■山行概要
◆【北アルプス】
涸沢カール(2350m)
◆2018/5/4(金)〜2018/5/5(土)、気温-4℃〜10℃、吹雪⇒曇り⇒雪⇒晴れ、全備重量17.4kg
◆累積標高差約495m、歩行距離ピストンで約31.2km
引き返し地点までの往路所要時間5:20(コースタイム4:10)
引き返し地点からの復路所要時間6:20(コースタイム4:15)
さて、何て書きましょう、一言では難しいですね。
えっと、
雪の北穂高岳にチャレンジしようとしました。
↓
山行予定日が悪天候のため、2泊の予定を1泊に短縮、北穂アタックは諦めて雪の涸沢に行こうとしました。
↓
晴れると思ったら朝、雪になってしまい、天候が落ち着くのを待って、行ける所まで行ってみました。
こんな感じです。何やらわかりにくいですね。どこに行ったの？と聞かれたら「本谷橋からSガレ手前の標高約2000m地点まで」としか答えられません。結果的には北穂にも涸沢にも行ってないので。
例によって前書きが長いでござるよ。
【前説】
3月末くらいでしょうか。部室でいつもの様に飲んでると、何やら気になる会話が聞こえてきました。どうも顧問の梅さんがGWにO野さん夫妻を雪の北穂に連れて行くとか何とか・・・。日程はGW後半の4連休、頭の2泊3日。自分は例年、この日程はファミリーキャンプ(地元の保育園のご父兄のお付き合い関連)の予定が入っておりまして、そもそも雪山をやるつもりは全く無かったので、ほほーんと聞き流していたのです。
「大丈夫、大丈夫、初めてでも全然登れるから。そもそもベストコンディションじゃなきゃアタックしないし。」
「少しでも天候が悪かったら2泊はしないで、2日目に涸沢降りるから。」
「だから暑いと感じる天気じゃなきゃ登らないので、雪山用の服なんて要らない要らない！レインウェアで十分よ。」
「あ、でもピッケルは絶対必要ね。持って無かったらストレートシャフトのやつを購入して下さい。」
「グローブはスキー用で十分。あとはゲイターとサングラス、日焼け止めは必須だからね。」
「アイゼンはまあ、軽アイゼンはちょっとアレだけど、前爪は無くても平気よ？日が出て雪が緩んでから登るので！」
「まあ後はハートかな？傾斜は50度以上あるので、怖いと言えば怖い。でもビビらなければ行けますよ！」
「雪崩？あー、平気平気！滑落？あー、落ちても骨折程度で死ぬ人はいないから！」
もうね、梅さんの話が気になってしかたない。先約在りで参加できないとはわかっていても、話を聞く限りじゃ自分もピッケルだけ買えば装備面は全く問題無さそうなんだもの。アイゼンもザックに常備している4本爪 or 6本爪の軽アイゼン以外に、前爪無しの10本爪持ってるし。ブーツも雪山用じゃないけど、フルレザーのハイカット持ってるし。レインウェアもゲイターもグローブも全て問題ないのよ。話によると、メインは梅さんがガイドしてO野さん夫妻を雪の北穂に登頂させるイベントに、HGさんやOG原さんが一緒にくっついて行く、そんな感じみたいです。ちなみにOG原さんは昨年の同時期に梅さんにガイドしてもらって雪の北穂に登頂しているんですよね。尤もOG原さんはピッケルや12本爪アイゼン・冬靴など、冬山装備は一式持っていて以前、2月の厳冬期に八ヶ岳(赤岳)の登頂経験もある、れっきとした雪山経験者なのですが。
さてさて、月は明けて4月。娘氏の学校の予定が出てきました。すると何と！GWに予定していたキャンプの日程で昇級審査会が入っているではありませんか！通常の部活なら休めばいいのですが、審査会はちゃんと定期的に受けていかないと段位の取得が出来なくなるので、本人も絶対に休みたくないと言う(中高と6年間、順当に薙刀やってると、卒業時に二段まで段位を取れるのだそうです)。かみさんもほぼ100％、仕事が入るので家族揃ってのキャンプ参加は無理かも知れなくなってきた。なお、昨年はかみさんが仕事だったので、自分と娘氏だけでキャンプに行きました。が、しかし今回、自分独りで他の家族のキャンプに参加してもそれってどうなの？ってのもあり、うちらは欠席でもいいんじゃないかと思えてきた。いずれにしてもかみさんの5月の勤務表が出るまでは欠席連絡は保留ということになり、雪山デビューの50％の可能性にかけて、平行して準備を進めることにしました。
【ピッケルが欲しいのです！】
参加確率50％(行けるか行けないかの二択なんだから、そりゃそうだ)ってことで途中から自分も打ち合わせに参加。当初は色々な意見・プラン案が出ましてね、飲みながら毎回こういった山行打ち合わせをするのは本当に楽しい。
・天候次第では北穂アタックは中止になる可能性もあるから、せっかくなのでテント泊にしね？
・いやー、涸沢までとは言え、雪山装備にテン泊装備は流石にきつくね？
・したらせめて飯だけは自炊にしようぜ！
