかなか、よろし。メンデルスゾーン、ベートーヴェン、ブラームス・・・・皆、素晴らしく若々しく伸びやかでそれでいて完璧に聞こえる。聴いていて充実感があるのは彼女の年齢を考えると驚かされる。私が彼女の演奏を初めて聴いたのは、NHKが放映した2000年21才初来日の時のショスタコービッチの協奏曲だった。今、思い出しても素晴らしく完成された演奏だったと思う。オイストラッフとかコーガンといった言わば”本場”の演奏家に引けを取らない・・・・と言うのではなくて、彼女は彼女自身で噛み砕き理解した上で彼女の2000年のショスタコービッチを弾ききった演奏だと思った。今改めて色々聴いてみると、協奏曲ではどれも伴奏が充実しているのも彼女の演奏の特徴だと思う。そりゃ、可愛らしい彼女を横にすれば、指揮者(オーケストラ)のおじさんたちも頑張ってしまうだろー・・・・とは思うけれど、それだけでは無くて寧ろ彼女はどの演奏でもオーケストラを主導しているしその彼女の演奏の力が伴奏を充実させているというべきじゃないかと思う。
ただ、彼女がパルティータ2、3番、ソナタ3番を弾いたバッハの無伴奏は私にはなにか馴染めなかった。勿論嫌いな演奏と言う訳ではなかったけれど、どこかおすましした女の子の上辺の顔だけを見せられたような、他人行儀な演奏を聴かされたような・・・そんな印象だった。
2000年にモンサンジョンが作った「ヴァイオリンの芸術(The Art of Violin)」というドキュメントがある。過去の名演奏家を語るドキュメントだが、そのコメンテータの一人にハーンが入っていた。ギトリス、ヘンデル、パールマンと言ったおじさんおばさんの大家のなかに混じって、二十歳のハーンがハイフェッツの音色がどーだ、エルマンの運弓がどーだ・・・と大先輩について語るのである。ぱっと見には異様な光景ともいえるが、不思議なくらい、ごく自然に”同僚!”ヴァイオリニストについて彼女なりの感じたことを語ってハーンにはもったいぶりも気負いも嫌味も背伸びも感じなかった。それも、彼女の演奏の充実と表裏一体の関係にあることだと思う。
ただ、バッハだけは、私にはそれだけでは何か物足りなかった・・・・勿論、こんな感想は聞くだけの無責任な聴衆の我が儘・独善以外の何物でもないことは明らかな私だけの勝手な感想に過ぎないことは自覚しているのだけれど・・・。
どうやら私は完全で無欠のバッハの無伴奏には馴染めないのかも知れない。バッハのあの6曲の無伴奏から私が聴いているのは人間の矛盾や不完全さなのかもしれない様な気がすることがある(彼女の余りにも真っ直ぐで屈託の無いバッハ無伴奏は、なんだか宇宙人か今の流行で言えばAIでもが弾いている様な・・・・と言えば、やはり不当で的外れ・・・かな〜)。
不思議なことにハーンは17歳で録音したパルティータ2、3番・ソナタ3番以来、残りの3曲、パルティータ1番・ソナタ1、2番を録音しなかった。その残った曲をようやく録音したのが今回の新譜なんだそうである。マイミクによると、この録音も実は数年前に録音したものをお蔵入りにして新たに録音しなおしてようやく発売することになったのだそうである。最近の録音では、五嶋みどりの録音があった。そして彼女の演奏には私の期待した”不完全さ・矛盾”がたくさんあった。7ー8歳の年齢差はあるけれど、この二人は対照的ともいえる現代の天才少女(だった)である。20年ぶりにバッハ無伴奏に復帰したハーンのバッハには期待と(少しの)不安が入り混じるけれど、久しぶりにワクワクさせられる新譜ではある。
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