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2018年01月24日10:37

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中国の「戦略的好機」を覆すか 米国の国家防衛戦略、中国を「最も重大な脅威」

 下記は、2018.1.24 付の【湯浅博の世界読解】です。

                         記

 トランプ米大統領の対中政策は、右に左に激しく揺れてとらえどころがない。大統領選中は、中国に対する45%の関税や世界貿易機関(WTO)からの離脱をちらつかせて脅していたが、さすがに実行にまでは至らない。貿易でも安全保障でも、2国間の取引なら勝てると考えてか、多国間の協調を否定する。

 だが、やがて米国だけでは抑止できない時代が到来するかもしれない。

 米海軍大学の予測によれば、中国海軍は2030年までに430隻以上の水上艦と、100隻の潜水艦を保有すると見込まれる。これに対して米海軍は、トランプ政権が273隻から350隻に提案しているものの、米国単独ではいずれ追いつかなくなる(Politico Magazine)。

 さすがに、安全保障にかかわる閣僚、補佐官らは冷静に分析しており、トランプ政権の1周年は、大統領個人とその政権を分けて考えるべきかもしれない。

 マティス国防長官が19日に発表した「2018年国家防衛戦略」も、中国を「国防戦略上、もっとも重大な脅威である」と認定したうえで、同盟国の重要性と貢献を強調していた。長官はさらに、中露を「現状変更勢力」と述べ、テロとの戦いに代わる戦略的な脅威と認識し、特に中国に照準を合わせた。

 この基本戦略は、トランプ大統領が昨年暮れに発表した上位文書の「国家安全保障戦略」にも掲げられていた。だが、多くの戦略項目の上に「米国第一」のフタをしているから、関係国はその実行力を懐疑的にとらえていた。

 今回の国防戦略は、具体策をもってこのフタを外すよう努めているように思える。南シナ海で中国が近隣諸国を圧迫し、「インド太平洋地域で覇権構築を狙っているほか、将来的に米国に取って代わろうとしている」と率直な警戒感を示した。

 中国の戦略家は、米国がテロとの戦いと核拡散の阻止に手を取られるため、2000年から20年までを「戦略的好機」ととらえている。確かに米国は、01年の米中枢同時テロの「9・11」以降、アフガニスタン、イラクと転戦し、シリアのテロ組織との闘いに明け暮れた。

 他方でトランプ政権は、北朝鮮による核・ミサイル開発を封じるため、元来が北のパトロンである中国に、対北圧力で依存せざるを得ない。誰が米国による国際秩序を崩す挑戦者であるかを知りながら、その中国に頼り切るという逆説である。

 しかも、トランプ政権が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱したことで、東アジア諸国からの信頼性を損ない、中国に有利な環境を提供したから習近平国家主席の側近たちが「戦略的好機」と考えて何の不思議もない。

 米国の歴代政権は近年、テロとの戦いを優先事項に挙げていた。今回の国防戦略は、最大関心事をテロリズムに置かず、中国を念頭に「国家間の戦略的競争」にあると懸命に引き戻している。

 中国は米国から「現状変更勢力」と名指しされたことを受けて、「冷戦思考」と批判した。もっとも、昨年秋の第19回中国共産党大会で習主席が21世紀中葉までに「中華民族が世界の諸民族の中にそびえ立つ」と宣言したのは、19世紀の帝国主義思考のようであった。(東京特派員)

 http://www.sankei.com/world/news/180124/wor1801240010-n1.html
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