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2018年11月30日23:57

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11月30日

 また洗濯機が故障した。叩いても蹴っても、うんともすんとも言わなくなった。その日は朝から近くでカラスがうるさく鳴き不吉な感じがあったのだけど、それの死を予期していたならばなおさら気色悪かった。窓から外をのぞくと、前の電柱のてっぺんにカラスが2羽いた。常にきょろきょろとあたりを見回して落ち着かない様子だった。ときおり思い出したように飛び立つことがあったが、あたりを旋回してからふたたび電柱へと戻ってきた。もう一度だけ洗濯機を叩いてみたけれどやっぱり動くことはなかった。
 業者さんに連絡をつけると、先輩と後輩の関係らしき2名がやってきた。彼らが洗濯機を持ち上げ移動させると、それの下になっていたスペースがあらわになった。そこにはコットン、綿棒、ヘアゴム、生理用品、何かのネジなど様々なものがホコリにまみれてあった。まるで我が家の恥部をさらしているようで無性に恥ずかしく、たまらない気持ちになった。ただ、そこで一番目を引いたのは伏せられた1枚のウノだった。おそるおそるめくってみると青のドロー2だった。これはゲームを動かすことのできる重要なカードだ。なぜこんな陰湿な場所に伏せられていたのかはよくわからない。業者さんは洗濯機を運びながらこれを見て「ウノがある、ウノがある」と笑った。先輩の方が「おまえ早く2枚引かなきゃ」と言うと、後輩は「はい!」と返事をかえすなど、ふたりはケラケラふざけながら洗濯機を引き取っていった。ぼくはきっとこの2人ならば、玄関を出たあとすぐに生理用品の話をはじめるに違いないと思った。その妙に舐め切った感じの延長には、下卑た笑いを愛好する2人の癖がある気がしてならない。さいわい妻が不在だったからよかったものの、我が家の恥部というのもあながち大袈裟でもない表現に思われた。ぼくはすぐさまそれらを片付けて掃除機をかけた。その際すこし動揺していたのか、生理用品と一緒にドロー2もゴミ箱に捨ててしまった。
 翌日の晩、家でウノをした。ババ抜きや七ならべに飽きた子どもたちは、近頃学校で覚えてきたらしいウノに関心を持ち出していて、家でもこれをプレイすることが多かった。ぼくは先日にあった出来事をすっかり忘れていたが、配られたカードの中にドロー2があったのを見てハッとした。一瞬、捨てたはずのドロー2がぼくのもとに舞い戻ってきたように思えたのだった。もちろんそんな事があるわけがないと分かりつつも、もともとぼくは呪術やおまじないを信じるところがあり、だんだんとカードを持つ手が重いような気がしてきた。それだから、序盤のうちにドロー2を投げ捨てるよう出したのは戦略ではなく、ただ気色が悪かったからだった。そして、それと同様に「赤の3」や「赤の6」などの手札も、あの生理用品がカードに生まれ変わったものみたいに思えて、これらも早めに投げ捨てた。

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