ビルマ戦詩集 自昭和十九年一月 至昭和二十年一月 吉田嘉七
野のはての街 ー 吉田嘉七 ビルマ戦詩集より
イラワジの流れ豊かに
水脈遠く消ゆるサンパン みをとほくきゆるさんぱん
河ぎしの風も黄ばむに
きしめきて牛車ゆれ行く
ロンジーの思いとりどり
人さわに群るる市場や
煙草まく乙女子の手に セリイまくおとめごのてに
香も饐ゆるまひるの日ざし かおりもすゆるまひるのひざし
笛吹くは弔いの列
時ならず小路どよむに
灰色の空に夢むと
マンゴーの青き果ひとつ マンゴーのあおきみひとつ
金色にパゴダ立てども
うれたしや野のはての街
うす濁る河の流れに
わが想い流しやらんか
ヘンサダ市にて
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