mixiユーザー(id:5456296)

2018年07月27日09:02

128 view

猛暑で「脱・原発」の韓国電力需給も正念場

 下記は、2018.7.27 付の JBpress に寄稿した、玉置 直司 氏の記事です。

                       記

 2018年7月の韓国も、連日、記録的な猛暑が続いている。例年なら7月後半まで梅雨が続き、本格的な暑さは7月末から8月中旬だが、今年は7月前半から連日の猛暑だ。

 エアコンの使用などで電力使用量が急増している。予備電力が10%を割り込む日も続き、韓国では、政府の「脱・原発」政策に対する議論も高まっている。

 2018年7月24日、青瓦台(大統領府)での国務会議(長官会議)で文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)大統領はこう切り出した。


大統領の冒頭発言


 「猛暑で電力需要が急増していることに対する憂慮が出ている。原発稼働についてのとんでもない間違った話もある。産業通商資源部が全体的な電力需給計画と見通し、さらに対策について詳細に国民に明らかにするように」

 冒頭でこんな話をしたのは、猛暑で電力供給に対する不安の声が上がり、一部で「電力供給に余裕がなくなったのは政府の脱・原発政策のせいではないか」という批判の声も出たからだ。

 韓国で猛暑が本格化し始めたのは7月半ば。16日以降は連日ソウルの最高気温が32度を超えた。ソウルの最高気温は、19日34度、20日35度となり、21日には37度、22日には38度まで上昇した。

 東京と比べても日中の暑さはほとんど変らないほどだ。朝晩は、東京よりは「多少」は過ごしやすいが、周辺の知人に聞いても、「さすがに7月半ばからはエアコンなしでは眠れない」という意見が圧倒的だ。

 猛暑のせいで車で出勤したり出かける人が増えたのか、ソウルの道路はふだんにも増して渋滞がひどい。にもかかわらず、夜、飲食店の混雑はそれほどでもない。

 「暑すぎて、外出を避けているのではないか」という声をよく聞く。


ソウルで38度も。電力需要急増


 猛暑でエアコンの使用などによる電力需要も跳ね上がった。

 最大電力需要は、16日8630万キロワット、20日8808万キロワットとなり、23日には9069万キロワット、24日9248万キロワット、25日9039万キロワットに達した。

 産業通商資源部は、7月5日にこの夏の電力需給見通しを明らかにしていた。

 それによると、最大電力需要は前年より371万キロワット多い8830万キロワットと予測していた。それでも、1241万キロワットの予備電力があるという説明だった。

 ところが、わずか2週間半後の23日にあっさりとこの見通しを上回ってしまった。23日の最大電力需要時には予備電力比率が8.4%に落ち込んだ。


電力使用自粛要請の準備も


 韓国電力取引所は「最大需要見通し」を超えたこの日の夜、大口電力利用者である3000社を超える事業者に「電力使用削減要請(DR)」を発令の「予告」を通知した。

 電力取引所は、予備電力を監視しながら、必要な場合は事業者の電力使用再現を要請できる。これがDRで、その見返りに補償金を出す。

 DRを発令すると、企業活動への影響も大きい。産業通商資源部は翌日24日、「7月中には発令しない」との方針を決めた。

 だが、その24日には、予備電力は709万キロワット、7.6%の水準まで落ち込んでしまった。

 韓国では2011年夏に「ブラックアウト」直前まで電力需給が逼迫したことがある。産業界などでは、このときの記憶があり、不安の声が急速に高まっていた。

 そんな中で、「朝鮮日報」は2018年7月23日付で「電力需要予想を超えるや…脱・原発政府、原発にSOS」という大きな記事を掲載した。

 この記事は政府の電力需要予測の甘さを指摘しながら、「政府は結局、もういちど原発稼働を増やすことを決めた。最近、設備点検を終えたハンウル4号機は21日に稼働を再開した。これにより原発24基のうち17基が稼働することになった。政府は先の冬に14基に過ぎなかった原発の稼働を今年の夏には19基にまで増やすことになった」と報じた。

 あたかも、電力需給の逼迫にあわてた政府が、急きょ原発稼働に動いて急場をしのごうとしているという内容だ。政府の政策に批判的なメディアらしい報道ぶりではある。

 文在寅大統領はこうした報道を指して批判したと見られる。

 確かに、原発の再稼働などは、1日や2日の電力需給で実行できるわけではない。夏の時期に稼働を増やすことは以前から決まっていたと政府は反論する。

 だが、韓国電力公社の発電子会社である韓国水力原子力は22日に発表した「夏季電力供給対応策」の中で「現在稼働停止中のハンビット3号機、ハンウル2号機を8月第2〜3週より前に再稼働できるように努力する。またハンビット1号機、ハンウル1号機の点検も電力需要ピーク時期以降にずらすことに決めた」と説明した。

