下記は、2018.7.25 付の産経ニュースの記事です。
記
東京電力福島第1原発事故の後、福島県内の避難指示区域で野生化した家畜ブタと野生イノシシの交雑(交配)によりインターネット上などで「イノブタが大繁殖」などと流布されたことがあった。この問題で福島大学共生システム理工学類の兼子伸吾准教授らの研究グループが、捕獲した野生イノシシに対する初の遺伝子分析結果を発表した。それによると、交雑は一部に認められるものの、大繁殖といった状況とは異なり「割合は、ごく少数」としている。
研究グループが分析したのは、平成26年から28年にかけ県内8市町村で捕獲された75頭のイノシシの遺伝子。内訳は、大熊町5頭▽浪江町28頭▽楢葉町1頭▽富岡町1頭▽葛尾村1頭▽相馬市10頭▽福島市22頭▽二本松市7頭−となっている。分析の結果、ブタ由来の遺伝子を持ち交雑の結果、生まれたと考えられるものは浪江町で3頭、大熊町で1頭の計4頭だった。
事故後、避難指示区域で農家が飼育できなくなったブタが野生化し、中にはイノシシと交配するものもあり、インターネット上などで「イノブタが大繁殖」などと流布されたが、同グループは「交雑は認められるものの、その割合は一般に言われるほど多くはない」としている。
事故後、避難指示区域などの野生動物に対するDNA分析による調査は初めてだという。その結果、福島県のイノシシは遺伝的多様性が極めて低いことも判明。近い血縁内で繁殖してきたと推定されるという。このため、形態などの異常が見つかった場合も、放射線の影響というより交雑などによる異常の可能性が高いとしている。
被災地域の動物については形態異常が確認され、原発事故との関連が指摘されることも多いが、イノシシに関しては、その可能性は低いとみられる。
野生に適さないブタの遺伝子が交雑することの影響としては、イノシシの生存率が弱まるなどの可能性もあり、今後も継続調査を行うとしている。
兼子准教授は「原発事故後の福島の生き物については(イノブタなど)根拠が希薄なまま流布されるケースが多いが、そうしたことに対する科学的な検証は、風評や不安を払拭し、起きたことを正しく理解する上で大切だ」と話している。
分析結果は、日本生態学会誌「保全生態学研究」に公開されている。
(福島支局 内田優作)
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http://www.sankei.com/premium/news/180725/prm1807250003-n1.html
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