御臨終のREVOX
私がREVOXのブランドを意識したのは、
アルバイト先のオーディオ屋で、その音の良さを知ったからでした。
店舗の奥には、照明を落としたカーペット敷きのリスリングルームが設備され、
舶来品やガレージメーカや、
国産メーカ品ではフラグシップモデルが陳列されていました。
当時は、景気が良かったのですね。
そのアルバイトは、オートバイ購入の資金調達が目的だったのですが、
オーディオアンプは自作していた位ですから、決して嫌いではありませんでした。
それどころか、恐れ多くも、その電子工作の知識が売り子として有利に働くだろう。
と思い込んでの選択だったのです。若気の至りとはこの事です。
さて、高級オーディオ担当の社員が休暇の日で
かつ、学校の講義のない平日でのアルバイトでは、
店舗のリスリングルームは私の天下となりました。
同じソースであっても、オーディオ機材の組み合わせによって、
面白いように音が変わる。
こうして、国産メーカーごとの音のポリシーに気づいたり、
なによりも、日本製と海外メーカとのあまりにも違いすぎる音の世界に、
作り手の文化の違いは如何にもしがたい事を学びました。
独逸グラモフォンのオイゲンヨッフムのブルックナーが愛聴盤で
STUDERかREVOXのCDプレーヤと、REVOXのアンプ、
そしてスピーカはA/D/S(独逸BURAUNの系統で源流はSIEMENSの系統)の
L1290だかL1590？の組み合わせが大のお気に入りでした。
そして、アルバイトを辞める時に
優待割引を効かせて、REVOX B150を買いました。
本当は、上位機種のB250SGの、腰の据わった渋い迫力が魅力だったのですが、
高額で手が出ませんでした。
B150は少しフレッシュな若々しい印象で、少々物足りない感じもありましたが、
でも、1990年の当時、定価で195,000円もしたのですよ。ただの増幅器のくせに！
それから、A/D/S社のスピーカも買えませんした。
学生如きがおいそれ手が出せる価格帯ではなかったのです。
それで、手の届く価格帯で、
やや好ましく思えた独逸CANTON社のスピーカで我慢したのです。
それでもブラームスのピアノ協奏曲が旨く鳴っていました。
後になって、CANTON社も、A/D/S社と同じく、
実は独逸BRAUNをスピンアウトしたメンバーの開発と知って驚きました。
やっぱり、ドイツ音楽はドイツの機器で聴くのが一番！
との、思いが深まりました。
簡単な話、ビストロで寿司を頼む阿呆はいない。という事が
初めて判ったのでした。
※REVOXはB150スイス製ですが、まぁ、独逸文化圏です。
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時が経ち、
私は、毎日音楽を掛けるのが習慣になっています。
REVOXは居間に設置してあるので、
朝一番で連れ合いがハイドンを流します。
そんな毎日が、ずっと続いていました。
そうそう、スピーカはCANTONではなく
Isophon社のOrchesterに変りましたが。
で、先週、
左のスピーカから、ボツボツとノイズが出るようになりました。
もう購入してから、28年も経過しているのですから、
電子デバイスの耐用年数はとっくに過ぎています。
パワー段の平滑コンデンサも膨張してきている事は既に把握していました。
毎日、毎日、通電していたから今までもっていた。
そう云う事なのだと思います。
B150の様な半導体アンプを不安定な状態で運用するのは危険です。
もはやプロテクト回路も正常動作するか怪しいと見るべきで
スピーカを道連れに破壊する恐れも有りましょう。
左様な理由で、修理完了までの間、お役御免にする事にしました。
さて、朝のBGMがないと、
平日の朝はハイドンで決めていた、連れ合いの機嫌の悪いこと！
気分がシャッキリしないのでしょう。
他の案件に飛び火する可能性すらあります故に気が気ではありません。
斯くなる上は速やかに対処すべし。
ピンチヒッターとして引っ張り出したのが
QUAD社の33+303の組み合わせです。
小振りでモダンなデザインは嫌いではありません。
ところが、一聴して、総スカンを喰らいました。
REVOXと比べて非常に臨場感が高く、とてもリアルなのです？！
そして、音がやたらに耳に着き、自己主張が激しい。
ボリュームを上げると会話が成立しない。
「悪いけれど、コレ、煩くてイヤ。」
これが家人のコメントでした。
自室でDUODEにつないで聞いていた時は
こんな印象を持ちませんでしたし、
QUAD社の33+303はナローレンジだが濃密で楽しい音がする。
という定説通り、その印象を持って楽しんでいただけに
少々面喰いました。
失って初めて気付くと云うか、
品がよく、適度に明るく、
それでいて、ドイツらしい骨格のある格好良い音色。※
※エテルナやLPM、SLPMチューリップ番台のドイツグラモフォンの音色。。。
きっと、オーバーホールで
電解コンデンサなどを交換したら
音もすっかり変わってしまうのだろうな。と。
しかし、今のままでは拙いだろうと思っています。
いずれ復活させなくては。
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