ニュースから

1）　ゲームにおけるAIの発達も新段階に入ってきたらしい。

>自己学習ＡＩ「将棋の新しい可能性示す」羽生竜王が評価(https://www.asahi.com/articles/ASLD74G6LLD7UCVL00M.html)

先週発行のScienceに原論文が掲載されていたので読んでみた（D.Siliver, et al., Science, 362, 1140, 2018)。確かに、なかなか興味深い結果のように見える。今回のAlphaZeroと称するプログラムは囲碁チャンピョンを破って有名になったプログラムの改良版・・・・と言うより”一般化”版と言うべきプログラムらしい。今までのチェス、将棋、囲碁などに対するゲーム・プログラムは（当然！）過去の人間の対局譜を参考・学習して各ゲームに特化した探索・評価手法を用いて局面ごとの最善手を決定していたが、このAlphaZeroではゲームのルールだけを初期条件として、後は過去の棋譜などは使用せずにランダムに発生したコンピュータ内部の自己対局だけで学習させてプログラムを強化するのだそうである。更に、そこで用いる最善手探索手順はチェスとか将棋とか囲碁とかのゲーム特有の条件は考慮せずルールに則った勝利判定だけを条件とする一般化手順によって行うので、このプログラムは事実上チェス、将棋、囲碁の何れのゲームに対しても変更することなく対応できる。
論文ではこのプログラムが、実際にチェス、将棋、囲碁のチャンピョン・プログラムの全てに対して勝利することから万能ゲームマシンが可能であることを示唆していると述べられている。これは、言わば無人島でゲームのルール・ブックだけを与えられて一人で学習した人間が各ゲームの世界チャンピョンに勝利するほど強くなる・・・と言う事に等しい。
この結果は、アラン・チューリングのコンピュータによる思考の理想に更に一歩近づいた（もし、チューリングが今回の論文を読んだら、さぞかし喜んだだろう）・・・・と言えるのと同時に、現在の人間の”思考”と言うものの意味についても考えさせられる結果でもある。
i）人間には一人でチェス、将棋、囲碁の何れでもチャンピョン級と言う人は（未だ）いない。コレは、人間の思考様式が今までのゲーム・プログラムと同様の各ゲームに特化した思考様式で考えていることを意味しているのだろうか？もしそうであるのなら、人間も今回のAlpjaZeroのように一般化された思考様式を取り入れて”万能”ゲーム・チャンピョンになり得るか？
ii) AlphaZeroの学習・強化経時曲線を見ると、習得時間の差こそあれ何れのゲームでもその強さはある一定の強さに収束していくように見え、強さには上限（収束値）があるように見える。これは、ゲームの有限性に由来する絶対的な上限なのか（今後もAlphaZeroを超えるプログラムも人間も現れ得ない）、あるいは上限は現在のDeep learningと言った自己学習論理の思考様式に由来する上限なのか（将来、異なる思考様式でAlphaZeroに勝つプログラム（マシン）（人？？）の可能性がある）？
iii) 羽生氏はAlphaZeroが従来の定跡から外れた手も打ってくる新しさを指摘しているが、私はそれと同時にAlphaZeroが人間の棋譜から学んでいないにも関わらず初手を含む（勝敗の行方が見えていない）最初期の手順で人間と同様の差し手を発見していることにも興味がある・・・・これらの手順はゲームの特性の普遍的な性格を示すのか？
iv）”万能”ゲーム・プログラムの普遍性についての疑問・不安について・・・・例えば戦争をゲームと見立てて”万能”なマシン・プログラムは可能か？

２）　つい今しがた見た不愉快極まりないニュース・・・・

＞コミュ力が高いため補正（https://www.asahi.com/articles/ASLDB5HDGLDBUTIL05H.html?iref=comtop_8_02）

意味が解らない上に、不愉快この上ないニュースである。医者の驕りと思考停止の表れに過ぎない。女子へのあからさまな差別であると共に、男子への侮辱でもあり、順天堂大教官の人材を見極める能力の無さ・無能さも示している・・・要するに人間を馬鹿にする思考様式そのもの。
こう言った議論を教授会あたりで平然としたり顔に行っている姿を想像するだけで吐き気がして来そうなのと同時に、我が国の社会そのものの思考劣化を象徴しているようでもあり暗澹たる気持ちがする。