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2017年06月10日02:39

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ノロマが走っていく

今日6/9は「Theピーズ 30周年ライブ」を日本武道館に観にいったのだが、ライブみて目頭が熱くなるなんて体験、初めてだった。

ピーズが、結成から30年ですよ、30年。1987年結成で、メンバーも全員50歳を超えてしまっている。
僕がピーズを知ったのは、自身、バリバリにバンドをやっていた大学1年の19歳の頃。
当時学科のクラスが同じで他のバンドサークルにいた友達にCDを借りたのがきっかけなので、30年のうちのべ27年は、僕はピーズとともにあった人生である。
その時借りたのは、ピーズ3枚目のアルバム「マスカキザル」。パンク少年だった僕は、まだまだメジャー路線しか知らなかった当時、このマイナー感溢れる3ピースバンドに度肝を抜かれた。
「マスカキザル」以前に出したアルバムは「グレイテストヒッツ」Vol1およびvol2。そもそも、ヒットもなにもしていないのに「グレイテストヒッツ」と出すあたり、実は、リーダーのハルはアルバム出してバンドを終わりにしようとしていたんじゃないか?
当時のピーズは「バカロック」というジャンルに分類されていた。アップテンポなビートに、バカっぽい歌詞を歌うという意味で「バカロック」。ハル自身も、「曲が大事で歌詞は適当に言葉をのせているだけ」と語っている。
しかし、何故か突き刺さる「グレイテスト〜」のバカ歌詞。確かに言葉はシモネタありの、おバカな少年のおバカな欲求ありといった具合なんだが、どこかに男の哀しさを秘めたような、思わず口ずさんでしまうようなものだった。
僕がはじめて聞いた「マスカキザル」はシモネタ、性欲を前面に押し出してきているんだが、その全てが男の哀しい性を見事に表現している。歌詞が、ハルが普段使っていると思しき日常言語なので、一見おバカなものに聞こえるが、よく聞いているとしょうもない男の真実をえぐっていて非常に深い。
その後のピーズは、その男の哀しい内面へと入り込んで行き、とうとう堕落した男の鬱病真っ只中の自己否定的歌詞へと向かっていく。
それを乗せる曲は、精緻なコード進行と、熟練していく演奏レベルがあいまって、アルバムを製作するほどに、リスナーとして引き込まれていくバンドとなっていった。
ただし、哀しいほど一般ウケしない。
その代わり、玄人ウケが物凄く、ピーズを評価する、または憧れるアーティストがあまた登場してくる。
(例をあげると、ウルフルズのトータス松本、気志団の綾小路、奥田民生などは相当のピーズフリークで、ライブ等でカバーなどをしている)
その周囲からの崇拝とは裏腹に、リーダーのハルはいつも落ち込んでいて、鬱病一歩手前になったり、厭世的で自己否定したりして、常に危うい。一時は5年間活動休止して、調理師の資格をとるなどしていたので、2000年までのハルは、常に音楽を辞めるつもりだったんじゃないだろうか?
僕もその危うさに、半ばいつかはいなくなるだろうと覚悟しながら、何だかんだと30年。
危うさを乗りこえて存続していくピーズは、歳をとるほどに味わいのある魅力的なバンドへとなっていった。
僕は、リスナーとして、27年。何か人生の岐路に立たされたり、人生が落ち込んでいる局面の時など、その都度ピーズを聞いていた気がする。ピーズによって癒されたということではないのだろうが、麻薬のようにピーズを欲する時が、この歳まであるのだ。

で、今回はそんなこんなで30周年ライブ。
ブルーハーツとか矢沢永吉ほどの知名度はないにせよ、30年もそれなりの知名度があったバンドが、30周年で初の日本武道館。もっとも、ピーズは、薄暗いライブハウスこそがピッタリくるバンドなので、むしろ日本武道館という巨大な場所でやること自体がピンとこないのだが、ピーズが日本武道館でやるって、どんな感じなんだろうと、好奇心は尽きない。
これはもう行くしかないなと思う反面、心の中でどっか観にいくことへの躊躇もあった。
僕は19歳の頃からのべ27年、ピーズを聴いている。若い頃は、ライブハウスまで足を運んだ。ピーズは僕の青春そのものだったわけだ。
歳をとった彼ら。玄人に好まれ、ピーズが大好きなアーティストや音楽関係者に神輿に担がれ日本武道館まで来てしまった彼ら。
正直観るのが怖い。僕が愛したピーズではなくなっているかもしれない。あるいは、ピーズの生き様に一種の嫉妬を覚えて自分が崩壊するかもしれない・・などといろいろな思いが交錯していた。
だが、30周年である。この先はもうないかもしれない。やはり、1ピーズファンとして、歴史の証人になっておかねばきっと後悔する、と思い、直前の1週間前にチケットを購入した。
そして今日、日本武道館へ。
客層は、やはり僕くらいの年代が多い。やはりピーズファンはピーズファンであり続けるんだな、一度あの魅力にはまると、一生モノなんだろうな、と思う。
そして、復帰してから、新たな世代のファン層も出てきて、40代を中心に、20代から50代まで客層の世代がバランスよく分散していた。
日本武道館の2Fの一番後ろ列の席で、不安と期待がない交ぜになりながら開演を待つ。

