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2018年08月16日13:10

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米戦略家たちの常識は「陸自は縮小が必要」 余剰人員で「災害救援隊」を創設せよ

 下記は、2018.8.16 付の JBpress に寄稿した、北村 淳 氏の記事です。

                        記

 日本では言うまでもなく8月15日が第2次世界大戦の終戦記念日とされている。だが、イギリスではその8月15日が対日戦勝記念日とされており、アメリカでは日本が降伏文書に署名した9月2日が対日戦勝記念日とされている。

 いずれにせよ、戦争に勝利した側も敗北を喫した側も、戦史から教訓を学び取ることは将来にわたって平和を維持していくために不可欠である。教訓といっても、自らの成功や失敗だけでなく相手方の成功や失敗からも多くを学び取らねばならないし、自らが関与しない古今東西の戦例からも様々な教訓を得ることが可能である。

生かされていない教訓「陸戦は避けよ」

 周辺の軍事情勢が厳しさを増している今日、日本が第2次世界大戦から学び取り現在に生かさなければならない様々な教訓のうち国防の基本方針に関わる筆頭は、「外敵の軍事的脅威は海洋で打ち払わなければいけない」ということである。

 この教訓は、沖縄や大平洋の多数の島嶼や樺太などで繰り広げられた陸上戦(とりわけ多数の民間人を巻き込んだ沖縄や樺太の地上での戦闘)のような「“陸上での防衛戦”を前提としてはならない」と言い換えることができる。

 しかしながら、今日の日本国防当局が必ずしもこの教訓を生かしているとは思えない。というのは、陸上自衛隊は日本国内の陸上での防衛戦を前提としているからである。

 もちろん、日本国内に立てこもって玉砕するまで戦い抜くという意味ではない。アメリカの日本救援軍が来援して外敵を蹴散らしてくれるまで抵抗するのが陸上自衛隊にとって最後の防衛戦ということになっている。

 だが興味深いことに、日本政府や防衛当局が期待している救援軍を編成するかもしれない米海軍や海兵隊関係者たちの中には、陸上自衛隊の存在目的に対して疑問を呈する戦略家たちが少なくない。

陸自の妥当な規模は最大で5万〜6万名

 米軍関係者の一部は、近年頻度を増した陸上自衛隊との合同訓練や情報交換などによって日本の防衛態勢ならびに陸上自衛隊の現状を理解するにつれ、以下のような意見を口にするようになった。

 「今日、日本が置かれている軍事的環境ならびに日本の国防予算規模から判断すると、陸上自衛隊の人的規模、兵力およそ15万名は大きすぎると思われる。反対に、中国海洋戦力(海軍・空軍・ロケット軍)の飛躍的増強に鑑みれば、海上自衛隊と航空自衛隊の規模はあまりにも小さすぎる」

 「日本にとって妥当と思われる防衛戦略(これ自体、戦略家ごとに様々なアイデアがあるのだが)から導き出せる『陸上自衛隊が果たすべき役割』を土台にして必要兵力を算定すると、5万〜6万名といったところが最大規模ということになる。反対に、海上自衛隊と航空自衛隊の戦力(艦艇、航空機そして人員)は相当思い切った増強が必要になり、最小兵力はそれぞれ10万名前後ということになる」

 「純粋に軍事戦略的視点から冷徹に判断すると、陸上自衛隊は8万〜10万名近い余剰人員を抱えており、それを削減することが日本の防衛態勢を正常化し強化する第一歩となる。このような大出血を伴う改革を、強い反発や恨みを買うことを覚悟して自ら唱道するのは難事だろう。しかしながら、陸上自衛隊の人員大削減を実施しなければ、日本の国防に未来はない」

陸自「削減」の必要性を暗に認めている日本政府

 日本政府は、海上自衛隊ならびに航空自衛隊の人員不足を少しでも補うために、海上自衛隊や航空自衛隊の施設警備などの地上任務の一部を陸上自衛隊に移管する検討を開始したという。

 海上自衛隊や航空自衛隊の基地をはじめとする施設は、それぞれ481カ所、392カ所存在し、現在、それらの警備などは海上自衛隊と航空自衛隊が自ら実施している。このような警備をはじめとする各種地上任務を陸上自衛隊が実施することになれば、海上自衛隊も航空自衛隊も、兵員数を増加することなく、艦艇や航空機に関係する要員を(若干とはいうものの)増加させることができるというアイデアである。

 日本政府がこのような「クロスサービス」を検討しているということは、上記の米軍戦略家たちと同じく、陸上自衛隊兵力は“多すぎ”、海上自衛隊と航空自衛隊の兵員数は“少なすぎる”と考えていることを意味する。

常設「災害救援隊」創設というアイデア

 とはいえ、陸上自衛隊によるクロスサービスを、海上自衛隊や航空自衛隊の移籍可能なポジションへの移動という形で実現したとしても、そのような新設ポジションは3万名程度といったところである。そのため、上記のように8万〜10万名もの人員削減を実施するとなると、5万〜7万名近い人々が陸上自衛隊から去らねばならないことになる。

 そこで、とりわけ「トモダチ作戦」にも参加した経験のある米海軍や海兵隊の人々が口にするのが、「退役陸上自衛隊将兵を母体とした災害救援隊の創設」というアイデアである。すなわち、陸上自衛隊から離れることになる5万〜7万名前後の人々を中心にして「災害救援隊」を編制するのである。

 もちろん「災害救援隊」はもはや軍事組織ではないため、防衛省の管轄下にはない。近頃石破茂・元防衛大臣や全国知事会などが提唱している「防災省」のような機関が直轄する実働部隊となる。

 ただし、新設される災害救援隊は、陸上自衛隊が保持する能力のうち災害救援に活用できる能力を保持するので、両隊の災害救援能力はオーバーラップすることになる。そのため、「陸上自衛隊から分離独立させる必要はなく、これまで通り必要に応じて自衛隊から救援部隊を派遣すべきである」といった反対意見が出てくるであろう。

 しかし、災害救援活動に特化した装備を身につけ、専門の訓練を施すことになる「災害救援隊」は、“災害救援でも活躍可能”というレベルの陸上自衛隊の救援部隊よりも強力な災害救援部隊となるのは自明の理である。

 また、常設災害救援隊の設置に関して、「災害救援を専門とする組織は、消防組織や警察組織や軍事組織と違って、大規模災害が発生しない“平時”において訓練以外の任務がないではないか」という批判も加えられるかもしれない。しかし、軍隊もその本務は「外敵との戦闘に打ち勝つ」ことにあるのであって、戦闘や戦争が発生していない“平時”にあっては訓練が任務となっているのである。

災害救援隊の創建を即刻検討すべき

 もちろん、上記の米軍関係者たちが自衛隊や防衛省の人々に対して、

 「陸上自衛隊は効率的な組織改革を実施すれば、5万名で十分である」

 「陸上自衛隊が米軍側と繰り返している合同訓練には軍事的には疑問符が付せられるものが多い。陸上自衛隊の存在意義をアピールするために無理矢理バカバカしいシナリオを作り出しているとしか考えられない」

といった本音を公的に口にすることは絶対にあり得ない。

 そのため、何らかの理由で自衛隊の戦力がアメリカ軍にとっても本当に必要にならない限り、上記のような“提言”が日本側に対してなされることはないであろう。

 しかしながら、頻発する大規模自然災害と、強化すべき海洋戦力という現状に鑑みるならば、「陸上自衛隊から削減するべき人員を母体として災害救援隊を組織する」というアイデアは、即刻真剣に検討されてしかるべきアイデアである。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53821
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