フランスが、マクロン政権の政策に対する大規模デモで揺れている。
首都のパリでは、凱旋門からエッフェル塔近くのトロカデロまで続くクレベール通りや、リボリ通りなどの高級品が並ぶ商店街が攻撃されたほか、高額な自動車がひっくり返される事件が起きた。
普段は観光客で賑わうシャンゼリゼ通りでも、デモ隊と治安部隊が激しく衝突。デモ隊に向けて催涙弾が発射され、辺り一帯に白煙が充満する中、デモ参加者が逃げ惑う様子も見られた。
デモのきっかけは、ガソリン税引き上げへの反対だった。参加者は皆、車が故障した際に運転手が安全のために着用を義務付けられている黄色の蛍光色のベストを着用。そのため「黄色いベスト運動」と呼ばれている。
しかし、デモが拡大するにつれて反対運動は、ガソリン税だけにとどまらなくなった。批判の矛先は、賃金の値上げ、年金増額、公共サービスの充実化、正規雇用の拡大など政策全般に広がった。
考えてみると、フランスだけではなく、欧州政治全体が揺れに揺れている。
2016年6月の国民投票でEU離脱を決めた英国は、離脱条件を定めた協定案をめぐり、議会承認の採決が延期された。
来年3月末の離脱が迫る中、協定案がEUルールに縛られる可能性がある内容が含まれていることに反対の声が上がったからだ。
他方、05年から首相を続け、欧州で最も安定した政治家とみられたメルケル・ドイツ首相も10月の州議会選挙で敗北したことを受け、与党・キリスト教民主同盟の党首の辞任を決めた。
なぜ、こうした政治不安の状況がフランス、英国、ドイツを襲っているのか。
背景に共通するのは、一般国民の生活環境が悪化する一方、富裕層だけがますます豊かになり、格差が拡大していることだ。
賃金の値上げなどは本来、政党や組合が国民の代表者として政府に要求することだ。しかし、今は政党や組合は運動から排斥されている。そのため、フランス国民はデモという手段によって直接訴える行動に出たのであり、今や75%の国民はこの運動を支持しているのである。
格差拡大の政治状況は日本も同じだ。例えば、後期高齢者医療制度では、低所得者の保険料軽減の特例措置の廃止を検討、などと報じられているが、フランスのように大規模な抗議デモが起きる様子は全く感じられないのが残念だ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243755
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