【プログラム】
J.S.バッハ:「クリスマス・オラトリオ」BWV248から
第1部「クリスマス第1日(12月25日)の礼拝のための音楽
第2部「クリスマス第2日(12月26日)の礼拝のための音楽
***** 休 憩 *****
第5部「新年の第1日曜日のための音楽」
第6部「顕現節(1月6日,ドイツでは『三王の礼拝』の祝日)のための音楽」
独唱 針生 美智子(ソプラノ)
富岡 明子(メゾソプラノ)
櫻田 亮(テノール)
久保 和範(バリトン)
合唱 札響合唱団
東京バロック・スコラーズ
ウィステリア アンサンブル
長内 勲(合唱指揮)
札幌交響楽団(管弦楽)
マックス・ポンマー(指揮)
2017年12月2日(土),14:00開演,札幌コンサートホールKitara
札響12月定期演奏会では,J.S.バッハの「クリスマス・オラトリオ」から第3部と第4部を除く全曲が演奏された。バッハが長年活動したライプツィヒ出身のマックス・ポンマーの発案で,クリスマス・シーズンの12月にこの作品が取り上げらることになったのだろう。第3部と第4部がカットされたのは,定期演奏会の時間枠に収めるための措置でしょう。それでも,いつもより約30分長い演奏会となった。
いうまでもなく,「クリスマス・オラトリオ」はイエス・キリストの生誕を祝う祝祭的な気分に満ちた作品。ポンマー&札響ほかによる演奏も,救世主の誕生を喜ぶ雰囲気に包まれた演奏である。しかし,その祝祭的なムードは作品がもつパワーの成せる技で,この楽曲の主役である合唱の賜物とは言いかねる。
何を隠そう,札響合唱団はアマチュア・コーラスで,各パートの人数にも不均衡があり,パート間のバランスを取るため東京バロック・スコラーズやウィステリア アンサンブルからの補充でしのぐ。さらに,管弦楽が室内オーケストラ規模まで編成を切り詰めているのに対し,合唱は応援を含めて4つのパートがそれぞれ27人前後,総勢で100人を超える大所帯である。合唱の弱点を人数でカバーする方策なのだろう。確かに音量バランスの上ではオケに匹敵するものの,弾むようなリズムや切れ味の鋭さは犠牲になった。機動性に乏しい一昔前の合唱に戻ってしまったような印象で,祝祭的なムードがかなり殺がれたことは否めない。
とはいえ,合唱はマックス・ポンマーに鍛えに鍛えられたに違いない。そしてクリアーしなければならない最低限のラインを超えていたことも確か。マエストロも大仕事を成し遂げた。
独唱陣にも一部に不満が残る。地元を中心の音楽活動しているソプラノの針生美智子は,演奏会後半の一部を除くと納得のゆく出来映えとは言い難い。キャリアのピークを過ぎてしまったような感がなきにしもあらず。オペラへの出演が多いバリトンの久保和範も好調とはいえないだろう。バリトンがバスのパートを歌っているため,時折低い声を出すのが辛そうに見えることも。ミス・キャストだろうか。
一方,メゾソプラノの富岡明子には好感を持った。彼女もオペラを中心に演奏活動を行なっているようだが,バロック音楽も余裕でこなす幅広い力量の持ち主。しっかりとした存在感を放った彼女の名前はしっかりと心に刻みつけておかねば。バロック音楽での豊富な経験を背景に,ひときわ光彩陸離としていたのはテノールとエヴァンゲリストの二役を見事にこなした櫻田亮。とりわけ彼のレチタティーヴォはこの演奏会の骨組みを構成していたといっても過言ではないだろう。
管弦楽はプロとしての矜持を示すような演奏。なかんずく,通奏低音を担ったチェロ,コントラバス,オルガンはこの日の演奏をリードしていたことはもちろん,櫻田亮のエヴェンゲリストとともに演奏の核を形成していた。なかでも,去る9月に第19代札幌コンサートホール専属オルガニストに就任したマルタン・グレゴリウスは,通奏低音をリードしていたというだけでなく,管弦楽を陰で支えているばかりか,演奏全体の要の役割さえ担っていた。
さまざまな制約のもとでオーケストラが演奏活動を行っていることは,札響だけに限ったことではない。問題はそうした課題に対してどう向き合ってゆくか,少なくとも前向きに対処していることを示す必要がある。だとすれば,2時間という定期演奏会の時間枠を拡大して,札響にとって初演となる「クリスマス・オラトリオ」全曲を演奏する英断を下してもよかったのではないか。
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