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2018年03月09日22:50

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【The Others】映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

 
確か昨年末、予告編を見た瞬間「これは必見!!」と直感した作品。
  

公式 http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/


期待にたがわず、
最初から最後までドキドキし通し、それでいて心が温まる傑作だった。


そのハッピーな余韻を少しでも長持ちさせたくて、

「You'll Never Know」 https://youtu.be/CI_VQ55EX9U
と雰囲気が似ている
『Songs In A Mellow Mood』(1954)を聞きながら家路に着いた。(笑)

  https://www.amazon.co.jp/dp/B01K24FJJU

 Ella Fitzgerald - I'm Glad There Is You  https://youtu.be/X91blmnmFFo

   (歌詞) https://mochan2006.exblog.jp/13522400/




王道メロドラマ、古典への憧憬、異類婚姻譚、アラフォー独身女性の愛と性、
冷戦時代の米ソ対立、サスペンス、暴力、SF、異形の者たちへの慈しみ、
障害者、さまざまなマイノリティ差別、セクハラ、現代批判などなど、
いろんなテーマがてんこ盛り。

だが、 緻密かつ完璧に構成されていたので、とても分かりやすいと私は感じた。


しかも、古いミュージカル映画好きには堪らない、名場面やオマージュが満載!!!

   解説  https://youtu.be/MUgtVsVqj0E





古き良き時代の音楽や映像とともに展開していく
「ハッピーエンドのラブ・ロマンス」は
きわめて型破りなヒロインのキャラ設定によって、斬新な現代性を感じさせた。



イライザ(サリー・ホーキンス)は、
一見おとなしくて平凡なアラフォー独身女性だが、実はたいした猛者である。


彼女は、物々しい警備付きで搬入されてきた頑丈な水槽を見、
「これは、この研究所でかつてないほど扱いに注意を要する研究対象だ」
という科学者の説明を聞いた上で、その水槽にちょっかいを出した。


怖いもの知らずにもほどがある。


すると、案の定「バンッ!」と音がして研究対象が暴れ出し、室内はパニック。
イライザと同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)は追い出されてしまう。

でも、彼女たちは見てしまった。 ガラス面を叩いた大きな手を。

「あれは、いったい何?」


普通の女なら、怯えて二度と水槽に近づこうとしないだろう。
だが、好奇心旺盛なイライザは違った。

彼女はあろうことか、その水槽がある研究室に
「誰もいない隙を盗み」「丸腰で」忍び込み、
凶暴な(と思われる)未知の研究対象を、
卵で「餌付け」しようと試みた。


どんだけ無謀やねん!(爆) 


水槽から姿を現した半魚人(ダグ・ジョーンズ)は、激しくイライザを威嚇した。
普通の女なら、間違いなく姿を見ただけで卒倒しそうな、異形の生物。

そんな半魚人に威嚇されてもなお、イライザは恐れず踏み留まり、
彼にゆで卵を与えた。
まったく動じないイライザの様子を見て、半魚人は徐々に落ち着いた。
あれは野生動物を手なづける要領と同じだ。


イライザは独自の感性を持った豪傑といえよう。
明らかに、「並の女」じゃない。


こうして、2人の奇妙な交流が始まった。



半魚人に卵を与え、音楽を聴かせ、得意のダンスを踊ってみせて
素朴な反応を見ることはイライザの娯楽だった。

それは、穏やかだが退屈な彼女の日常を華やがせる、秘密のスパイスだった。

当初はペットと遊ぶ感覚で、彼女は「本来の自分」を のびのび解放していた。

イライザは、仲良しの隣人画家(リチャード・ジェンキンス)に
半魚人=「IT」の様子を話して聞かせた。


毎日見慣れ、無邪気に戯れるうち、だんだん愛着はわくもの。
しかも、半魚人には、美しさや感情、知性があった。

それに気づいたイライザの中で、
「IT」は やがて「野生的な彼(HE)」へと変わっていった。

魚心あれば水心。
囚われの半魚人もまた、イライザに「興味」以上の感情を持ち始めていた。


お互いに言葉を持たない2人が、見つめ合いを重ねることで
心の距離を縮めていく描き方は簡潔で美しかった。

  (これは、恋愛映画の古典的手法)




