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2017年06月30日11:10

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朝日新聞への反論 自衛隊の存在を明記する憲法改正さえ完全否定する「的外れ」の論理にはあきれる

 下記は、2017.6.30 付の【高橋昌之のとっておき】です。

                       記

 憲法改正がついに現実味を帯びて議論が始まりました。そのきっかけになったのは、安倍晋三首相が5月3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明したうえで、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊の存在を明記するという案を示したことです。

 これを受けて、自民党では6月6日に憲法改正推進本部(保岡興治本部長)がメンバーを補強して、具体的な検討に入りました。同党は年内に改憲案をまとめ、秋の臨時国会中に憲法審査会で示す方針です。公明党や日本維新の会など改憲勢力の動向にもよりますが、早ければ来年1月召集の通常国会で憲法改正が発議され、同年中に国民投票が実施されることになります。

 憲法改正が実現に向けて動き出したことで、各メディアも報道に力を入れ始めました。全国紙4紙の社説をみると、産経、読売両新聞が首相の提案を評価し、改憲論議の加速化を求めています。毎日新聞は首相の提案について「それなりに重要だ」「すべては否定しない」と一定の理解を示しました。これに対し、朝日新聞だけは「9条を改める必要はない」と完全否定しています。

 このコラムでは過去、16回にわたり「朝日・毎日への反論」というタイトルで私の見解を示してきましたが、今回は憲法改正で自衛隊の存在を明記するということさえも完全否定する朝日の論理には、大いに疑問を感じますので、朝日新聞の社説を取り上げながら、問題点を指摘したいと思います。

 朝日は首相の憲法改正提案によほど危機感を覚えたのでしょう。5月だけでも4回にわたって社説を掲載し、9条を改正して自衛隊の存在を明記する必要性を完全否定するとともに徹底批判を展開しました。

 まず、同月4日付は「9条の理想を使いこなす」と題し、安倍首相の提案に対して「自衛隊は国民の間で定着し、幅広い支持を得ている。政府解釈で一貫して認められてきた存在を条文に書き込むだけなら、改憲に政治的エネルギーを費やすことにどれほどの意味があるのか」と疑問を呈し、「9条を改める必要はない」と断じました。

 しかし、これはいまだに自衛隊を憲法違反と主張し、自衛隊のさまざまな活動に反対する学者や団体など一部勢力があることに目を背けた論理です。自衛隊の存在が憲法の条文に明記されれば、こうした意見対立は解消され、本当の意味で国民の支持が得られるのではないでしょうか。

 また、自衛隊の存在について「政府解釈で一貫して認められてきた」としていますが、憲法の運用が政府解釈に委ねられていることに懸念を示してきたのは、他ならぬ朝日であり、従来の主張とは真逆の論理です。政府解釈は閣議決定で変更することができます。仮に自衛隊が政府解釈で「違憲」とされたら、その存在や活動、法体系はすべて否定されてしまいます。しかし、憲法に自衛隊の存在が明記されればそうした余地を完全になくすことができます。

 私は本来、憲法は誰が読んでも国のあり方が分かる明快な記述にすべきだと思っています。その観点で9条は戦後から米ソ冷戦時代まで、自衛隊は合憲か、違憲かの論争を巻き起こしてきました。朝日が言う「国民の間で定着し、幅広い支持」を得てきたのは、平成6年に村山富市政権下で社会党が自衛隊合憲に立場を転換して以降、この20数年間の話です。そしてもはや自衛隊の存在を憲法に明記することは時代の要請であり、遅すぎるぐらいだと思います。これほど重要な課題に「政治的エネルギーを費やす」のはむしろ当然と言えるでしょう。

 また、同日付の社説は「戦後日本の平和主義を支えてきた9条を、変えることなく次の世代に伝える意義の方がはるかに大きい」とも主張していますが、この認識にも疑問があります。戦後日本が平和であり続けられたのは、米ソ冷戦のもと日米安全保障同盟による軍事力の均衡という国際情勢の現実が背景にあったからで、9条だけによるものではありません。

 現に冷戦崩壊後の1990年から91年にかけて起きた湾岸危機・戦争において、日本は多国籍軍に130億ドルの支援をしたにもかかわらず、当時の憲法9条の政府解釈による制約から人的貢献ができず、国際社会からは全く評価されませんでした。朝日の言う「平和主義」は、こうした日本だけが平和であればいいという「一国平和主義」を意味しているように聞こえますが、それでは現在、将来の緊迫化する国際情勢に対応できません。「次の世代」には「一国平和主義」に陥ることなく、国際社会の中で日本がどのようにして平和を守っていくのか、現実的な視点から考えてもらいたいと思います。