・いや、基本上高地解散で全員でパーティー組むわけじゃないから、初日に蝶ヶ岳登って二日目に涸沢で合流とかどう？
などなど。
そして忘れてはいけないのが装備の調達。4月も半ばを過ぎると冬山装備の購入が難しくなってくる。全く入手不可、ってことではなく、任意のサイズや色が入手しずらくなるそう(OG原さん談)。OG原さんは八ヶ岳の時は冬靴だけ自分で買って、それ以外の装備は梅さんから借りたんですよね(この時のガイドは顧問の梅さんではなく副部長)。で、実際にアイゼンやピッケルを買ったのが昨年GWのこの山行のタイミングだったそうです。
ってことで、自分もピッケルが欲しい！もうね、欲しくて欲しくてたまらんのですよ。雪山自体、当初からスコープ外だったのでまさか自分が検討するとは思ってもみなかったのですが、購入の理由なんて「参加するかも知れない」可能性だけで十分！色々店舗で物色した結果、結局ネットで4点セット(本体・カバー上下・ハンドリーシュ)を購入しました。あとは山行に参加できるかどうか。個人的にはこれは是非参加したい。理由は梅さんのガイド登山だから。普通、雪山始める時って山岳会とかで講習を受けますよね、じゃないと死にますので。当然お金も時間もかかります。うけもち登山部は山岳会ではないですが、経験豊富なメンバーがたくさんいて、常に教えを乞える環境ってのはとてもありがたい。正直キャンプはいつでも行けるけど、今回の山行はこのチャンスを逃したら次回開催はないかも知れない。
そんな思いが伝わったかどうかはわかりませんが、予想通りかみさんはこの日程、全部仕事が入ってしまった。3名中2名NGなので、必然的にキャンプは欠席することに。これで無事参加が確定、うおー、これはテンション上がるゾ〜！あとは天気。これが実は一番大事。今回、よほどのことが無い限り決行することになっておりまして、北穂は無理でも雪の涸沢には行ってみよう、ってことで意思が統一されておりました。GW前半の3連休は連日の快晴で、まさに山日和！ただ、自分は家庭の事情で毎日家でお留守番。家族のご飯作ったりとか。でもまあいいんです、後半の4連休が本番ですからね。こんなの全然苦にならない。
で、連休明けの1日。この週の後半の予報は2〜3日が大荒れの予報。標高3000mの北アルプスは猛吹雪の予報です。うわー、マジかよ！なんでいっつもこうなるんだ！チックショー！最終判断は梅さんに任せるということでこの日の夜、通達が。
「日程を1日短縮＆後ろにずらします。北穂アタックは中止。一泊で涸沢をピストンします」
とのこと。これがまた、てっきり夜中発の上高地朝着、初日涸沢小屋まで上がるのかと思いきや、朝発で上高地に昼着、初日に横尾山荘に泊まり、翌日涸沢をピストンしてそのまま上高地に帰還するという何とも言えないプランなのです。まあ、車出す人の負担を考えたら、徹夜で運転してそのままその日、雪の涸沢まで登るのは確かにしんどいかも知れません。自分は乗せてもらう立場なので、ここは運転手の負担を優先しますよ。
その�△愨海�・・・。
■装備関連
��Black Diamond/Raven Pro
「岳人の魂」ピッケルです！いやー、まさか自分がピッケルを買うことになるとは思いませんでした。おかげで今回、色々と勉強になりました。何でも見た目で物を選んではいけないのですよ。用途が大事、用途が。流石にアイスクライミング用のダブルアックスとかは、いくらカッコ良くても用途を考えたら有り得ないってことぐらい最初からわかってました。が、最初の1本として「あ、欲しいな」と思ったのはベントシャフトのやつでした(具体的にはGrivelの「EVO」)。ピッケルもクライミング用品ですから、国際山岳基準に準拠してまして、「カテゴリB」と「カテゴリT」に分かれております。見た目で欲しいと思ったのはカテゴリT、つまり「テクニカル」用で、実際に必要なのはカテゴリB、つまり「ベーシック」用なわけです。話は変わりますが、クライミングを始める前はカラビナの種類や用途なんか全く知らないので、とにかく見た目がかっちょいい変形D型のベントゲートを持ち歩いてました。しかし実際の使い道は基本的にクイックドローのロープをクリップする側だけで、それ以外の使い道は殆ど無いということを後で知りました。自分が想定している用途で必要なカラビナはHMS型と変形Dストレートゲートのロック付き、この2つだったのです。で、話は戻ってピッケルの種類選びですが、自分に必要なのはベントシャフトのTカテゴリではなく、ストレートシャフトのBカテゴリ。今回はまずこのストレートシャフトの製品群から自分に合ったピッケルを探すことに。とは言え、自分はクライミング用品は殆どBlackDiamondで統一(ハーネスやヘルメット、カラビナ類など)しているので、必然的に選択肢は「Raven」というシリーズから。