サディストの調査官・ストリックランド(マイケル・シャノン)の画策で
解剖が決まった半魚人を救うため、イライザはまたも大胆な賭けに出る。

半魚人・略奪作戦。

危うい素人計画が成功したのは、
やはり半魚人を守りたかった研究者(実はロシアのスパイ)の協力と、
土壇場で力を貸してくれた画家と同僚のおかげだった。



無事、アパートの風呂場に半魚人をかくまったイライザは、
職場ではストリックランドの尋問やセクハラに毅然と対応しつつ、
自宅では半魚人との愛を育んでいく。


冒頭では「自律して安定しているけれど、輝いてはいない女」だった彼女が、
思いがけず半魚人に恋をし、彼との関係を深めるにつれ、
どんどん表情豊かになり、みずみずしい輝きを放っていく変化は見事だった。

水槽のように水で満たしたバスルームのドアを開けた隣人画家を、
抱き合った半魚人の肩越しに、燃えるような目で見つめたイライザは、
女の私が見てもゾクッとするほど美しかった。




イライザが半魚人に惚れたのは、よく理解できる。
彼は「とてもチャーミング」だから。


半透明のまぶたが きょろっ と動く、つぶらな瞳。

 (目の造形は、別作品で今回オスカーを受賞した辻一弘が担当)

全身ごつごつしたウロコなのに、
なぜか唇だけは柔らかそうで綺麗な形というギャップ。

 (その設定が、まさかラストシーンで生きるとは!)

神々しいヒレ。
ほれぼれするほどセクシーなボディライン。

 (「デビルマン」の世界を彷彿とさせる)

いちいちカッコいい、ポーズや動き。

 (ファルーカを踊るアントニオ・ガデスを連想させる)

なにより萌えたのは、
イライザに鎖骨を撫でられるたび、美しいブルーにチラチラッと発光する様子! 笑

 (人間の男なら「赤くなる」=ゾクゾクッと性的興奮を感じている描写。
  怒って興奮している時=青筋立てっ放し=と違う、表現の細かさに感心。)



しかも、半魚人は「品のよい紳士」だった。 まさに古典的。まさに正統派。

彼は、愛撫による刺激で興奮しても、勢いでイライザを襲ったりはしない。

 (それができる身体能力はあっても)

繊細な愛撫を返し、コミュニケーションを図る。彼の行動は高度に知性的だった。

戸惑ったイライザが突然逃げ出して風呂場のドアを閉めても、
彼は静かに待ち、やがて意を決して戻ってきた彼女を穏やかに迎え入れていた。

 (でも、よく見るとドキドキして呼吸が荒い! この初々しさには萌えるわ)

ワイフ相手に自分勝手なセックスをし、イライザにはセクハラ&パワハラをした、
傲慢で野蛮なストリックランドとは大違いだった。




半魚人と結ばれたイライザは、それまでの地味な服装とはガラリと変わり、
赤いヘッドトレス・赤いコート・赤いヒールで通勤バスに乗り込んだ。

幸せの余韻に浸りながら、うっとりした目で彼女が車窓の雨粒をなぞると、
発車とともに走り出した2つの雨粒は
戯れるように追いかけ合い、大きくなり、やがて、ひとつになった。

その「水の形(The Shape of Water)」は、2人の心の軌跡を象徴していた。

短いけれど、心に響く名シーンだった。

詩的でエレガントなタイトルのつけ方も、気が利いている。





深く考えさせられる多様なメッセージをちゃんと表現しながら
思わず「くすっ」と笑うような大人のユーモアも散りばめられており、
丁寧に作られた、バランスの良い娯楽作品だと私は思う。

オスカー4部門(作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞)をはじめ、
ゴールデングローブ、ベネチア国際映画祭など、多数の賞をとったのも頷ける。


でも、日本ではなぜか、
「全く良いと思わない」「わからない」等、ネガティブな感想の方が多い印象だ。

冒頭の自慰シーンや、ぼかしが入ったセックスシーンばかり注目されて、実に残念。
どちらも目的があって入れられたシーンだけど、決して本筋ではないのに…。

なんだか、映画『SHAME』の時と似ているな、と感じる。

  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1830988396&owner_id=1833905



「密度が高い物語の、どこに注目するか」「それをどのように読み取るか」で
評価が大きく分かれる作品ではあるだろう。

「つるの恩返し(鳥)」「南総里見八犬伝(犬)」「天守物語(妖怪)」など
昔から異類婚姻譚は少なくない。
「半魚人と人間のおばさん」カップル、ええじゃないか。笑




販促リーフに載っていた著名人コメントで、
デル・トロ監督の盟友・町田智弘さんが寄せた

「これは、怪獣少年ギレルモが40年かけて作った、
 すべての The Others(除け者たち)へのラブレターです」

という言葉が印象的だった。



http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=4428004
(以下、レビューの文章です。併せてご覧いただけたら幸いです)