 一方、5月9日付の社説は「憲法70年 9条改憲論の危うさ」と題し、「自衛隊の明文化なら理解が得やすい。首相はそう考えているのかもしれない。だが首相のこの考えは、平和国家としての日本の形を変えかねない。容認できない」と主張しました。そして、その理由については「安倍政権のもとで、自衛隊の任務は『変質』させられた。その自衛隊を9条に明記することでこれを追認し、正当化する狙いがあるのではないか」との見方を示しました。

 朝日は、安倍政権が平成26年に集団的自衛権の限定的行使を容認する閣議決定を行い、翌27年にこれに基づいた安全保障関連法を成立させたことに反対する立場から「変質」と指摘しているわけですが、これと憲法に自衛隊の存在を明記することは直接関係しません。朝日が望むような政権が誕生して、集団的自衛権の限定的行使を容認する閣議決定と安全保障関連法を廃止すればいいのですから。したがって、この朝日の論理は反対を正当化するために、無理やり作り上げた理屈としか言いようがありません。

 さらに5月11日付の社説は「憲法70年 首相は身勝手が過ぎる」との見出しで、「そもそも憲法のどの条項をどう変えるかを国民に発議する権限を持つのは国会だ。行政府の長である首相が、その頭越しに具体的な改憲項目や目標年限を示せば、与野党を超えた幅広い合意をめざしてきた憲法審が混乱するのは当然である」と、今度は安倍首相の手法を批判しました。

 しかし、首相の提案はあくまで自民党総裁として行ったもので、それを受けて自民党内で議論が始まりました。自民党が憲法改正案をまとめたら、国会の憲法審査会で提案し、与野党間で議論が行われます。最終的に決定するのは衆参両院の憲法審査会であり、本会議ですから、自民党総裁が憲法改正の提案をしようと何の問題もありません。それで混乱するようなら憲法審の方が問題であり、各党こそ憲法改正に対する具体的な見解をまとめて議論に望むべきでしょう。したがって、この朝日の批判も「的外れ」と言えます。

 5月16日付の社説は「憲法70年 国民分断する首相方針」と題し、自らの世論調査で首相の改憲提案を47%が「評価しない」とし、「評価する」の35%を上回ったことを材料に「民意は二分されている」とし、「首相の意向だからと、世論を二分する改正を数の力で押し通せば、国民の間に深い分断をもたらす恐れがある」と主張しました。

 しかし、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が6月17、18の両日に行った合同世論調査では、憲法改正について「賛成」が55・4%と「反対」の37・5%を上回ったほか、9条を維持した上で自衛隊の存在を明記することには62・0%が賛成し、反対は28・6%にとどまりました。朝日の世論調査とは全く異なる結果で、私の感覚でも自衛隊の存在を明記する憲法改正に対する国民の理解は進んでいるように思えます。

 憲法改正が発議されて国民投票が行われれば、有効投票の過半数で成立します。過半数というのは民主主義の原理ですが、国民が「分断」されるかどうかは、投票結果とそれに対する理解の度合いによります。憲法に自衛隊の存在を明記することについて、私は今後、議論が深まっていけば賛成する人が増えると思いますし、国民投票の結果にも多くの国民が納得すると確信しています。全国紙の中で唯一、完全否定している朝日の主張こそが「分断」をあおっているのではないでしょうか。

 朝日は「護憲」の立場から憲法改正そのものに反対していると思われます。しかし、憲法改正に賛成か、反対かというイデオロギー論争にはもう終止符を打つべきで、現行憲法にはどのような問題があり、改正するとすればどのような内容にすべきなのかという本質的な議論をしていくべきです。

 それを「憲法改正には反対」という立場から、いかなる改正も認めないという硬直的な姿勢は、成熟した国民世論には浸透しないでしょう。朝日には従来の主張にとらわれるのではなく、現実を踏まえた議論を求めたいと思います。

 一方、毎日が憲法に自衛隊の存在を明記することについて「すべて否定しない」「重要な提起だ」と一定の評価を示したことは、従来の主張から現実論に踏み出したものとして評価します。さらに議論を重ねて明確なスタンスを示してもらいたいと思います。

 自民党の憲法改正推進本部が6月21日に開いた全体会合では、9条1、2項を維持して自衛隊を明記することについて賛成意見が相次いだ一方、戦力不保持と国の交戦権否定を盛り込んだ2項を残すことに反対する意見などが出ました。憲法改正それも9条をめぐる論議が本格化したことは大変いいことです。現行憲法の施行から72年。改正に踏み出すことは日本人が思考停止から脱却することを意味します。国民世論を喚起する観点から、自民党だけではなく、各党そしてメディアも本質的な議論を深めていくべきだと思います。 (編集委員)

 http://www.sankei.com/premium/news/170630/prm1706300002-n1.html


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