ある夏の暑い日。
外出先から帰ってきた旦那が、小僧の信吉(しんきち)に言いました。
「あつい
あつい
あつい
今日の暑さはとくべつじゃあ。信吉、すまんが後ろから、そこの大うちわであおいでおくれ」
「は―い
」
信吉は返事をすると、旦那の後ろにまわって、うちわの柄がおれるくらいに力を入れて、大うちわで風を
送ってやりました。
すると旦那の体から、みるみる汗がひいていきます。
「ああ、さっぱりした。信吉、お前のおかげで、汗はどこかへぶっ飛んでいったぞ
」
旦那が気持ちよさそに言うと、後ろの信吉は全身に汗をかきながら言いました。
「そうでございましょう。なにしろ汗は、全部わたくしの方にまいりましたから
」
ちゃんちゃん
(14.8.2)
ログインしてコメントを確認・投稿する