韓国の最高裁判所は、10月30日、
新日鉄住金に元徴用工4人に対する賠償命令を下しました。
安部総理は、「あり得ない」と発言するなど、かなり感情的な反応を示しています。
この問題、幾つかの興味深い点があります。
第一は、国家と個人との関係です。
日本政府は、1965年(昭和40年)の日韓基本条約で、
全ての請求権問題は解決済みとしています。
条約締結に当たって、
韓国政府が請求権者すべての同意を取り付けているとは思えませんので、
国同士が取り決めた事に、個人が縛られるのでしょうか?
僕は違うような気がします。
韓国の最高裁も、国同士の取り決めがあったとしても、
個人の損害賠償請求権は消滅しないとの事なのでしょう。
なお、日本政府は、条約締結の前提として、
こうした請求に応じるための資金を韓国に提供し、
韓国政府が支払う事になっていましたが、これがどうなったのは分かりません。
第二点は、三権分立の考え方です。
日本の政治家からは、何で韓国政府はこのような判決を出させたのかと、
文大統領を非難する声が上がっていますが、これは間違いです。
こうした発言があるのは、
日本の最高裁が政府の意向を受けた判断をしているからでしょう。
日韓関係悪化を憂慮する朴槿恵前政権時代に、
最高裁へ働きかけを行った事で、5年間判決が遅れたとされています。
この働きかけ問題については、最近逮捕者が出ていますので、
今後明らかになると思います。
いずれにしても、日本の最高裁よりは韓国の最高裁の方が健全な気はします。
第三点は、日本の外交です。
今回の判決が出て、日本政府は慌てふためいている感じがします。
最高裁で却下されると考えていたのでしょうか?
それは余りにも楽天的な見方だったような気がします。
今回の判決で、一番困っているのは、韓国政府です。
そのような事が、どうして日本の外務省は分からないのでしょうか?
普通に考えれば、外務大臣あたりが韓国政府を非難する発言をして、
それを総理大臣が押さえながら、落としどころを探るべきだと思いますが、
初めから総理がエキサイトしてしまっては、
着地点を見出すのが難しくなるような気がします。
安倍総理は外交が得意だと自認していますが、
到底外交的センスのある人だとは思えません。
外務省はどのようなシナリオを考えているのでしょう?
少なくても、韓国政府に最高裁判決を否定させるシナリオだとすると、
それは余りにも無茶な話だと思います。
産経新聞では、問題発言の多い阿比留編集委員が韓国に対抗措置をとれと、
署名入りの記事を載せていますが、
そんな事で解決する問題ではないでしょうね。
第四点は、新日鉄住金の態度です。
判決のあった金額は1人1千万円で、合わせて4千万です。
新日鉄住金ほどの大企業などでは、微々たる金額だと思います。
むしろ訴訟維持のための経費や、韓国国内における営業イメージなどを考えると、
早めに和解してしまった方が、経営的には良かったのではないかと思います。
それをしなかったのは、政府からの圧力があったのでしょうね。
今日、政府は、訴訟の当事者となっている企業を集めて、
和解に応じないよう説明会を開催しています。
政府の説明に従い、支払いに応じなければ、
すぐに差し押さえ等の強制執行が行われる可能性があります。
株主に対して説明出来るのでしょうか?
ともかく、和解に応じるかどうかは、各企業の判断であるべくだと思います。
今回の判決によって、
韓国最高裁は、日本の植民地支配を不法とする考えを明らかにしました。
これは、今以て多くの韓国の方が思っている事なのでしょう。
今後の日韓関係を考えて行く時、
この点を忘れては話がこじれるだけのような気がします。
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