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2017年07月31日14:47

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敵地に眠る戦友に − 吉田嘉七 ガダルカナル戦詩集より



敵地に眠る戦友に − 吉田嘉七 ガダルカナル戦詩集より


大君のみこと畏み、
征き征きてはるかなる海原は椰子の島。
今夷らが立てこもるかの島に        いまえびすらがたてこもる
わが戦友は眠るかな。
めくるめく常夏のジャングルの奥深く突撃し、
再びは帰らざるなり、わが戦友は。
かの日には鉄条網きりひらき、
トーチカに己が身を弾丸と叩きつけ、
名も知らぬ草はらに花と散りぬ。

ああ、君はいまだ敵地に、
屍には雨ふらば雨ふるまま
枯葉掩えば枯葉掩うまま、
草むすや、
とこしえに君は草むすや。

おのれのみおめおめと永らえて、
戦友という名に恥じぬ。
涙して、
ただ涙しておろがみて誓うのみ。

無念ならめ
口おしからめ
御墓だに立てずして
去り来たる戦友、われは。

されど君を
いつまでも空しくも
敵の手にゆだねおくべき。

ああ、荒潮の高鳴りに
われにつづけと、
椰子に鳴る風のおとには
夷らをなべて砕けと、
君は尚叫ぶかな。
必ずや撃ち撃ちて、
今はただわが胸に刻みたる君が御名、 いまはただわがむねにきざみたるきみがみな
かの土にいとしるく書きなして
御墓標はうちたてん みしるしはうちたてん
たてまつる花はなく、
うつふして、そのままに草むせる
わが戦友よ。


<<2 ガダルカナル戦詩集 完>>


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