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2017年12月26日11:16

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日本は途中で逃げるのか?バングラデシュで恨みの声

 下記は、2017.12.26 付の JBpress に寄稿した、姫田 小夏 氏の記事です。

                        記

 バングラデシュがしびれを切らしている。日本が現地で進めている数々のインフラプロジェクトが滞っているからだ。新規の投資誘致も足止めを食らった格好で、なかなか先に進めない状況にある。

 12月14日、日本の国土交通省はバングラデシュの首都ダッカで、「第1回日バングラデシュ・ジョイントPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)プラットフォーム会合」を開催した。

 国土交通省は、バングラデシュを日本のインフラ関連企業にとっての有望市場と捉え、日本企業による現地でのPPP事業の獲得を目的に2015年から調査を行っている。本会合には、日本側からは国道交通省の担当者や現地日系企業の社員が出席。バングラデシュ側から紹介されたPPP候補案件について活発な議論が行われた。

 バングラデシュ側はPPPという枠組みで日本からの投資誘致に弾みをつけたい考えだ。だが、日本企業の腰は重い。関係者の1人は「現地法人はやる気でも、本社がウンといわないケースがある。治安への懸念は相変わらず消えない」と明かす。

 背景には、2016年7月に発生した邦人殺害テロがある。ダッカに出張していた邦人7名が巻き込まれ命を落とした、あの痛ましい事件だ。

 テロ直後、外務省は海外安全情報の中でバングラデシュの渡航レベルを「レベル1」から「レベル2」の「不要不急の渡航中止」へと引き上げた。これをきっかけに日バ間の経済活動は大きく流れが変わってしまった。あれから約1年半が経過したが、日本企業の活動はいまだに正常化していない。


チャンスを前に退却する日本勢


 バングラデシュでの日本企業の委縮は、2016年のテロから始まったわけではない。2014年の総選挙を前に与野党が激しく対立していたバングラデシュでは、ゼネスト参加者が一部暴徒化する「ハルタル」といわれる事態が頻繁に発生した。このとき、現地の日本人は自宅待機を余儀なくされ、日本から訪れるビジネスマンも減少した。その頃から「バングラデシュでは日本の存在感は減少する傾向をみせていた」と立教大学で特任教授として教鞭をとっていたバングラデシュ出身のサイエド・ムルトザ氏は振り返る。

 2014年9月に安倍首相がバングラデシュを訪問した際は、その流れが変わるように見えた。安倍首相は、5年間で最大6000億円の支援を打ち出すことを約束した。現地メディアは連日これを報道し、国民も日本への期待感を高めた。2014年は通算3期目の政権となるハシナ首相が新内閣を発足させた年で、今後5年間は経済活動が盛り上がると受け止められていた。しかし、日本企業はあのテロ事件により、退却を余儀なくされてしまう。

 それは結果的に、同国での中国のプレゼンスをさらに高めることにもなった。中国は2009年頃からバングラデシュに積極的に投資するようになった。大型インフラの受注はもちろん、消費財の流通でも中国はバングラデシュにとって身近な存在になっていた。

 中国は2016年のテロ事件後も腰が引けることはなかった。事件から3カ月後の10月に、バングラデシュを訪問した習近平国家主席は、5年間で最大230億ドル(2兆5300億円)という、日本の支援とは比較にならない金額の投資を提案した。

「街では中国語で書かれた商品広告が目立ち、キャンパスでは『ニーハオ』と挨拶する機会が増えている」――そんな現地事情も聞こえてくる。


このままでは日本の信用が失墜


 中国勢がプレゼンスを高める一方で、萎縮する日本の姿はあまりにも対照的だ。現地ではそうした「日本勢のあり方」に厳しい目すら向けられている。ムルトザ氏は日本側のカウンターパートとして調査に協力してきたが、現状を次のように語っている。

「バングラデシュの社会はすでに通常に戻っている。それなのに企業や財団、大学に至るまで交流は滞ったままだ。日本が落札したダッカ市内の高速都市鉄道の建設も滞っていると聞く。このままでは『日本は中途半端な状態で投げ出した』との印象を与えかねない」

 今秋、日本企業が現地の訪問先から面会を拒否されたという出来事があった。バングラデシュを訪問しようとした会社経営者は、「『今は来ないでくれ』とけんもほろろ。これではビジネスは前に進まない」と訴える。

 事件から1年を経てもなお動きを見せない日本へのいら立ちからか、バングラデシュ政府から日本の政府機関に対し「渡航レベルを下げてほしい」との依頼があったともいわれる。しかし、外務省によれば「レベル2は今後も続く」とのことだ。

 日本人が委縮しているのは新興国においてだけではない。欧州では度々テロが発生しているが、それでも各国からのツーリストで相変わらずにぎわっている。だが、「日本人旅行者だけは戻ってきていない」と英国の旅行会社は嘆息する。

 ちなみに英国社会はテロの痛手からたくましく立ち直っている。社会全体に「委縮していたら彼らの思うツボ」という認識が高く、「あえて普通に生活すべきだという意識を持つ人が多い」(英国駐在の日本の行政機関幹部)のだそうだ。


バングラデシュが中国を選ぶのは当然?


 ご存知のように、バングラデシュは中国の「一帯一路」構想の重要な沿線国である。目下、中国は「陸のシルクロード」ではBCIM(バングラデシュ〜中国〜インド〜ミャンマー)経済回廊の開拓を進めており、「海上のシルクロード計画」ではインドを取り囲むようにして港湾基地の建設を進めている。

 中国の影が延びるバングラデシュでは、あたかも中国がインフラ市場を独占しているかのように見える。だが、バングラデシュ側からすれば「そうせざるを得ない状況にあった」ともいえないだろうか。日本にパートナーシップを求めても応えてくれないのなら、次の選択肢として中国を選ぶのは当然だろう。

 むしろ、見つめ直すべきは日本の過度なまでの“安全第一主義”なのかもしれない。あまりにもリスク回避に捉われていては、逆にビジネスチャンスと国際社会の信用を失うことにもなってしまう。重要なのはリスクを回避するとともに、時々刻々と変化する現地情報をしっかりと読み解くことである。

 https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%af%e9%80%94%e4%b8%ad%e3%81%a7%e9%80%83%e3%81%92%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%8b%ef%bc%9f%e3%83%90%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%87%e3%82%b7%e3%83%a5%e3%81%a7%e6%81%a8%e3%81%bf%e3%81%ae%e5%a3%b0/ar-BBHm58g#page=2
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