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2017年07月01日22:34

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藤井四段のこれから

■藤井四段、30連勝懸け2日に対局=将棋・竜王戦
(時事通信社 - 07月01日 17:00)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4647521

 広告・広報の世界でパブリシティという言葉がある。通常、会社などが製品・イベントを世間に伝えたい場合、その会社は新聞・雑誌・テレビなどに金を払うことで、それをアピールすることになる。これは今、この時点でも当たり前のようにされているが、そのアピールが必ず効果として現れるかは分からない。それは、そのアピールを見る側の心理として「会社が金を払っている」という認識が働くからである。これが広告・広報の難しいところで、広告代理店などはいかに訴求力のあるCMを作るかに腐心することになる。

 では、パブリシティはどのような手法か。これは会社側が金を払うのではなく、ニュース番組などでタダで取り上げてもらい、報じてもらうものである。この手法の利点は、金を払うCMなどよりも受け手側の信用度が高まることにある。以前、みのもんたが取り上げた食べ物がスーパーからなくなるといった話がよく取り上げられたが、それも受け手側がみのもんたに対する信用で動いたからである。しかし、パブリシティの難しいところはその製品・イベントを取り上げるか否かは伝える側(マスコミ)が決める点にある。どんなに素晴らしいものでも、マスコミ側がそれを伝える価値が乏しいと判断すれば、それを報じることはない。マスコミも商売だから、仕方ないところである。

 ・・・ということを踏まえると、今の将棋界に降ってわいたような藤井聡太ブームがパブリシティの象徴的な話であることを理解しやすいのではないか。何しろ、一連の藤井四段の話はマスコミ側が勝手に報じてくれているのだ。日本将棋連盟は、定款で「本連盟は、将棋の普及発展と技術向上を図り、我が国の文化の向上、伝承に資するとともに、将棋を通じて諸外国との交流親善を図り、もって伝統文化の向上発展に寄与することを目的とする。」としていることから、各地で将棋の普及に努めている。その成果を否定するものではないが、正直なところ、中央マスコミでこのことが取り上げられることはまずない。せいぜい、Eテレの将棋番組で伊藤かりんが伝えるのが関の山といったところだ。といって、連盟は潤沢な金を持っているわけでもないので、金をかけてCMを打つわけにもいかず、日々加盟棋士が普及活動を細々と行っているということになる。

 そこに藤井聡太の登場だ。驚いたのが、実家の母親がスマホではさみ将棋や本将棋を始めたこと。もともと母親は将棋を(素人レベルで)知っていたが、今になって再びやり始めたのは明らかに藤井効果である。スマホで本将棋を指していた母親が「突然駒が相手から飛んできた」と言うから何のことかと思ったら、相手がただ持ち駒を打っただけの話で、ずっこけてしまった。これがパブリシティのすごいところで、昨年で言えばポケモンGOがそれにあたるし、情報番組のディズニーランド特集もパブリシティの一環という側面がある。

 今回、これだけ藤井四段が取り上げられた理由として、将棋界がガチンコ勝負の業界であるということが挙げられよう。全く分野は違うが、プロレスのジャイアント馬場が残したPWFヘビー級王座の38回という防衛回数も藤井に負けない偉業のはずだが、キラー・トーア・カマタに敗れて39回目の防衛に失敗したことがニュース速報などで取り上げられたという話は聞かない。それは、プロレスという業界での話だからに尽きる。プロレスを貶めるつもりはないが、世の中の現実というのはそんなものである。

 藤井四段の強さはもう分かったという感じなので、個人的な興味は「いつまで藤井のモチベーションが保てるか」というところにある。しばらくの間は、タイトル奪取や8冠統一などの目的意識があると思うが、将棋界がつらいのは、野球やサッカーのように「その先の世界」が存在しないこと。日本将棋連盟内での地位を築いてしまえば、それで世界一になってしまうのだ。このような狭い業界で、藤井は絶えず注目を浴び続け、タイトル戦の前夜祭などでは毎回違うメッセージを発しなければならない。羽生三冠の全盛期の時も大変だったと思うが、今は情報の伝わり方が違う。ひとつひとつの発言にも気を遣わなければいけない。そのような環境で一定のモチベーションを維持し続けるというのはかなり難儀である。

 羽生三冠の偉大さはいろいろあるが、一番の凄さは30年にわたって一定の地位・成績を維持し続けていることに尽きる。また、その視野の広さもすごい。以前、Eテレで再放送された「未来潮流 羽生善治・吉増剛造 盤上の海 詩の宇宙(1997年1月放送)」という番組を観たが、一体何が面白いのか分からなかった。また、日曜日朝6台に放送している「NHK俳句」にゲスト出演し、俳句と将棋の類似点をしっかりと語っていたこともあった。羽生三冠の生きている世界が凡人と違うことを感じるところだ。藤井も年齢に似合わないところがあると報じられており、すでに私の書くようなことを飛び越えた世界にいるのかもしれないが、果たして10年後の藤井はどうなっているだろうか。
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