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2017年09月13日08:58

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道はるけし ー ビルマ戦詩集より 吉田嘉七

ビルマ戦詩集 自昭和十九年一月 至昭和二十年一月 吉田嘉七


道はるけし ー ビルマ戦詩集より 吉田嘉七

黙止しつつひとすじに鉄路の上を もだしつつひとすじにてつろのうえを
かかなべて、そも、幾夜来りし
戦場に往き往く道の
山より出で、山に入り
ジャングルの樹海を分けて
家も見ず、人影も見ず
この往きて帰らぬ道のはるけさよ

今宵また軋めく貨車に揺られつつ
寝られぬまろ寝の胸に
夜もすがら沁みわたる
月かげよ、夜気の冷たさよ
鉄板は冷えきわまりて凍ゆるばかり

戦友よ、背囊を除け
いざ背をよせむ
身をしかと寄せ合いて暖めむ
熱風の戦野は未だし
おのがじし、おのが身をもて
あ互いに身を暖めむ

兵は、そも幾千人、幾万人 へいは、そもいくちたり、いくよろずたり
かく今日のわれらの如く
この道を揺られ往きしぞ
朝も、昼も、
又かかる夜のくだちにも
戦友の相いたわりつ
帰るなきこの遠道を

われら亦、黙止して往かむ
列車の呻き、軋めき、揺るるにまかせ
月照りかすむ、地のはての
山の幾重を、寒き夜の幾夜を
戦友と、更に身を、心をよせ合いて
相共に、あたためつ、いたわりつ
はるかなる熱砂の戦野へ


泰緬国境にて




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