河合塾の石川とかいう講師が執筆した
『日本史の考え方』（講談社現代新書）
なる本を読んだ。
久々に日本史に関する書籍を読んだのだが、予備校講師の執筆とあって、受験生、特に東大の論述試験に役に立つコンセプトで書かれていてこれはこれで、面白かった。
ともかく、250ページほどの紙幅の中での記述なので、時代をバックリ２区分に区切っての内容ではあったが、これも要点を絞っていて面白い。
その２区分とは、
・中国の真似をしはじめた古代（天武朝の奈良時代）
・欧米の真似をしはじめた近代（明治国家）
を中心としているのだが、どちらにも共通しているのが、対外危機の中で、国民国家を成立させるために過去の文化を捨て去り中央集権国家を生成しはじめた頃になる。
最初の天武朝時代は、律令と軍の整備であり、これは白村江の戦いで壊滅的ダメージを受けた日本軍が抱いた朝鮮半島の危機で、大陸（唐）の脅威のためにあわてて天皇を中心とした律令国家を目指したこと。そして明治の頃は、周知の通り、ペリーの艦砲外交である。欧米から押し付けられた不平等条約を解消するために、藩閥政治はチャラにして、急遽天皇を頂点とした国民国家の形成をしていく。
この筆者は、特に近年、意見が分かれるところの、明治以降の近代史において、日本の帝国主義は単なる侵略か、生き残りをかけたやむをえない防衛策か、というところでは、どっちかというと侵略国家に邁進していったという立場を取っている。
まあ、10年くらい前の僕ならば、「まーたこういうサヨク的な意見を言う奴が出てきたよ・・」と切り捨てていたところだろうが、今は、視点を変えればこの人のような見方も概ね間違ってはいないんだろうな、、とは思う。
明治時代というのは、改めて調べてみても非常に面白い時代ではあって、幕末に勝ち抜いた薩長の連中が中心になって推し進めた新政府は、かなり無理をした近代化を進めている。
面白いのが、国家の整備の進め方が
�／世箸靴討療傾弔良�活（王政復古の大号令）
��天皇の軍隊・徴兵制
�Ｆ盂媽�後
�し�法
�チ�挙制・議会制度
の順で行っているということ。
まず、軍隊ありきで、そこから内閣、憲法、議会と進んでいるので順番が逆なのである。そのため、第一次伊藤内閣以降の内閣というのは、非常にもろく、内閣総理大臣の一代の政権が、平均すると１年ちょいしか続いていない。
大日本帝国憲法も、短期間で作り上げてしまったのは、そのもろい内閣に対して、自由民権運動などの超然主義が動き始めていたため、まずは薩長の連中が既成事実をつくらんがために、無理くりに作ってしまった。
これなども、考えてみりゃ、日本国憲法の誕生の無理くり感と似てなくはない。
このようにどうにか国民国家としての体裁を整えるように、無理やり努力してきたのが明治時代である。
そうすると、当然問題になるのが、周縁地域になってくる。
古代に、東北や九州を蝦夷、隼人、熊襲などと蔑称で呼んで、ヤマト政権に従わせるために討伐してきたのと同様に、北海道、沖縄、台湾、朝鮮などを日本の国家に組み込んでいくためにはかなり強引なこともしなければならなかった。
不平等条約をいち早く解約し、列強に侵略されない国家を作るために、明治政府がどれだけ苦労したかがよくわかるし、危機感、恐怖感も並大抵ではなかったろう。
だけど、そのために捨てたものというのも、かなり大きい。
明治中期には、欧米諸国から、様々な分野の外人講師を招聘して、近代化のための技術や知識を「輸入」したのだが、その中で、北海道の開拓は、アメリカ人の講師からの指示で、アイヌを追い出し、国家の土地として開墾するということをやっている。
そのために、現在は絶滅寸前に追いやられているアイヌ文化だが、このような周縁の民族が培ってきた文化が消えていってしまったのは、僕はどんな言い訳をしても贖罪であることには間違いないと思う。
それをまた、アメリカ人にそそのかされてやったというのも、哀しい。
アメリカの建国が、先住民族のインディアンを壊滅することで成り立ったことを考えると、日本人はあの虐殺の民族と同じ道をたどったことになる。
だったら、そのまま北海道を放置していたまま列強に侵食されなかったのか？といえば、それも当時の国際情勢では無理である。なんたって北にはロシアの脅威があるから。
んで、僕には、「これが正しい道だった」なんてのはやはり言えないということ。
ウヨクだ、サヨクだ、なんてやりあっているのを見ていると、お前らがその歴史の運命に立ち入れるほど凄い奴なのかよ、って思ってしまう。神でもない限り、歴史を断罪するなんてやはり不可能なんだろうな。
で、ごく単純な感情論だけでいうと、アイヌ文化や琉球文化など、非常に価値のある文化が、そこで消滅していってしまったことは、哀しい。
人類は、どこかで画一化していかないと、成り立たないのだろうか？
世界規模で考えると、適者生存の論理で、世界的に価値のないものは消え行く運命にあるのだろうか？
何かどんどんつまらない世の中になっていっている気がしてならない。
歴史学者の網野善彦の著作など読んでいると、中世の周縁の人々の研究にかなりの実績を残されているので非常にワクワクしてしまうし、作家の宮崎学もヤクザを中心とするアウトローの世界を、歴史的に検証したりしているが、そういった周縁社会にスポットを当てていてこれまたワクワク感満載である。
そういった、もはや「おとぎ話」にしかワクワク感を見だせなくなっているようでは、歴史なんて学ぶ意味を感じられない。
誰かに、この鬱々とした気持ちを打破してもらいたいよ・・
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