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2018年12月19日22:40

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イトマン事件OB激白「裏側伝えたい」

 下記は、2018.12.19 付の産経ニュース【衝撃事件の核心】です。

                         記

 大阪の中堅商社イトマンを通じて3千億円が闇社会に消えたとされる平成3年のイトマン事件。バブル期を象徴する戦後最大の経済事件といわれたが、平成も終わりに差しかかり、当時の関係者の多くが表舞台を去り、社会からその記憶が薄らぎつつある。「生きているうちに事件の舞台裏を伝えたい」。同社常務として社長の電撃解任などの節目に立ち会い、現在は大阪市内の会社で役員を務める傍士倶明(ほうじ・ともあき)氏(82)が、マスコミに初めて体験を語った。(井上浩平)

争乱前夜の血判状

 冷たい雨が降っていた。平成3(1991)年1月25日未明、大阪市内のホテルの一室に、当時のイトマンの河村良彦社長=平成22(2010)年、85歳で死去=を除く同社幹部らがひそかに集まった。同日午前に開かれる定例役員会で、無謀な投資を重ねて会社に膨大な損害を与えたとして、河村解任の緊急動議を出すことを確認していた。

 「事態はそこまで来たか。会社を守るにはそれしかない」。常務の傍士氏は召集をかけた反社長派の説明に納得したという。

 幹部らは動議に賛成することを誓い、指に朱肉を付けて押印。「固い決意を表す『血判状』だけに裏切ることはできないと思った」

 数時間後、同市中央区本町のイトマン本社で始まった役員会。その冒頭、河村氏の開会宣言と同時に副社長が立ち上がり、「河村氏の代表取締役および社長の解任を求める」と動議を出した。

 役員数人を残して傍士ら約25人が起立し、社長解任が決定。「議題にないから無効だ」。河村氏はこう叫んだというが、そのまま退場。このクーデターはイトマン事件のハイライトの一つとなった。

住銀会長の懐刀

 イトマン事件は、昭和末期から平成初期にかけて起きた特別背任事件。不動産事業で損失を抱えていたイトマンが反社会的勢力に取り込まれ、絵画取引やゴルフ場開発などの名目で巨額の資金を流出させた。

 これにより、主力取引銀行だった住友銀行(現三井住友銀行)は約5千億円の損失を計上。住銀出身の河村氏や常務の伊藤寿永光(すえみつ)氏、フィクサーとして知られた許永中(きょ・えいちゅう)氏らが特別背任容疑などで逮捕され、実刑判決を受けた。

 河村氏は住銀頭取・会長の磯田一郎氏=5年、80歳で死去=の信頼が厚く、石油ショックで経営不振に陥ったイトマンを立て直すため、昭和50年に同銀から出向し、社長に就任した。

 33年の入社以来、イトマン一筋だった傍士氏によると、河村氏は「売ってから買え!」を口癖に、繊維製品の在庫を一掃。わずか2年で黒字に転換させた。「次の社長は銀行からの出向ではなく、生え抜きを出す」と公言し、社員から慕われていたという。

怪しげな投資話

 豪腕でイトマンを再建した河村氏は、1985年のプラザ合意以降の急激な円高による繊維不況もあり、繊維商社から総合商社への転換を目指して拡大路線を突き進む。それが、イトマン事件で中心的な役割を果たした伊藤氏と許氏を呼び寄せることになった要因でもある。

 傍士氏は「次の社長を送り込みたい銀行側の意向がある中で、長くイトマンにとどまりたい河村さんは業績を伸ばす焦りがあったのかもしれない」と推測する。

 一方、住銀の磯田氏もメーカーに積極融資する姿勢を取っており、収益を伸ばすためにイトマンを仲介して不動産を中心とした融資を進めていた。

 それに目を付けた経営コンサルタントの伊藤氏が平成2年2月、住銀名古屋支店の紹介でイトマン入り。暴力団関係者が背後にいるといわれた伊藤氏は、怪しげなゴルフ場開発や土地購入の話を持ってきては河村氏に投資を勧めたという。

 傍士氏は「これらの投資話は社内で『伊藤案件』と呼ばれていたが、伊藤氏はもともと不動産関係をやっていたし、違和感はなかった。河村さんの信頼もあり、一時は副社長の話もあった」と振り返る。

 伊藤氏とつながりのあった許氏は、河村氏に美術品や貴金属への投資を持ちかけ、鑑定書を偽造するなどして市価の2〜3倍で売りつけて暴利をむさぼった。

事件の教訓は今も

 同年5月、日経新聞がイトマンの過剰融資について報じたが、河村氏は「うちにはちゃんとした公認会計士もいる。大丈夫だ」と周囲に言い放ち、意に介さない様子だったという。

 住銀の磯田氏は懐刀である河村氏を擁護し、問題が表面化しないよう画策していたとされる。だが、事態は住銀内の派閥争いも絡んで複雑化。磯田氏はイトマンの不審な動きを察知しながら対応できず、同社を経由して伊藤氏への不正融資を行っていた。後に磯田氏の娘が同社との絵画取引に関わっていたことも明らかになっている。

 大阪地検特捜部と大阪府警は3年、特別背任や法人税法違反の罪で河村氏と伊藤氏、許氏の3人を逮捕、起訴。巨額の資金の行方は今も判然としていない。

 イトマンは住銀の主導で5年に住金物産(現日鉄住金物産)に吸収合併され、大阪を代表した老舗商社は約110年の歴史に幕を下ろした。

 「愛着のある会社がなくなったことは残念」と傍士氏。土地狂乱のバブル期の事件を回顧し、「異常な時代で、銀行は土地が担保なら金をいくらでも貸した。詐欺師は金がある所に入り込み私腹を肥やそうとする。事件の教訓は忘れられつつあるが、今もITなど好調な業界こそ注意が必要かもしれない」と語る。

 https://www.sankei.com/premium/news/181219/prm1812190003-n1.html
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