 電力需給は心配しなくてもいい、ということを言おうとしたのだろうが、「急きょ、原発稼働を調整した」とも読める内容だった。

 電力需要見通しや、DR発令の「予告」と翌日の否定など、突然の猛暑で、政府の対応が、右往左往して分かりにくかった点は否めない。


脱・原発政策


 文在寅政権は、「脱・原発」を掲げている。老朽化した原発の廃棄や、稼働中の原発の点検期間を延ばすなどの措置で、原発稼働率を引き下げていた。

 韓国内の原発稼働率は2016年には80〜90%だった。文在寅政権の登場後、2017年には71%に低下した。2018年3月には54.8%にまで下落していた。

 2017年末に産業通商資源部が発表した「第8次電力需給基本計画」によると、発電量ベースで2017年に30.3%あった原発依存度を2030年には23.9%に引き下げるとある。

 韓国は世界でも有数の原発依存度が高い国だが、徐々に新エネルギーなどの比率を上げつつある。その一方で、新規原発建設の白紙化と老朽原発設備の延長不許可を進める方針だ。

 原発依存度を下げる分を、石炭火力発電所のフル稼働などでしのごうとしていたが、あまりの猛暑で、2018年7月には電力需要が急増し、電力需給が逼迫してしまった。

 産業界の一部からは、「原発の運転停止を急速に進めすぎたのではないか」という声もある。

 さらに、「脱・原発」という政権の基本政策を進めるため、そもそも需給見通しが甘かったのではないかという批判は多い。

 いくら猛暑とはいえ、あっという間に、政府の「最大電力需要」見通しを超えてしまったことに対する不安は強いのだ。


脱・原発は進むが…


 韓国内でも、東日本大震災を機に安全性への不安が高まった。特に、釜山など人口密集地域に比較的近い場所に原発があることもあり、原発依存度を下げることにはある程度の理解がある。

 だが、思わぬ猛暑で電力需要が跳ね上がり、電力需給が逼迫したことで、「やはり資源がない韓国には原発が欠かせないのではないか」という声が勢いを得たことは間違いない。

 さらに、原発依存度を下げることと比例して石炭火力発電所の稼働を増やすと、韓国で深刻な大気汚染への悪影響は避けられない。

 真夏に石炭火力発電がフル稼働を続ける光景に考え込まされる国民も少なくない。

 原発の稼働率を引き上げて、石炭やLNGを使った発電所の稼働率を上げたことで、韓国電力公社の経営にも影響が出ている。

 韓国電力公社は、2015年と2016年には10兆ウォン(1円=10ウォン)を超える営業利益を上げたが、原発稼働率を上げて燃料コストが跳ね上がり、2017年10〜12月期と2018年1〜3月期に1000億ウォンを超える赤字になった。

 2018年の1〜6月には5000億ウォン以上の営業赤字になる見通しだ。韓国電力公社の経営が悪化すれば、いずれ電力料金に跳ね返る可能性も高い。

 「脱・原発」の流れは、文在寅政権では維持されるはずだ。

 原発への不安はある。だが、電力需給は大丈夫なのか。環境問題への対応はどうするのか。コストはどう負担するのか。

 猛暑の中、韓国では、ビジネスマンの会食の席でも「暑いですね…」という会話の後で、原発問題が話題になることが多い。

 韓国では、7月27日から2週間ほどが夏休みのピークだ。政府は、この間は、電力需要が多少は減少すると見ている。

 ただ、8月になっても猛暑が続くとの予報も多く、電力需給にはらはらする日々があとどのくらい続くのかは予断を許さない。

 https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e7%8c%9b%e6%9a%91%e3%81%a7%e3%80%8c%e8%84%b1%e3%83%bb%e5%8e%9f%e7%99%ba%e3%80%8d%e3%81%ae%e9%9f%93%e5%9b%bd%e9%9b%bb%e5%8a%9b%e9%9c%80%e7%b5%a6%e3%82%82%e6%ad%a3%e5%bf%b5%e5%a0%b4/ar-BBL6Fsy#page=2
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する