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2017年07月22日21:55

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諏訪内晶子&ボリス・ベレゾフスキー・デュオ・リサイタル

【プログラム】
1 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調 Op.24「春」
2 ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
     〜〜〜 休 憩 〜〜〜
3 プロコフィエフ:5つのメロディー Op.35bis
4 R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18

(アンコール)
 マスネ:タイスの瞑想曲
 ウォーロック:”カプリオール組曲”より「バス・ダンス」?
 クライスラー:シンコペーション?
 ホイベルガー(クライスラー編):”オペラ舞踏会”から「真夜中の鐘」

 諏訪内 晶子(Vn)
 ボリス・ベレゾフスキー(Pf)

2017年6月23日(金),19:00開演,北広島市芸術文化ホール


ご存知のとおり,諏訪内晶子とボリス・ベレゾフスキーは,1990年チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門とピアノ部門の優勝者。この2人によるリサイタルを聴くのはこれが初めて(のはず)。諏訪内とベレゾフスキーが,どのような演奏を聴かせてくれるのか興味津々。プログラムもヴァイオリンとピアノによるリサイタルの王道をゆくような選曲だ。

そういえば,諏訪内のヴァイオリンを聴くのも久しぶり。一時期は諏訪内晶子,五嶋みどりや庄司紗矢香などの演奏を毎年のように聴くことができたのだが。あれから,随分と時間が経ったものだ。

何年かぶりで聴く諏訪内のヴァイオリンは,実に豊かで美しい響きだ。ふくよかであると同時に磨き抜かれた艶やかさが何ともいえない。さすがチャイコフスキー・コンクールの覇者は違うと思わせる極上の美音である。奇を衒うことのないオーソドックスな解釈ではあるが,それぞれの作品を的確に把握し表現する力も並外れている。ただし,リサイタルの冒頭で弾いたベートーヴェンの「春」には不満が残るが。

初めて聴くベレゾフスキーは,仕上げの完璧さよりも演奏の力強さを重視するピアニストのようだ。諏訪内は表面的にも完璧な仕上がりを目指す方向に行きがちなタイプであるのに対し,ベレゾフスキーは演奏のダイナミズムを追求することに関心が向いているらしい。それがマイナスに作用したのがベートーヴェンの「春」であり,最もプラスに働いたのがヤナーチェクとR.シュトラウスのソナタである。

ベートーヴェンの「春」が必ずしも芳しくなかったのは,ベレゾフスキーの責任ばかりではない。諏訪内のヴァイオリンの音もささくれだっていて,音が汚れたようにきこえる。演奏会の1曲目ではありがちなことなのだが,しばらく聴いていない諏訪内に失望しかけたのも事実だ。そのこと以上に,諏訪内とベレゾフスキーの呼吸が合っていない。二人がチグハグな方向を目指しているようにしかきこえず,空中分解寸前の「春」を聴いているような心地だった。

ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタでは,諏訪内が美音を取り戻すとともに,主導権も完全に掌握する。このチェコの作曲家独特の哀愁を帯びたメロディーを諏訪内はやや骨太の美音で造形してゆく。ヤナーチェクの旋律で諏訪内が目覚めたのかもしれない。陰影に富んだ彫りの深い造形もお見事。ベレゾフスキーは諏訪内に付き従う従者のように,ヴァイオリニストの意図を先回りしてお膳立てを整える。非凡なピアニストの片鱗を垣間見るようだった。

R.シュトラウス若書きのソナタは,これまでに聴いたどの演奏よりも秀逸で,ほぼ理想に近い演奏である。強いていえば,ブラームスの衣鉢を継ぐ作品のようにきこえなくもない。この解釈がどうなのか判断する自信はないが,なぜか説得力に富んだ演奏だったことは間違いない。ブラームスのピアノ協奏曲のような力強さ,ドイツ後期ロマン派の妖艶なメロディー,ドイツ音楽の揺るぎない骨格を諏訪内とベレゾフスキーが息の合った演奏で紡ぎ出す。時折,ベレゾフスキーが力を入れ過ぎて脱線気味になることはあるものの,諏訪内のヴァイオリンがやんわりと制する一幕も。

このヴァイオリン・ソナタが,新ウィーン楽派ではなく伝統的なロマン派の方向を向いた音楽として描くという着眼が成功の大きな要因になったのだろう。今まで聴いた演奏の多くは,この点が曖昧模糊としていたことを二人の演奏を聴いて理解できた。それにしても,随分とスケールが大きくダイナミックなヴァイオリン・ソナタだ。その点はR.シュトラウスの管弦楽作品と共通している。

ベレゾフスキーのピアノは若干粗さが目立つ場面はあったものの,諏訪内ともども演奏家としての格の違いを見せつけた。そして,年に一回程度だとはいえ,こうした演奏会を主催し続けている北広島市芸術文化ホールの姿勢も立派である。

バブルの前後に,まるで雨後の筍のごとく各地で林立した音楽ホールの多くで,いまは閑古鳥が鳴いている惨状に陥っている。長期的な視野でホールの運営を行うスタッフや予算の算段もせず,ただ流行の波に乗ってハコモノだけを造った自治体にとって,ホールを建てることは所詮公共事業に過ぎなかったのだろう。札幌のベッドタウンという好立地が幸いしているという事情があるにせよ,これだけ水準の高い演奏会を毎年開催し続けている気概は見上げたものである。
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