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2016年12月22日17:17

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NBAの可能性を期待される日本人。八村塁、米名門大学で雄大に育つ。

 下記は、2016.12.22 付の Number Web に寄稿した、宮地陽子 氏の記事です。

                     記

 ワシントン州スポケーンは、ロッキー山脈の西にある小さな町だ。町の真ん中をスポケーン川が流れ、川にかかったアーチ橋が町のシンボルなのだという。大都市の喧噪から遠く離れ、まるで他よりゆっくり時が流れているような空間だ。

 八村塁が18歳にして日本を飛び出して向かった新天地は、そんな町にあるゴンザガ大だった。NCAAトーナメントの常連校で、NBA選手を何人も輩出しているバスケットボールの名門チーム。そこに日本人選手が入ったというだけでも大ニュースなのだが、周囲から八村への評価は予想以上に高かった。

 たとえばアイラ・ブラウン(現サンロッカーズ渋谷。今年日本国籍を取得し、日本代表としてもプレー)。ゴンザガ出身のブラウンは、夏にゴンザガ大で八村と共にピックアップゲームをした一人だ。八村について聞くと、目を輝かせて言った。

 「彼は特別な選手になると思う。私の個人的な意見、そして、ゴンザガのコーチたちから聞いた話を総合すると、いつかNBA選手になると思っている」

ヘッドコーチ、卒業生が八村の能力に感嘆した。

 八村にNBA入りの可能性を感じたのは、ブラウンだけではなかった。多くの卒業生やコーチたちが、夏のワークアウトで八村の能力に感嘆した。

 ヘッドコーチのマーク・フューは、夏の第一印象について振り返った。

 「彼がここに来た時点でちょっとした騒ぎになった。それがまず始まりだった。彼のプレー、特に(速攻などで)1人でオープンコートにいるような状況での彼のプレーは、まわりを『ワォッ』と感嘆させるようなものを持っている」

ドラフト予想サイトが8位指名を予想も……。

 そんな驚きが、外に漏れ伝わるのに時間はかからなかった。7月にはNBAドラフト予想のウェブサイト、NBA Draft.netが、2018年ドラフトの8位で八村塁が指名されると予想したこともあった。

 もっとも、ゴンザガのアシスタント・コーチ、トミー・ロイドは、予想サイトの順位をあまり真剣に受け止めないようにと警告する。

 「ああいったウェブサイトは、時に、クレイジーな予想をすることで注目を集めようとするからね」

 確かに、この手のドラフト予想の順位は簡単に上下する。実際、12月時点で、八村の名前は圏外に落ち、リストから外れている。

 「ルイが20歳の時、どれ位いい選手になるかが大事」

 ロイド・コーチは、八村がこの先NBAに入る可能性を持った選手だということは認めながらも、「言うほど簡単なことではない」とも強調する。

 「あんな予想が出ると世間は、彼が8位で指名されるべきだと考えてしまい、プレッシャーとなる。それは当人たちにとっていいことではない。ルイは彼自身のペースで成長していく。私が気にしているのは、彼が20歳のときにどれ位いい選手になっているか、ということだけだ。彼にもそう言っている。今は毎日練習して、彼が20歳になったときのために土台を築いている。今は、成長するために努力することが、何よりも大事だ」

 それでは今現在、八村はゴンザガのコーチたちからどう評価され、どんな位置にあるのだろうか?

授業が大変で、練習の半分を欠席している現実。

 今シーズンを迎えるにあたって、八村には選手登録されるかどうかのハードルがあった。渡米前にNCAAの最初の基準はクリアし、渡米後に大学入学のための基準もクリアしていたが、選手登録されるかどうかは、また別だった。コーチたちは、まだ英語でのコミュニケーション能力が十分ではない八村をいきなり選手登録するのか、1年間レッドシャツ(練習生)として準備期間を与えて自信をつけさせるのか、ぎりぎりまで迷っていたのだ。

 フュー・ヘッドコーチは説明する。

 「今の彼は授業がかなり大変で、そのために練習の半分に出られていない。そのことが、彼が(バスケットボール面で)遅れを取る原因となっていた」

 そんな懸念材料の一方で、1年目から選手登録して試合に出ることのプラスもあると感じたという。

 「彼が試合に出てプレーする必要があるとも感じた。試合に出て、試合の感覚を味わい、試合の激しさを感じることによって、速く成長することにつながると思った」

大変かもしれないけど、練習生より選手登録で。

 何より、八村自身が1年目からユニフォームを着ることを望んでいた。選手登録をしても、当面、出場時間は短いと告げられてもいたが、それでも、試合に出るかもしれないという緊張感を味わいたかったのだという。

