清水栄一「中村天風に学ぶ絶対積極の言葉」より。
仕事をするなら、一流をめざせ、プロに徹せよ。真剣唯一主義だ。
カラオケブームが始まった頃、音痴が多かった。しかし、それが愛嬌でもあった。さらにカラオケが普及してくるとみんなうまくなってきた。今では、プロ並みのうまい人たちがザラにいる。
演歌歌手の大御所、北島三郎のところに、若い弟子が泣きついてきた。カラオケのせいで、素人の人たちがみんな歌うのがうまくなった、どうしよう、と嘆いた。
この時、北島三郎は「よいか、俺たちはプロなんだ。俺の歌はね、他人(ひと)がどんなに真似ても絶対に出来ないってところが、三か所はあるんだ。
プロは、だれが相手になっても、絶対に譲れないという自分の独特のものを、三つぐらいは持っておかなきゃいけないよ」と諭した。
長嶋茂雄氏が、巨人選手の現役の頃、格好よくベースにスライディングしたとき、勢い余って、指の爪が剥がれそうになった。余りの痛さによく見ると、指と爪の間に、砂が食いこんで血がにじんでいた。早速、医務室で治療を受けた。
医師は手に麻酔をしようとした。長嶋選手は、痛みに堪えながら言った。
「麻酔は止めてください」。
そんな無茶なことと医師は思った。ところが、彼は、麻酔の副作用で、万が一、選手活動に支障があってはいけないからだという。
再三の医師の説得にかかわらず、長嶋選手は拒み続けた。
「どんなに痛くても我慢しますから」。
そして、長嶋選手は、唸り声を必死におさえながら、鬼よりも恐ろしい形相をして、激痛に堪えぬいたという。
「終わりました」とひとこと医者は言って思わず彼に一礼をした。
そして「さすがにプロですね――」と思わず口に出た。
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