すると、石工は
太陽になりました。自信満々で四方八方に
強い光を放ちます。
草花をからし、王子であっても貧しい者であっても同様に日差しを照りつけました。しかし、間もなく自分の力に飽きてしまい、またもや石工の心に不満がもたげてきました。
そこに
雲がやって来て
太陽を覆い隠したので、石工は腹を立てて叫びました。
「くそっ、雲にこんなみじめな思いをさせられるなんて、ああ、わしも雲になったら他を負かせるのになあ
」
すると、山の精霊は答えました。
「そなたの望みを叶えましょう。雲になれ
」
次の瞬間、石工は雲になって
空に浮かんでいました。自分が太陽の強い日差しをさえぎると
植物が再び緑を吹き替えし花を咲かせたので、石工は喜びを感じました。
しかしまだ満足はできず、来る日も来る日も
雨を降らせ、川をあふれさせ、田畑を水浸しにし、村々を破壊したした。
そんな中で、岩山だけはびくともしませんでした。石工は驚き
叫びました。
「なんだと!岩が一番強いのか?わしも岩になれたらなあ
」
すると山の精霊は答えました。
「そなたの望みを叶えましょう。岩になれ
」
石工は何も動じない岩になりました。
太陽の強い日差しも
洪水もどうってことありません。
「とうとうこの世で一番強くなれたぞ
」と石工は思いました。
ところがある日、足元で奇妙な音がしました。見ると、
人間が岩肌を削り出しています。
恐怖でブルブル震えていると、大きな岩のかたまりが切り取られて地面にころげ落ちました
彼は叫びました。
「なんてこった
あのちっぽけな人間が岩より強いというのか
ああ、人間にもどれたらなあ
」
すると山の精霊は答えました。
「そなたの望みを叶えましょう。もう一度、人間になれ
」
そして石工は、
汗だくになりながら仕事に精を出す日々に戻りました。
硬いベッドや粗末な食事
に不満を言うこともなく、毎日の生活に幸せを感じます
💕
山の精霊の声を聞くことは、もう二度となかったということです。
ちゃんちゃん
ログインしてコメントを確認・投稿する