15年ほど前、家の近くで黒のラブラドルリトリバーを連れて散歩をしている初老のご夫婦に出会った。 ワン君の名前は当時大活躍していた競走馬のナリタブライアンにあやかってブライアンということだった。 リトリバー犬の例にもれずブライアンはとてもひとなつこくいい子だった。
その後、ご夫婦とブライアンとは度々出会い、いつも挨拶をしてブライアンをなぜてやるようになった。
しばらくすると、二人と一匹での散歩からお父さんの姿が消えた。 どうしたのかと案じていると、やがて復活されたのだが、杖をついておられた。 おそらく脳梗塞か何かで倒れられたのであろう。
お父さんは恢復後は杖こそ使っておられたがお元気そうで、また二人と一匹の散歩と出会うことができるようになって、とても嬉しく思っていた。
ところが、やがて、今度はお母さんの姿がみえなくなった。 しばらくしてからお父さんと話をしていてお亡くなりになったということを知った。
その後もブライアンはいつもお父さんに一人に連れられて散歩をしていて、時には住んでいるマンションの前の道でお父さんにシャワーを浴びさせてもらっていたりして、お母さん亡き後のお父さんの心の慰めになっているようだった。
ところが、この半年ぐらい、ブライアンとお父さんの散歩に出会わなくなった。 ブライアンは15歳を超えていたので、もしやと思っていたが、先日お父さんが一人で散歩をしていたので訊いてみるとやはり去年の暮れころにお母さんの許に旅立ったのだとのことだった。
天国で
「お母さん! ボクも来たよ!」
「おや、もう来たの。 もう少しお父さんのところにいてあげればよかったのに」
というような話をしたことだろう。
ブライアン、長い間お父さんとお母さんを、そして私を楽しませてくれてどうもありがとう。
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