mixiユーザー(id:7846239)

2018年03月17日15:47

350 view

三浦文彰ヴァイオリン・リサイタル

【プログラム】
1 モーツァルト: ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
2 R.シュトラウス: ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18
   ***** 休 憩 *****
3 バルトーク: ルーマニア民族舞曲 Sz.56
4 チャイコフスキー: ワルツ・スケルツォ ハ長調 op.34
5 チャイコフスキー: 感傷的なワルツ op.51-6
6 福田 恵子: 「赤とんぼ」の主題による小ファンタジー
7 ブラームス: ハンガリー舞曲 第5番 ト短調
8 サン=サーンス: 序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 op.28

(アンコール)
クライスラー: 中国の太鼓 op.3
チャイコフスキー: ”懐かしい土地の思い出”より「メロディー」op.42-3

 三浦 文彰(Vn)
 イタマール・ゴラン(Pf)

2018年3月6日(火),19:00開演,札幌コンサートホール


荒削りではあるが,大器の片鱗をみせたリサイタルである。2009年,三浦文彰はハノーファー国際コンクールで優勝を果たす。その時の模様を地元紙は「確かな技術と,印象的なヴィルトゥオーゾ性あふれる心温まる演奏は,国際審査員や音楽評論家の評価を得るにとどまらず,聴衆の心をもつかんだ」と評したという。

プログラムは,前半がモーツァルトとR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタで,後半は小品が5曲ならぶ。ハノーファーのコンクールで優勝した際の地元紙のコメントにあるような演奏だったのは,小品だけで構成された休憩後のプログラム。艶やかで華やかな美音,透明で骨太な響き,安定感のあるテクニックを6曲の小品で堪能させてくれる。このあたりは,ポピュラーな小品ばかりを弾いても,人気先行のヴァイオリニストと異なるところだ。体の奥から自然にわいて出て来る音楽がヴァイオリンを通してそのまま素直に伝わってくる。聴いているだけで楽しくなる演奏ができるのは,音楽的な資質に恵まれた演奏家の証だろう。

一曲だけコメントするなら,サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」だろう。サラサーテに献呈されたこの作品は,このヴィルトゥオーゾにふさわしい超絶技巧,フランス音楽らしい華やぎ,そして隣国スペインの哀愁が調和する。三浦はそれらの要素をことさら際立たせることはなく,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタのように弾く。そして抑制気味の演奏だからこそ,かえってこの曲の技巧性,華やかさやメランコリーが浮き彫りになる。もちろん,肩の力が抜けた分,ヴァイオリンの響きの透明感や美しさも一層際立つ。

しかし,プログラム前半のヴァイオリン・ソナタ2曲は,たまに美音がきこえてくるものの,凡庸な演奏に終始した。構成力のまずしさを露呈したのだろうか。あるいは,ソナタを弾くという気負いが強過ぎて,演奏が空中分解した可能性も否定できない。もともと,ソナタという形式が生理的に合わず,気乗りしないジャンルであるにもかかわらず,その無理を押して弾いてみましたというような演奏だった。このリサイタルを聴く限りでは,規模が大きく構成が複雑で構想力が試されるような作品の演奏を苦手としている,といった印象を受けた。大器へと成長するポテンシャルは秘めているものの,ここをクリアーしないことには,その才能を充分に開花させることは危ぶまれるのではないだろうか。何か特別な事情で,たまたまこの日は不本意な演奏だったというのであればいいのだが。

ピアノ伴奏を務めたイタマール・ゴランは,華麗なキャリアを誇るピアニストだ。これまでに,マキシム・ヴェンゲーロフ,ミッシャ・マイスキー,シュロモ・ミンツ,イヴリー・ギトリス,イダ・ヘンデル,チョン・キョンファ,ジャニーヌ・ヤンセンなどと共演。また,ムーティ&ウィーン・フィル,マゼール&フィルハーモニア管,ガッティ&スカラ座管などのコンサートでソリストを務める。このリサイタルでのゴランは,父親よろしく三浦が演奏しやすい舞台を整えるサポート役に徹していた。
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年03月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031