『KUBO 二本の弦の秘密』
今年のアカデミー賞でも話題になった、モデルアニメーションの秀作。
CG全盛の昨今、このアナログな手法にこだわった製作陣の熱意にただただひれ伏すばかりだ。
アメリカ人が描く日本ということで、時代設定は戦国時代から江戸時代にかけてだろうか、そこにファンタジーをからめて独特の世界観を出している。
主人公の名前がKUBO(苗字ではなく名前なんだな、これが)だったり、主人公が最終的に身に着ける甲冑や刀が、どう見ても中国のそれだったり、惜しい点も幾つか見受けられるが、おおむね違和感のない仕上がり。
それよりも、物語の落としどころが日本の盂蘭盆会、つまり「お盆」であるところに感動したし、日本のことをよく勉強したなぁって素直に思う。
できれば、今年のお盆時期に公開してほしかったところだ。
日本では一部を除いてほとんどが吹替え版での上映。
関西でも梅田ブルク7くらいしか字幕版を上映してなかったのは残念。
でも、地元のユナイテッドシネマ橿原で上映されるのは、たとえ吹替え版でも嬉しいことである。
エンドクレジットの一部ではメイキング映像も取り込んでおり、最後まで飽きさせない。
スコア担当はダリオ・マリアネッリ。
日本が舞台ということで、和音階、沖縄音階を取り入れたスコアになっているが、そのあたりが濃厚というわけではない。
それでも三味線をフィーチャーするところなど、映画の題材を活かしたスコアづくりで、印象はいい。
字幕版のエンドクレジットではレジーナ・スペクターがザ・ビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」をカヴァー、演奏には三味線もフィーチャーされている。
日本語吹替え版では同じザ・ビートルズのナンバーを吉田兄弟による三味線アレンジにより演奏している。
『泥棒役者』
関ジャニの丸山隆平主演、ということでいわゆるアイドル映画の一作だろう、と正直あまり期待してなかった映画だが、いやいやいやこれが! すこぶる快作に仕上がっていた。
どこか劇団のお芝居を観ているような感じだが、笑わせて、そして最後に泣かせるという脚本家の腕の見せ所であり、本作は見事にそれが全うされていると思う。
多彩な出演者もそれぞれに適材適所(石橋杏奈の役は、当初は出家したあの女優が演るはずだった)で、キャスティングの妙も光っていた。
とにかく、場内は老若男女、入り乱れての客層だったが、そんな人たちが一同に笑う箇所がいくつかあって、こういうところも映画館で映画を観る醍醐味なのだ。
エンドクレジットでメイキング担当でウエダアツシ監督の名前を見つけたよ(笑)
そのエンドクレジットにはもう1シーン残っているので、早々に席を立たないように。
(監督の前作に関わる人物も特別ゲスト出演している)
スコア担当は遠藤浩二。
本作を監督した西田征史氏とは、NHKの朝ドラ『とと姉ちゃん』でもコラボしていた。
遠藤浩二といえば、一連の三池崇史監督作品の印象が強く、スコアもどこか殺伐としたイメージだったが、件の朝ドラのスコアでそのイメージがガラリと変わった。
本作のスコアも、ライトな仕上がりでユニークな旋律が物語を彩る。
エンドクレジットでは関ジャニのナンバーが流れるが、あれはご愛嬌といったところ。
個人的にはスコアで最後まで押し通してほしかったところだ。
『スイス・アーミー・マン』
大都市では9月に公開された本作も、ようやく奈良で昨日から上映。
インモラルな内容だし、日本でも未曽有の猟奇殺人事件が起こったところでもあり、「死体をいじくる」という内容の映画、はたして公開できるのか? と思ったが、あっさり公開された。
ただ、予告編等で受けていたイメージとは大きく違った本編である。
たしかに、死体をあれこれいじくる主人公なのだが、そこに描かれているのは「人生とは?」という壮大かつ深いテーマである。
死体を登場させることで、テーマ性を追求する効果を見出そうとする、演出方法は嫌いじゃないが、多少哲学的な要素もあって、ちょっと難しい印象を受けるかも。
それでも最初から最後まで、とにかく劇中に登場する「オナラ」の回数の多いこと!
「オナラ」で笑わせ、「オナラ」で泣かす。
「オナラ」の前では人は平等である。
たとえそれが死人であっても。
スコア担当はアンディー・ハル&ロバート・マクダウェル。
インディロックバンド、「マンチェスター・オーケストラ」のメンバーなのだそうだが、とにかく驚いたのは、本作のスコア、その9割近くが「アカペラ」なのだ。
そこに主演のポール・ダノ、ダニエル・レドクリフがメイン・ヴォーカルとして参加している。
中でも笑ったのが『ジュラシック・パーク』のテーマをダニエル・レドクリフのメイン・ヴォーカルで歌い上げていること。
♪タララ〜ラ〜ラ〜 ジュラシ〜〜〜クパ〜〜〜〜〜ク♪
勝手に歌詞つけて歌うなよ!(笑)
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