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2018年11月26日22:09

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「法務省は真実語れ」外国人労働の実態に詳しい専門家苦言

 今臨時国会で政府がスピード成立を目指している外国人労働者の受け入れを拡大する法案。中身はスカスカのうえ、法務省のデータ「捏造」まで発覚し、このまま来年4月施行となったら、将来に禍根を残すのは必至だ。外国人技能実習生の代理人も務め、現場の実態に詳しい専門家は、「人権感覚の低い法務省にやらせてはダメ」と苦言を呈する。

■多文化共生のグランドデザインが必要

  ――外国人労働者を拡大するための法改正は議論百出です。新制度に対する問題意識を聞かせて下さい。

 まず、議論を始めたのが遅すぎた。20年、30年前にすべきでした。外国人労働者はすでに130万人近くいます。技能実習生は国際貢献のためとされ、留学生は勉強しに来る人ですが、実際は労働力確保のための手段になっています。ですから、外国人労働者を正面から受け入れる制度をつくるということ自体は評価していい。しかし、「移民政策ではない」という言い方はごまかしです。日本には250万人以上の外国人が生活し、すでに移民の国。議論すべきは、移民政策かどうかではなく、どういう移民政策を取るのかなのです。

  ――入り口の議論からして間違っている。

 いま行われている議論は、人材不足にどう対応するかという短期的な受け入れ政策で、総合的なグランドデザインがない。そうではなく、人口減少社会の中で、どうやって日本が外国人と共に生活し、働く社会をつくるか、どういう負担をするかという議論が必要です。臨時国会の数日の審議で決めてしまうような話ではありません。

  ――外国人を生身の人間として見ていない。

「労働力の受け入れ」「外国人材の受け入れ」という言い方がされています。必要なくなったらいつでも帰ってもらえる使い捨てにできる存在、として見ている節がありますね。安い労働力という法案の位置づけでは絶対にいけない。労働条件や賃金をしっかり保証し、権利が主張でき、問題があったら声が出せる制度にしないと。今、時給300円で働く技能実習生がたくさんいます。建前では日本人と同等の賃金を払うべきとなっているのに守られていない。このままでは新制度もそうなる危険性がある。

■「ブローカーは色めき立っている」

  ――時給300円は労基法違反なのに、どうして声が出せないのか。

 実習生は自分の国で借金をしてきていますから、それを返せなくなるようなことは絶対に避ける。労基署に駆け込んだり、社長に「なんとかしてくれ」って言ったら、強制的に帰されたり、解雇される。それが恐ろしいからみな声を出せないのです。

  ――悪質な仲介団体やブローカーの問題もあります。

 もしかしたら、新制度は技能実習制度より酷いことになるかもしれません。実習制度は人権侵害が国際的にも批判され、規制が厳しくなりました。しかし、新制度は楽観論で制度設計されていて、外国人の支援や相談は、受け入れ企業か、政府に登録した支援機関が担うことになっている。受け入れ企業からお金をもらって委託された支援機関に、職場のトラブルを相談してどうなるんですか。

  ――実習制度では、送り出し国と日本国内にそれぞれブローカーがいて、中間搾取が問題になっています。

 例えばベトナムの実習生の場合、手数料として1人100万円くらい取られています。日本語教育やビザ取得などさまざまな手続きはありますが、100万円なんて費用は絶対にかからない。ブローカーによる中間搾取の手段とされているんです。

  ――ブローカーに対する規制はないのですか?

 手数料を取ることについては、民間ベースだからと、規制が全くない。今度の新制度でも同様です。ブローカーは今、「シメシメ、また儲けられる」と色めき立っているといいます。本来は、送り出し国と日本の2国間で向こうにハローワークのようなものをつくって、費用ゼロか実費程度で労働者を募集すべき。日本政府も向こうに出先機関を置いて、アドバイスやサポートをする。これだけ大掛かりに外国人労働者を受け入れるなら、それぐらいの費用をかけるべきだと思います。