(↓以降、ピーズのファンじゃなければわからないネタ延々と書きます)
出てきた。
メンバーのハル(Vo,B)、アビさん(G)、シンイチロウ(Dr)。
ハル、アビさんは結成時からのメンバーで、シンイチロウはピロウズとの掛け持ちドラマーでサポートで入ってから20年。ピーズはドラマーが根付かずにメンバーチェンジが激しかったが、シンちゃんが入って以降すでに2/3の月日が経ってしまった。もはや真性ピーズメンバーである。
そして、これだけ大きい会場、天下の日本武道館であっても、この3人きり。両サイドにモニターが設置してあるだけのシンプルな舞台に3人。マイナーなライブハウスのピーズと全く変わらない。
んで、1曲目何が来るかとずっと胸躍らせていたんだが、
まさかの「ノロマが走っていく」
いきなりこれか!
ハルのベース、アビさんのギター・・衰えるどころか、もう達人の域。激しい曲が、味わい深い幽玄の調べ。ハル、声が歳とってシャガれたが、衰えたわけではなく、それがまた味のある胸にしみこむ声。
もともと曲には定評があり、多くのプロがコピーやカバーをしたがる構成なんだが、それが演奏技術の成熟とともに、より磨きがかかった曲になっている!
「ノロマが走っていく」にブワーーーっと涙が出てきた。
音楽を聴いて泣いたことなんてない。しかもピーズは泣かせる曲なんか作らない。
この涙は、30年間の思いなのか?わからない。
続いて間髪をいれずに「とどめをハデにくれ」
のっけから、ファンの期待を裏切らない、いや、良い意味で裏切られている曲が続く。
さらにさらに、往年のファンの心をくすぐる曲が続く。僕は大好きなんだがライブでは滅多にやらない曲がかなり混ざっている。
ざっと覚えているままにセットリストをあげる。

・映画−ゴム焼き
・鉄道6号
・実験4号
・絵描き
・真空管
・3度目のキネマ
・底なし
・オナニー禁止令
・どっかいこー
・シニタイヤツハシネ
・日が暮れても彼女と歩いてた
・ゴーラン
・脳味噌

などなどが、約30曲。もうピーズファンなら、涙ものの曲ばかりで、その都度目頭が熱くなる。
演奏が熟練のレベルに来ているのだが、やっていることは昔のまんま。繰り返すがライブハウスのピーズとなんら変わることなく。
時々、ハルの下らないMCが入るが、くどくなくユーモアがあって良い。
時々、アビさんが感極まってしゃべるが、本当に今日のこの武道館ライブが嬉しいんだなと思わせる。
このアビさん。普段はセメント会社の社長をしている。どちらかというとそっちが本業でピーズは副業みたいなものだが、ハルがピーズのライブやるっていうと、こうして駆けつけてきて職人技のギターを披露するのがカッコイイ。
ギタリストが喰えずにセメント屋をやっているんじゃなくて、アビさんの場合は、セメント屋なんだけど、ギターが超一流のプロレベルって感じだ。
それ以外は、間髪いれずにどんどん演奏を続けて行き、アンコール含めて3時間でぎっしり30曲。
そのシンプルだが濃厚なステージ。
そして最期まで全力投球する3人。50歳過ぎてなお、若い頃よりも強靭なパワーを感じさせる演奏。ハルなんか、もうこれで音楽人生が終わってもいいと思うような歌い方であった。
予想以上に素晴らしく、予想だにしていなかった涙が溢れ、僕は、どこへぶつけていいかわからない興奮をしていた。
ハルが最後に、
「みんな、生き延びていてくれてありがとう。もうそれだけでイイッス」
と言っていた。
いかにもハルらしい、ネガティブな感謝の仕方だけど、素敵な表現だと思う。
生き延びて30年過ごして、また逢える。それだけでいいじゃないか。
ネガティブに生き続けて30年。でも、30年やり続ければ、いつの間にかでっかい存在になっている。
ハルは、「バカロック」と言われていた時代から、実はこのことに気がついていんじゃないだろうか。だとすると、決して「バカ」じゃないロックだ。

そして、全ての曲が終わり、僕の大好きな曲の「グライダー」が演奏されなかったなーと思っていたら、ボーナストラック的に、アビさんのあの独特のギターフレーズが!
「グライダー!来たーー」と思わず叫んでしまう。本当は恥ずかしがりでこういう時に手拍子1つやるのも躊躇する性格なのに、、今日は自分で自分がおかしい。
「グライダー」は、
♪10年前も10年先も おんなじ真っ青な空をみてる
というフレーズで始まり、最後にまた同じフレーズが出て来るんだが、最後のフレーズでハルが
♪30年前も30年先も おんなじ真っ青な空をみてる
とアレンジしていた。
グライダーの低空飛行で、ダラダラとゆっくり進んで30年。
見えているものは飛び始めのときと全く一緒。
それでいいんだよ。
本当に、30年後、何も変わっていないピーズにまた逢えそうな気がする。

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