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2017年08月17日21:01

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【漫画・社会】 セントールとポリコレ棒の悩み

この作品はアニメだけで原作は読んでません。
だから間違いや勝手な憶測があったら、ごめんなさい。
でもさすがに7話まで来ると、その世界観がだいぶ分かって来た。
フォト


架空の社会の日常モノですね。
その世界と言うのは、ぶっちゃけ多種族社会です。
ケンタウロス、猫耳族、天使、悪魔、サチュロス、人魚、その他もろもろ。
複数の種族(もとい交配が可能なので生物学的には同じ人類なのでしょうが)、とにかく身体の構造がまるで違う。
ケンタウロスは身体能力が馬級なので、例えば陸上競技等は多種族とは別に行う。人魚は下半身が魚なので陸上では歩くことも出来ず、例えば彼らの学校はテロの対象にされたら、子供たちは逃げられないので、軍隊によって護衛されている・・・
でも、基本的には同じ学校や会社に通い、同じ町に住み、社会を共有しています。
(また交配すら出来ない、全く別種の知的生物も居て、不可侵条約のもと、交流は行なっている)

考えてみれば、現実の世界でも、多種族社会ってのはあり得たかもしれない。
この地球にも、かつては複数の種類の人類が共存していた時代があったんですから。もしネアンデルターレンシスやフロレーンシスやデニソワ人が滅ばなかったら?

ネアンデルターレンシスの歯
  ↓
フォトフォト

でも別種族が同じ社会を共有するってのは、一筋縄じゃいかないでしょう。
人間ってのは、外見が区別がつかなくても、例えば民族が違うだけで憎みあえる底なしのアホなんですから。
実際それは、彼らも同様で過去には色々あったみたいなんですね。例えば、種族によって身分制が作られたり、奴隷制があったりと。

そんな彼らを強引にまとめあげるには、けっきょく強制力しかないんでしょうね。
彼らの社会では、差別は違法行為で、レイシストと認定されると強制収容所に入れられます。
強制収容所に入れられると言うことは、社会的に死刑宣告に等しく、彼らの間では恐怖の象徴になっている。
だから友達どうしでも、差別と誤解されるようなことがあれば、些細なことでも注意し合っている。
(しかしながら、極端な恐怖に怯えていると言うわけでもない、日常の普通の注意事項の一つにすぎない)。
まあ、一種のディストピア的な側面もある。

基本、この作品はとても面白いんですね。
日常モノとしても、擬似進化論的SFとしても、秀逸です。

けど、僕はどうにも、社会風刺についてひっかかる。
ぶっちゃけ、これはポリコレ棒批判が含まれてるんだけど、これが鼻につく。
もちろん作者は、断じて差別を擁護していません。レイシズムやヘイトは良くない事だなんて、そんなのは常識だって立場にいますね
しかし同時に、ポリコレ棒についても遠まわしながら批判しています。
これが20年前だったら、僕はまったく抵抗が無かったと思う。

僕は「チビ黒サンボ」絶版論争、「ジャングル大帝」絶版論争をリアルで体験した世代です。
カルピスのロゴや、インクのクロンボ・ブランドが、差別を理由に消滅して行く様をリアルタイムで目撃してきた。
手塚さんも石ノ森さんも、首尾一貫して差別に反対してきた人です。真鍋譲治さんの「ジャンク・パーティー」もあきらかに差別を批判した内容の作品だった。
にも関わらず、非難の対象にされた。
主観的に差別の意図が無いのはあきらかな作品までもが、糾弾される。
あきらかに異常でした。
だから僕は、当時は良く言ってたんですよね。こんな見当違いのことをしていたら、差別糾弾の運動が信用を失い、本物のレイシストを利するんじゃないか? と。
現在、まさにその通りになっているように思う。

当時は、ポリコレ棒なんて便利な言葉はありませんでしたね。「言葉狩り」だって、筒井の断筆騒動以降やっと普及したんじゃないですか?
けど、そういう言葉が生まれ普及したのが、最近だって言うのは、なんとも皮肉としか言いようが無いんですよね。
ネットでは、下品で頭の悪いヘイトが溢れ返っていますし、路上でも聞くに堪えない酷いヘイトデモが行われる。
「チビ黒サンボ」絶版論争の当時は、まさかこんな世の中になるなんて、僕は想像だにしませんでしたからね。

こんなご時勢ゆえに、僕はポリコレ棒批判は、どうにもひっかかる。
同じポリコレ棒批判でも、昔と現在では、意味合いがかなり違います。
実際、レイシストは自分のヘイトを正当化するために、盛んにこの言葉を使っていますからね。
それゆえに昔の僕だったらポリコレ棒を批判していただろうけど、現在はそんな単純な考え方は全く出来なくなってしまった。

ところで、良くネトウヨとオタクを同一視する人が居るけど、僕は懐疑的です。
単純にネトウヨは、あらゆるジャンルに居るってだけのことだと思います。
実際ぼくは、日本のオタク・カルチャーは、まだまだリベラルの牙城だと思っていますから(まあ、顕著な例外もありますがね)。

とまれ、この作者の民主主義理解は、正直ぼくは疑問に思ってます(苦笑)
「平等は人権より優先される」みたいな、頓珍漢なセリフが良い例です(苦笑)
サンデルの本のベストセラー以後、普及した用語が出て来る辺り、そこそこ勉強はしていると思うけど、やっぱ中途半端なんですよね。

ただ作者は漫画家なだけあって、表現者の立ち居地だろうから仕方ないのかもしれない。
「差別を無くすためには、表現の自由が抑圧されても仕方ない」
これには納得できないんでしょうね。
うん、これは僕もすごく良く分かる。

ただ僕も差別は他人事じゃないから、もう一方の視点も分かるんですよね。
「表現の自由を守るためなんだから、差別されるぐらい我慢しろ」
これも酷えや、と素朴に思う。
僕的にも、ぜんぜん他人事じゃねーしむかっ(怒り)

この辺り、作者さんはどう思っているのかな?
実際に差別されている人達に取材はしているんだろうか?
これに最近、俄然興味がわいてきている。
アニメが面白いだけに。
あと、クトゥルーのネタがさりげなく入ってるしw
そんなわけで、アニメが終わったら原作の漫画を買ってみようかしら? と最近思い始めています。
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