  ――そもそも実習生は技術を学ぶという「国際貢献」を建前にした制度ですよね。それなのに巨額費用がかかること自体おかしい。

 国際貢献なんて真っ赤な嘘。1990年代に制度ができた時点から、実態は安価な労働力を確保するという趣旨だった。外国人も出稼ぎのつもりで来ていて、技術を学びたいという人は少数です。法務省の幹部だって、そんなことみな知っているのに、国会答弁などで「国際貢献」「技術の移転」なんてシャアシャアと言えますね、と言いたい。実習生は新制度の「特定技能1号」に移ることができるんです。国際貢献はどこへ行ったんですか。いつ技術を自分の国に持って帰るんですか。

  ――つまり、実習制度をつくった90年代に、移民の議論をすべきだった。しかし、「日本には外国人労働者はいない」ということにしたかったので、国際貢献と嘘をついた。

 根底にあるのは外国人差別なんです。単純労働。僕はその言葉は嫌いですが、単純労働の外国人が増えると日本の治安が悪くなるとかね。別の文化や言語を持った多様な個性の人たちが来ることに対して、政府も市民の側もおそらく拒否感というか、無理解がある。ようやくその議論が始まったということです。

  ――単純労働という言葉に差別意識があると?

 労働に貴賤はないし、誰でも最初は熟練していない。新入社員は非熟練労働者ですよ。1年経ち、2年経ち、だんだん熟練していく。日本は高度な国で、外国は非熟練の単純な国。日本が門戸を開けば、わんさか外国人が日本に来たがっている……。もはや幻想です。昔はそうだったけれど、今は違う。もう中国からは実習生はあまり来ない。北京や上海に行った方が稼げますから。

■「法務省ほど人権意識が低い省庁はない」

  ――そういう意味では新制度でも対象の14業種について、実際は単純労働だと思っているのに「特定技能」と呼ぶのも違和感がある。

 いままで外国人の受け入れについて嘘ばかりついて、本音と建前を使い分けてきた負の歴史ですよ。新制度をつくるにあたっては、法務省が過去について謝り、真実を語るべきでした。「いままで技能実習生を国際貢献と言っていたけれど労働力確保でした。今回は移民政策ですが、悪く捉えないで下さい。諸外国のように失敗しない移民政策にします。外国人と共生する社会をつくりたいんです。時間がないので、検討が不十分ですが、まずは法案を通したいので、これで議論して、大事なことは今後、検討していただけませんか」と説明すればよかった。少なくとも噛み合う議論ができたと思います。

  ――14業種が低賃金でいわゆる3K職場だから人手不足という問題もある。労働者が日本人だろうが外国人だろうが、そこの改革も必要では?

 例えば介護業界なんて、介護報酬も含め低賃金を前提にしたような制度になっている。日本人労働者も含めて、業界を担う人たちが安心して生活でき、将来設計もできるようにしないと、その産業は生き残っていけないと思います。外国人労働者が入ることで、改革の芽を摘むようなことがあってはならない。業界ごとに、今年は何人必要だとか、官庁だけでなく、使用者代表と労働者代表も入って、オープンな場で毎年議論すべきなんです。法務省と担当官庁で密室で決めて、いったん制度ができたら入国管理局が裁量権を持って、いかようにもコントロールできる。それではダメ。

  ――法務省が管轄すること自体が間違い?

 本音と建前を使い分ける法務省ほど人権感覚が低い省庁はありません。もちろん職員には良心的な人もいますが、省庁全体のスタンスとしてはとても残念。今度、法務省の中に入国管理庁を置きますが、そうではなく、法務省とは別に、移民庁なり、多文化共生庁なりを設置して、総合的な政策をつくるべきだと思います。

  ――人権や社会保障、教育なども含めて。

 とにかく、外国人は何をしでかすかわからないから、厳しく管理するというのが入管の考え。管理も一側面として必要ですが、大事なのは多文化共生を図ることです。日本は移民はいるのに移民無政策国。安倍首相が「移民政策ではない」と言うのはある意味正しくて、「日本は移民について何も考えていません」と言っているようなものです。

(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)

▽いぶすき・しょういち 1961年神奈川県出身。85年筑波大学比較文化学類(アジア・日本史専攻)卒業。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)、暁法律事務所を開設。労働者側に立った労働問題、外国人の入管問題に専門化した弁護士業務を行っている。外国人研修生の労働者性を初めて認めた三和サービス事件、精神疾患に罹患した労働者の解雇を無効とした日本ヒューレット・パッカード事件などで勝訴。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/242244
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