《プログラム 》
ハイドン
１ 交響曲 第９２番 ト長調「オックスフォード」Hob.��-92
２ チェロ協奏曲 第１番 ハ長調 Hob.��-1
＊＊＊＊＊ 休 憩 ＊＊＊＊＊
３ 交響曲 第９４番 ト長調「驚愕」Hob.��-94
（アンコール）
J.S.バッハ：無伴奏チェロ組曲 第１番 ト長調より「サラバンド」（チェロ独奏）
ハイドン：交響曲 第９２番 ト長調「オックスフォードより「第４楽章」（管弦楽）
ニコラ・アルトシュテット（指揮・チェロ独奏）
ハイドン・フィルハーモニー（管弦楽）
２０１８年６月２６日（火），１９：００開演，札幌コンサートホール
アダム・フィッシャーが１９８７年に創設したオーストリア＝ハンガリー・ハイドン・フィルハーモニーが，このオーケストラの旧称。このコンビで挑んだハイドンの交響曲全集が有名だ。２０１５/１６年シーズンから，ニコラ・アルトシュテットが芸術監督に就き，この団体の名称もハイドン・フィルハーモニーに改められた。
ハイドン・フィルハーモニーは室内管弦楽団サイズ。この日，絃楽器は６−４−４−３ー２，管楽器はFlーObーFgーTpーHnそしてTmpという編成で，チェロ以外は立ったままで演奏。純然たる古楽演奏団体ではないものの，トランペットやホルンはピリオード楽器を使用している。
使用楽器からは古楽演奏団体といえないにしても，このオーケストラ独特の演奏方法は古楽から大きな影響を受けているようだ。オーケストラよりも指揮者が古楽を参考に独自の奏法を編み出したという方がより真実に近いだろう。
ニコラ・アルトシュテットの指揮は，ニコラウス・アーノンクールに似通っている。たとえば，アクセントを強調し過ぎる傾向。また，アクセントの直前の音符を必要以上に引き延ばすような弾き方はアルトシュテット独自の発明だろうか。指揮の身振りも個性的。大きく両手を上げ，派手なステップを踏み，まるで踊るような仕草でオーケストラをリードする。アクセントの手前では全身の動きがゆるやかになり，アクセントの箇所では素早く手足を動かす。船酔いのような感覚を起こさせるジェスチャーが満載である。
プロフィールを読むと，ボリス・ベルガメンシコフの最後の弟子であり，世界が注目する若手チェリストなのだそうだ。ドゥダメル＆ウィーン・フィル，マリナー＆チューリヒ・トーンハレ，ノリントン＆シュトゥットガルト放送響などと共演し，クレーメルの後任としてロッケンハウス音楽祭の芸術監督にも就任した才人らしい。
「オックスフォード」，チェロ協奏曲第１番，「驚愕」は，ハイドンのオーケストラ作品の中でも好きな曲目。だが，この日の演奏をどうしても振り返る気持ちにはならない。
古典派の作曲家であるハイドンの交響曲や協奏曲の演奏に際し，あれほど大きくかつ頻繁にテンポを揺らす必要があるのか，あれほど極端なアクセントをつける意味があるのか，あれほどデフォルメする理由が分からない。アルトシュテットが新基軸を打ち出そうとしていることは察しがつく。だが，そのことで何を伝えようとしているのかは皆目見当がつかない。後に残ったのは，波に揺さぶられた船を降りた後のような気持ち悪さだけ。
さらに，アルトシュテットの特異な身振りの毒気にもやられてしまったようだ。そして，アラブの民族衣装のようなダブダブで真っ黒な独特の出立ちも，強烈なインパクトがある。こうした非音楽的要素も彼らの演奏を思い出したくない要因の一部だろう。
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