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2018年12月14日01:51

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拝啓・植田まさし先生

散歩をしていたら、ガラス越しにコンビニの雑誌コーナーにある「まんがタイム」が見えた。表紙は、あの植田まさしの絵で「おとぼけ部長代理」。
この漫画、まだやっていたんだ・・しかも「おとぼけ課長」から「部長代理」へ出世している・・と思い買ってしまった。
「まんがタイム」なんぞ買うのって高校生の時以来じゃないか。しかも旅行などに行って暇な時に読んでいたくらい。当時、流行り始めた4コマ漫画雑誌の走りだったと思う。
それにしても、その当時から巻頭は「おとぼけ課長」だったと思うが、30年の時を経てまだ「おとぼけ課長」ならぬ「おとぼけ部長代理」が巻頭である。こりゃーすごいわ、と感心したわけだが、「まんがタイム」を全部読んでみてまたビックリした。
「おとぼけ部長代理」は、相も変わらず植田まさしの特徴全開の漫画で、本当に30年、絵も内容もまるっきり変わっていないのだが、他の漫画は全て、といっていいほど、いわゆるオタ系の漫画である。
4コマ漫画ではあるんだが、絵や設定はいわゆるアキバ系。4コマ1つ1つにたいしたオチはなく、漫画全体を通して1つのストーリーを形成しているといった感じである。どの漫画家も、聞いたこともない人ばかりで、恐らくなんだが、駆け出しの漫画家の受け皿的な雑誌になっているのでは?と思う。
30年前は、植田まさしの他に、今はタレント化してしまったやくみつるなどが連載していたし、絵も、植田まさし系の人と、いしいひさいち系の人がメインで、それに属さないような人が少数っていう感じだったかな。ちなみに、やくみつるは、僕の中ではいしいひさいち系で、ずっといしいひさいちの亜流だと思っていた。
あれから30年の間、きっと様々な漫画家が入れ替わっていったのだろう。その時代に応じて、内容や絵などが変遷しながら、殆どの漫画家は消えていったことと思う。
そんな移り変わりの激しい「まんがタイム」という4コマ漫画雑誌で、変わらずに淡々と続いている植田まさし。絵も内容も、当時と全く変わらずに・・
しかも、植田まさしの漫画のみが、スクリーントーンなど全く使わず、噴出しのセリフまでも手書きで、全てが手作り感満載なのも変わっていない。今時はPCなどを使って背景や色彩などを簡単に編集できる時代にも関わらず、何もかも手書きのシンプルなコマなのである。
というか・・植田まさし。全くのノーマークだったのに、ここまで来ればもはやレジェンドである。

僕は、実は小中学校の頃、植田まさしファンであった。あの頃は、植田まさしの単行本が出れば全て買っていた。
「かりあげクン」「のんきくん」「キップくん」「おとぼけ課長」「コボちゃん」「まさしくん」「フリテンくん」・・よく読んでいたな。
「かりあげクン」でサラリーマンの世界を知り、「フリテンくん」で麻雀をはじめとしたギャンブルや大人の裏社会を知り、「まさしくん」で大学生とアルバイトの世界を知り、僕にとってはその全てが大人の世界を知る教科書であった。
ただやはり、大きく変わらずに淡々と続く植田まさしの漫画は、自身の成長とともに関心も薄れていき、高校生頃になるとほとんど読まなくなっていた。
その頃の4コマ漫画といえば、シュールな世界観を持ったものにのめり込んでいたし、そういう漫画が流行り始めていた。相原コージや、喜国雅彦、ほりのぶゆき、しりあがり寿などといった天才的な漫画家たちの作品が面白く、シュールな世界観という意味では、小学生の頃から植田まさしと同じく読んでいたいしいひさいちは、継続して読んでいた。
大きなインパクトもなければ、突飛な発想もなく、ただただ淡々と日常世界の出来事を描く植田まさしは、どっかでつまらなくなっていたんだと思う。
ところが、先日、"再会"を果たした植田まさし。その淡々と日常世界の出来事を描きながら、今でもあの頃と全く変わらぬ作品世界を提供し続けていることに、とても驚いた。
僕が"浮気"した天才漫画家たちのその後は、さっぱりとお目にかからないのに、植田まさし先生は、相も変わらず"ここにいる"・・
そもそも、植田まさし先生は、今何歳になられたのかな、と気になり、早速ネットで調べてみたんだが、71歳であった。古希を超えておられるのである。
さらに驚くことに、「かりあげクン」「おとぼけ課長(部長代理)」「コボちゃん」はいまだに続いており、「おとぼけ」が36年。新聞連載のコボちゃんも同じくらい。コボちゃんは数年前、1万回を突破したとか・・
しかもしかも、71歳の今でも、新聞連載(毎日)の他に、週刊誌1本、月刊誌3本の連載を抱えており、年間平均1100の4コマ漫画を現在でも輩出し続けているという。
何たる超人!何たるレジェンド!
インタビューをみると、ネタは常にあって、それに描く漫画が追いつかないという。
本人は殆ど他の漫画家と交流もなく、たった1人で淡々と作品を提供し続けているというから、孤高の戦士のような要素がある。今までもあまり大きく騒がれたことはないが、この人はもっともっと評価されるべき人なんじゃないか!

植田まさしのこのバイタリティーというか、作品を提供し続けるエネルギーはどこにあるのかと考えてしまう。文春オンラインで読んだインタビューを参考にすれば、この人の凄さは「変わらない力」であろう。
植田漫画のスタイルは、必ずハッキリした物理的なオチを作るということ。そのスタイルは今も一貫して変わらない。
植田まさしによると、昨今の4コマ漫画は、しっかりしたオチを用意せずに、何となくその場の空気で終わらせてしまうパターンが多いという。そうなると、勢いがあるう若いうちは何とかなるかもしれないが、長続きはしない、とのことである。
確かに、植田まさしの漫画には、面白かろうがつまらなかろうが、きちんと起承転結を形成しており、4コマ目に説明のつくオチが用意されている。
それと、時代が変わろうが、植田まさしの世界は全く変わらず、例えば、「かりあげクン」のような中小企業の安月給独身サラリーマン、「おとぼけ課長」のような仕事半分家庭半分のどこにでもいるようなたいした能力もない中間管理職といったような市井の人の日常を描き続ける。
時代が変わろうが、彼らの日常は全く変わらず、出世するわけでもなく、金持ちになるわけでもなく、ただ日々を過ごしている。
まさに、植田まさしの漫画家人生とそのまま重なるように、細く長く、変わらずに、という世界なのである。
例えば、インタビューではこのようなことを語っている。
「プレミアムフライデーだ、働き方改革だっていっても、それは一部の特権階級の人たちの話であって、結局、かりあげクンのような中小企業のサラリーマンていうのは安い給料でコキ使われるのは時代が変わっても変わらない」
だから、時代に擦り寄ることなく、30年、40年と変わらない世界を描き続けられるのだろう。
この先、80歳を超えても、植田まさし先生には変わらない世界を提供し続けてほしい。
そして僕は、30年の時を経て、生涯植田まさしのファンでい続けることだろう。

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