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2017年05月24日17:47

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自衛隊を「9条の例外」と記述 朝日「憲法社説」の誤りを正す 駒沢大学名誉教授・西修

 下記は、2017.5.24 付の【正論】です。

                       記

 今月9日付の朝日新聞「社説」に紹介された憲法第9条に関する政府解釈の理解は、完全に誤っている。一見して誤りであることに気づくので、何かフォローがあるかと思っていたが、これまでのところ、何もないようなので、ここで取り上げることとしたい。

 同社説は次のように記述する。

 「自衛隊は歴代内閣の憲法解釈で一貫して合憲とされてきた。

 9条は1項で戦争放棄をうたい、2項で戦力不保持を定めている。あらゆる武力行使を禁じる文言に見えるが、外部の武力攻撃から国民の生命や自由を守ることは政府の最優先の責務である。そのための必要最小限度の武力行使と実力組織の保有は、9条の例外として許容される−−。そう解されてきた」

 問題は、自衛隊の存在を政府が「9条の例外」として許容してきたのかという点である。

 この点について、昨年9月に内閣法制局が情報公開した『憲法関係答弁例集(第9条・憲法解釈関係)』で確認してみよう。同答弁例集の最初の項目には「憲法第9条と自衛権(自衛隊の合憲性)」との表題のもとに、以下のように記されている。

 「憲法第9条は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のほか、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合における我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を行使することは認められているところである。

 同条第2項は、『戦力の保持』を禁止しているが、自衛権の行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力を保持することまでも禁止する趣旨のものではなく、この限度を超える実力を保持することを禁止するものである。

 我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織としての自衛隊は、憲法に違反するものではない」

 ≪協議を重ねた結果なのか≫

 政府は、第9条全体について、わが国が主権国家として固有の自衛権をもつことを否定しておらず、自衛のための必要最小限度の実力を行使することは認められるとしたうえで、第2項については、「戦力の保持」を禁止しているが、「必要最小限度の実力組織としての自衛隊」は、禁止されている「戦力」に当たらず、合憲だというのである。

 政府は、一貫して、自衛隊の存在は「第9条の枠内」で、合憲であると説明してきている。政府は、憲法上、自衛権行使の手段として、「戦力」(自衛のための必要最小限度の実力を超える実力)と「自衛力」(自衛のための必要最小限度の実力)とがあり、「自衛力」(=自衛隊)の保持は合憲であるとの立場をとっている。

 政府が自衛隊の存在を「9条の例外」と解釈すれば、9条軽視として厳しく糾弾され、とても耐えることができないだろう。

 いったい朝日社説は、どの部分をもって、「9条の例外」として、政府が自衛隊を許容してきているというのだろうか。「社説」は、論説委員が十分に協議した結果、社論として外部に発表するものであろう。一記者の記事とは本質的に異なる。まして、朝日は第9条にかかわる政府批判の急先鋒(せんぽう)としての姿勢をとってきている。しかしながら、批判すべき政府の第9条解釈を正しく理解していないとすれば、その批判の根拠はきわめて薄弱なものとなる。信用にかかわろう。

 ≪改正で疑義の解消が必要だ≫

 朝日は、今後も当該社説の通り、政府の自衛隊合憲の根拠を「9条の例外」としてとらえ続けていくのだろうか。そもそも朝日は、自衛隊を合憲、違憲のいずれの存在として解釈しているのか。合憲ならばその根拠は何か? 自衛隊は、政府解釈と同じように、「戦力」でないという立場なのか、あるいはその実態からみて、「戦力」とみるのか。もし、「戦力」であるとみるのならば、その「不保持」を明記している条項との関係でどう説明するのか。

 自衛隊が違憲の存在であるとすれば、わが国の安全をいかにして担保するのか。みずからの立ち位置をはっきり示すことが必要ではないのか。多くの人たちが最も知りたいことではないだろうか。

 政府の解釈は、確かに分かりにくい。その分かりにくさをいつまで放置しておくのか。また、憲法学者の多くや一部政党は、自衛隊を違憲の存在と解している。自衛隊が発足してから63年がたち、国民の間に定着してきている。自衛隊をきちっと憲法に位置づけ、解釈上の疑義を解消することが求められる所以(ゆえん)である。

 国際平和の希求と推進をうたう第9条1項を残しつつ、平和と安全を保持するための国防組織をどう憲法に組み込めばよいのか。ここに焦点を当てた憲法改正論議が進められなければならない。

 (駒沢大学名誉教授・西修 にし おさむ)

 http://www.sankei.com/column/news/170524/clm1705240006-n1.html
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