詳しくはメーカーのWebサイトを調べていただければ詳しい説明が載っているのでここでは省きますが、要は「使用する目的」が大切なのです。これに関してはショップに何度か足を運んで、店員さんに色々教えてもらいました。同じストレートでも、グリップが付いているのと付いていないのがあります。グリップは見た目の通り、スピッツェ側にグリップが付いているので、ハンマーの様に打ち込む動作の時に便利です。しかしそんな使い方は想定していないので、杖の様に雪に上から差し込むだけなら却って邪魔になるため、グリップ付きは却下。後は大きさと軽さです。軽いタイプはアッズもピックも小さいのです。軽さと引き換えに勿論、作業効率は悪くなります。しかし大きいアッズは雪上にテント張る時の地馴らしとか、そう言った用途。雪上でテント泊とか全くする予定はないのでこれも不要。ピックは長い方が確かに制動力は大きくなりますが、これはもう重量とのトレードオフなので仕方ない。で、最後に長さ。目安は自分の伸長マイナス100cmとか、スピッツェの先端が持った時にくるぶしの辺りにくる、などと言われてるのですが、流行は「短いピッケル」とのこと。これはショップの人に理由を聞いて納得。近年、アイゼンもどんどん性能が良くなってきており、従来ならピッケルが必要な斜度でもアイゼンだけで問題なく歩ける様になった。従ってアイゼンだけでは歩けない斜度になって初めてピッケルを使うため、必然的に短いピッケルとなる、ってことなのだそう。逆に自分のアイゼンは全体的に爪も短く前爪の無い10本タイプなので、傾斜の緩い雪壁でも早目にピッケルを使った方が安全だろう、とのこと。従って通常より長めのサイズを奨められる。長さ的には60cmか65cmの二択となり、今後もガシガシ雪山をやるのであれば60cmで大きく重たいやつ。使わない想定で保険で持ち歩き、使っても左記レベルであれば65cmで小さく軽いやつ。色々悩んだ結果、最初の1本は軽量タイプで長さ長め、となりました。これにスピッツェのカバー、ピックとアッズのカバー、それからハンドリーシュ、ショルダーリーシュなど、同時購入する付属品が思った以上に必要でした。
��EVERNEW/10本爪アイゼン(製品名無し)
軽？なの、か？えっと、アイゼンです。実は結構前にAMAZONのポイントが溜まったので何となく購入したっきり、一度も使っていないのでした。昨年の11月、八ヶ岳に持って行ったんですが、日記の通り体調不良で赤岳鉱泉から途中撤退しましてね、結局使わないままでした。普段、冬の山は近所の低山しか行かないので、残雪期でも6本爪の軽アイゼンがあれば十分。それ以外は保険として4本爪を携帯してますが、10本爪って微妙に出番がないのですよ。そもそも前爪が無いだけではなく、爪の長さも他の軽アイゼンと大差ありません。足の裏全体に爪が生えてますが、靴から爪が外に出る大きさではないので、よく言う「ガニマタ歩行が無意識で出来ないと、自分で爪を自分の足に引っ掛けて転倒」などという事態には陥りません。今回の山行では普通の冬山用のアイゼンでなくては無理、というようなシチュエーションは無かったので、爪の長さや前爪の有無がどう影響するのかはわかりません。ただ一点、不安だったのは固定するベルトが全部樹脂製で、テンションがかかると伸びるのですよ。HGさんが同じタイプの10本爪(mont-bellのスノースパイク10)を履いているのですが、同じ現象はないとのこと。理由は樹脂パーツはラチェットが噛むベルトの部分だけで、ストラップは伸縮しない布製ベルトのためと思われます。どういうことかと言うと、本谷橋から先、かなりの急登があって雪の斜面を登るのですが、前6本が雪面を噛んで踵を持ち上げると、荷重が足の後ろ側にかかってこの時にアイゼンと靴がズレるのです。最初はなんでしっかり履いたのに、アイゼンのつま先位置がズレるのかわかりませんでした。本来つま先からは前爪が出ないはずなのに、気づくと見えている。その度にストラップを締め直すのですが、原因は登りの斜面でした。下りは荷重がつま先に寄るため、この現象は皆無。説明書に記載の通り、やはり「雪上歩行」用に作られているのであって、ピッケルを併用する「雪上登攀」には使っちゃいけないのかも知れませんね。するとちゃんとしたアイゼンを用意する必要がありそうですが、そんな回数これからも雪山に行くかは未定なので、少し考えます。
■写真解説
�〕眥�、起きたら真っ白になっててビックリです。昨日の夜は星空が見えるくらい晴れてたのに。
��5月とは思えない光景。横尾大橋を渡ってすぐの辺りですが、完全に冬景色ですよ。
��雪の本谷橋。これでも雪は非常に少ないのだそうです。雪渓の上に入らないよう、ロープが張ってありました。
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