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2017年05月12日09:29

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中村天風「勇気は勝利をもたらす」



武田鏡村「中村天風の行動力」(東洋経済)より要約。

恐怖の観念は現実になって現れる

私たちは少しでも体調が優れないと、「病気ではないか」「重い病気になって死ぬのはないか」と不安になったり、死の恐怖におののいてしまったりする。

そんな私たちが抱く恐怖観念について、天風はこう断言する。
「恐怖観念、詳しくいえば、病はもちろん、人事一切の出来事に対して、ものを恐れるという気持ちくらい、価値のない結果を人生にもたらすものはない」。

天風はイギリスの哲学者ベーコンの次の言葉を引いている。
「人の大いに怖るるところのものは必ず、遂に襲い来るべし」。

人は「恐ろしい」と思ったとき、その恐怖心が深ければ深いほど、それは恐怖の観念となって心の中に結実し、発動され、ついには現実のものになってしまうというものである。

私たちはいったん恐怖の観念にとりつかれてしまうと、なかなか払拭することができない。

そのためには、天風の指摘するように、恐怖や不安に襲われたら、それをはなから受けつけないことだ。これは、人生を前向きに生きる知恵といってもよいものである。

勇気は勝利をもたらす

天風は次のような昔のことわざを引き合いに出している。

勇気は常に勝利をもたらし
恐怖は常に敗北を招く

私たちの多くは、何かに恐怖心を抱き、不安や不運が生じると、悲観的になってしまう。そうなるのは、天風によれば「勇気」がないからだ。

なぜ、私たちは心配したり悲観したりするのか。天風はその理由を次のように説明する。

「結論的に言えば『勇気』がないからなのだ。否! 勇気が欠けているからだ。勇気はあるのに、出し方がわからないから、人生を活きる際に、非常に勇気が足りないものが出てくるのだ」。

勇気という「気」が体内から少なくなったら、いくら気持ちを積極的に持ちたいと思っても、いざというときに積極的にはなれない。

ここでいう「気」とは、大宇宙の中にある「精気」のことだ。この精気の中には、精気の気と消極の気が混在し、遍満している。しかも、その気は人間の心の気分と常に連動しているから、積極的なことを考えれば「プラス(正)」の気が入ってくるし、消極的な気分になれば「マイナス(負)」の気が入ってくる。

それが天風の理論だが、大宇宙に遍満する精気が、人間の中にある気と常に同じように働いているとすれば、そのプラスの気を取り込めばいいということになる。

そのためには、心を常に積極的に持つことだ。それを妨げる弱気や不安、悲観的な気持ちは一掃すればいい。そして、それには「勇気」が必要なのだ。

天風は断言している。
「人生修養の最彼岸点は、いつも勇気の溌剌たるものがなければけない」。

この場合の「勇気」は、何に対しても怖れない気持ちを持つことである。この「勇気」によって、さらに私たちは人生を積極的に活きることができるのだ

勇気こそ生きることの前提だ

さらに天風は、「勇気溌剌」ということが人生では大切だ、と説いている。

勇気溌剌とは、虚心平気の状態でいることだ、と天風は言う。虚心とは、わだかまりや先入観を持たない心のこと。平気とは、物事に驚いたり、困難な状況にあっても挫けたりしない心ことだ。

つまり「虚心平気」とは、落ち着いて穏やかな心のことである。そして、この心を保つには、「勇気」を常に心の中からなくしてはいけないのだ。

「勇気」があるから「虚心平気」になって、さまざまな人生の問題に対応することができる、それも、積極的に、である。そして、積極的であればあるほど、「虚心平気」の境地を保つことができるし、「勇気」はさらに強くなってくる。

これが天風の説くところの「積極心の好循環」と言うべきものであろう。

天風は、勇気がないから消極的な心や気持が起ってくるとして、こう語っている。
「ものごとを怖れるとか、不安になるとか、神経過敏とかいうことが、心を消極的にする原因のように考えているが、それらは原因でなく結果なのである。尻と頭を間違えている。原因は勇気が欠けているからで、消極的な心や気持が起ってくるのである」。

そして天風は、自身が経験した次のような事例を語っている。
それは、磐城炭鉱で起きたストライキを調停するために、単身で炭坑夫たちが立てこもる炭鉱に出向いたときのことだ。時は大正7年(1918年)。天風がインドから帰国して、実業界で活躍していた頃のことだ。

それまで日蓮宗の名僧といわれた田中智学や陸軍大将の大迫尚道が調停に出向いたが、鉄砲で武装する炭坑夫に拒まれ、なかなか事態は進展していなかった。

天風は警官が止めるのも聞かずに、炭鉱に向かって歩いた。すると、やはり鉄砲の玉が飛んできた。

「女房や娘を売ってまでも、炭鉱に立て籠もって、長い間、経営者と戦い続けている悲惨な労働者を救おうとしてやって来た自分に、弾丸なんか当たってたまるか、いや、当たるはずがない」。

そんな「勇気」に煥発されて「虚心平気」な気持ちで歩いていると、外套に6発の弾丸の跡があったが、かすり傷一つも受けなかった。そうして天風は、心を割った態度で炭坑夫たちと接し、無事に調停の大役を果たすことができたのである。

この体験から天風は、「勇気さえ心から失わなければ、何事もこの世に怖るるものはない」と結論づけている。そして「勇気の踊句」には、「終始一貫、勇気、勇気で押し切るのだ」と説き示している。


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