 「1年間ずっとベンチに座っているよりは、試合に出ないかもしれないですけど、気持ちの準備だけでもできたら……」と八村は言う。最後に公式戦に出た高校3年12月のウィンターカップから、すでに1年近くの月日がたっていた。

 「あと1年たって、2年間も試合前の雰囲気とか、その前の心の準備とか、緊張とかも忘れてしまったら、そこからプレーが戻ってくるのは難しいんじゃないかなって思って。大変かもしれないけれど、こっち(選手登録)を選びました」

今はまだ、勝負どころでは使ってもらえない。

 開幕から約1カ月半が過ぎ、ゴンザガは11試合を戦った(現地12月20日現在)。そのうち、八村が出場したのは7試合で、出場時間は合計35分。今はまだ、勝負どころでは使ってもらえず、試合の決着がついて、レギュラーメンバーがベンチに下がった後にようやく出番が回ってくる。

 一度だけ、12分の出場時間を与えられた試合があり、そのときは10得点・9リバウンドを記録している。短い時間でも、ブロックや速攻でのダンクなどで潜在能力の一端を見せ、ファンの心をつかんでもいる。

 それでもまだローテーション入りできない最大の理由は、チームのシステムを完全に把握していないからだ。言葉の壁に加え、チーム練習にすべて参加できていないことが妨げとなっているのだ。

 「彼は、まだコート上で何が起きているのかを学んでいるところだ。何が起きているのかわからないのに試合中(勝負が決していない時間帯)に投入するのは難しい。それは彼にとってもよくないし、私たちにとってもよくない。彼の自信にとってよくないし、チームにとってもよくない」とフュー・ヘッドコーチは言う。

最大の課題はやはり、コミュニケーション。

 八村自身も、NCAAの中で自分の力が「通用する」と自信をもって断言する一方で、コーチとのコミュニケーションが最大の課題だとあげる。英語はだいぶ理解できるようになったが、試合中の切羽詰まった状況でコーチから指示されたことを即座に理解するのはまだ難しいという。

 「ヘッドコーチは試合の中では僕にゆっくり教えられないじゃないですか。その中で僕が理解できないとヘッドコーチのストレスになるし、僕もストレスになる」(八村)

 コーチ陣も、八村自身も、今は無理に試合に出てもお互いのためにならないという点で意見が一致している。今、大事なのは辛抱強さだと、コーチたちは言う。八村に対する日本からの期待が、早く結果を出さなくてはいけないというプレッシャーにならないようにと気を使っており、言葉の端々から八村の将来を大事に考えてくれているということがうかがえる。

八村も、指導者も、今は辛抱強く臨むとき。

 フュー・ヘッドコーチは言う。

 「まずは組織だったバスケットボールをどうプレーするかを学ばなくてはいけない。ディフェンスがいない場面で、走ってダンクすればいいというものではないからね。だから、辛抱強さが必要だ。彼はとてもいい選手になる。だからこそ、日本の人たちも辛抱強く待つ必要があるし、私たちも辛抱強く教える必要があるし、ルイも辛抱強くしていなくてはいけない。とてもいい土台を持った、すばらしい選手になれる人材がいるのだから、辛抱強くすることだ。それは彼にとっては残りの人生に大きなプラスになる」

 高いレベルの競争に毎日触れながら、簡単に上下する周囲の評価や、先走りすぎる期待に振り回されない日々。時がゆっくりと流れるスポケーンの町は、今の八村にとって、これ以上ないほど理想的な環境なのかもしれない。

 http://www.msn.com/ja-jp/news/sports/nba%e3%81%ae%e5%8f%af%e8%83%bd%e6%80%a7%e3%82%92%e6%9c%9f%e5%be%85%e3%81%95%e3%82%8c%e3%82%8b%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%ba%ba%e3%80%82%e5%85%ab%e6%9d%91%e5%a1%81%e3%80%81%e7%b1%b3%e5%90%8d%e9%96%80%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e3%81%a7%e9%9b%84%e5%a4%a7%e3%81%ab%e8%82%b2%e3%81%a4%e3%80%82/ar-BBxqSzF?ocid=LENDHP#page=2
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