古い映画&音楽のファンにとって、涙ちょちょぎれる傑作。

私が若い頃から大好きな映画『7年目の浮気』(1955)で、
T.イーウェルとモンローがデートで見に行った映画が
『大アマゾンの半魚人』(1954)だった。
モンローは「半魚人は愛を求めているのよ」と感想を述べた。
(その直後、地下鉄の通風孔からの風でスカートがめくれる)

半魚人は愛を求めている。 その言葉は、私の心に刻まれた。

『大アマゾンの半魚人』を6歳の時に見たデル・トロ少年も、
劇中のモンローと同じ印象を持ったらしい。

彼は、幾星霜を経て、半魚人の想いを叶える映画を作った。
オタク魂ここにあり。実に天晴れである。


監督のこだわりは、半魚人の造形と演技に結晶していた。
とにかく美しい!
瞳は愛らしく、ボディはセクシーである。
デビルマンの筋肉表現に惚れ惚れする人なら共感するのでは。

重たい全身スーツを着て静かに佇むだけで強い存在感を放つ
ダグ・ジョーンズは、監督が重用するのも納得の名優だ。


唖者のヒロインが、若くも美しくもない点がまた画期的。
だからこそ、彼女が強く美しくなっていく様がドラマになる。

やはり唖者だが若く美しい人魚姫は、うじうじ悩んだ末に
王子の口づけを得られず、海の泡と消えてしまうのに対し、
このヒロインは果敢に戦った末、半魚人の口づけで生き返る。
なんだか痛快だ。笑


異類婚姻譚、冷戦時代の米ソ対立、マイノリティ差別などなど、
いろんなテーマをてんこ盛りにした大人向けの作品だが、
緻密に構成されており、「私は」非常に分かりやすかった。

半魚人と結ばれたヒロインは全身を幸せな赤に包み出勤する。
バスの窓に踊る2つの雨粒は、恋する2人の心象風景であり、
本作品の不思議なタイトルを簡潔に表現する名シーンだった。


また、唖者のヒロインが、心の内を「歌い上げる」場面は
伝統的なミュージカルの作法に則っており、嬉しかった。

あれは『艦隊を追って』(1936)のセット。
半魚人とヒロインは、アステア&ロジャースばりに踊る。
曲は、古風で品のよいラブソング「You'll Never Know」。

 You'll Never Know, just how much I miss you
 You'll Never Know, just how much I care ...

ヒロインの 純で 一途で もどかしい想いに、グッときた。

だが、「言わなくても」相手にはちゃんと伝わっている。
それが示されるのは桟橋のシーンだ。

半魚人は、手話でヒロインに「一緒に行こう」と語りかける。
ヒロインは「いいえ、もうお別れよ」と泣きながら首を振る。
これぞ古典的かつ正統派のラブ・ロマンス! 萌える。笑

イライザに断られ、心折れる半魚人。うぶな男だ。
でも、ここで終わらないのが、この作品の面白いところ。
甘さと怖さと苦さのブレンドが絶妙で、スピード感も満点だ。


個人的には、えぐい拷問や「指」のエピソードなど
凄惨な暴力表現は少々辛かった。
(半魚人が猫を食ったのは「野生の王国」って感じ。笑)

性表現については、さほど気にならなかった。
「大人の寓話」だから この程度はありじゃない?と思う。

ともあれ、R15のお陰で、劇場に子供がいないのは有難い。

 ーーー 了 ーーー




2回目の鑑賞記 【名作再鑑賞】男たちの物語
  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965614201&owner_id=1833905

【3回目】『The Shape Of Water』脇キャラ詳細分析
  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965839003&owner_id=1833905




THE SHAPE OF WATER Behind The Scenes  https://youtu.be/uj2dI7SdrtE

The Making of Shape of Water (2017) - Cast interviews + Behind the Scenes

   https://youtu.be/0z7gJ5C1muo

The Making of Unconventional Love - Behind the scenes of "The Shape of Water"

   https://youtu.be/hD2ORxGSS9M


The Shape of Water Behind the Scenes & VFX Breakdown - 2018

   https://youtu.be/fIiHDDWNJPE



When Your Catfish Is Actually a Fish (w/ Sally Hawkins) https://youtu.be/LyyqqECQ1z4



メモ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965503711&owner_id=1833905


映研OB会
https://www.facebook.com/groups/225722777454682/permalink/2119651228061818/


 
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