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2016年12月22日11:42

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中国が恐れる鴻海の「トランプ接近」と「米国逃亡」

 下記は、2016.12.22 付の ダイヤモンド・オンライン に寄稿した、陳言 氏の記事です。

                      記

ソフトバンクと鴻海が共同で米国に570億ドルの投資

 12月6日、ソフトバンクグループの孫正義社長がトランプ次期米大統領に直接会い、米国へ500億ドル投資すると表明したニュースは、中国でも大きく取り上げられた。ただし、重点は少し日本と違う。孫社長と共に語られるのは、台湾に本拠を構える鴻海(ホンハイ)グループであり、ソフトバンクと鴻海の両社が米国に工場を建設するというところに注目が集まっているのだ。

 孫社長がトランプ次期大統領に提示した共同投資の承諾書には「ソフトバンクと鴻海が今後4年間に米国本土で570億ドル(ソフトバンク500億ドル、鴻海70億ドル)を投資し、10万人の雇用を創出する」と書かれている。中国ではこの点がクローズアップされている。

 1年前、鴻海グループ総帥の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は、「すでに30人ほどのグループが米国で視察、調査を進めており、鴻海の業務分野におけるAI(人工知能)技術の応用に関する準備をしている」と明らかにしたことがある。

 本当に鴻海が米国への投資に本腰を入れるとなると、中国は極めて深刻な危機感を持つべきであろう。

 多くの中国人の鴻海に対する認識はまだ「ローエンドの肉体労働者の工場」にとどまっており、そんなローエンド企業が中国を出ていったところで、中国経済はすぐさま「カゴの中の鳥を取り替えて、華麗にアップグレードできる」と考えている。

 しかし、彼らは鴻海こそが「中国の改革開放以来、工業化の最も手堅い成果」であることを知らない。さらに重要なのは、「鴻海がもし中国という土地でアップグレードを果たせないというのであれば、必ず中国の外で果たすだろう」ということである。

 全国民が「バブル転がし」をしているような今の中国の環境において、国内の実体産業で本当にアップグレードのチャンスがあるのは、鴻海のような蓄積があり、資源がある「従来型企業」であって、流行を追いかける「新興産業」ではない。

人類史上最大規模の工業企業と驚くべきその管理能力

 2015年、鴻海グループの年間の営業収入は約4兆5000億新台湾ドルで、現在の為替レートで約9700億元となり、ファーウェイ(華為)、バイドゥ(百度)、テンセント(騰訊)、アリババ(阿里巴巴)という中国で最も知られている企業4社の営業収入を合計した2倍にあたる。

 鴻海は1.7%ぐらいの利益率しかないが、安定性は発注元の企業を上回る。優れたコンシューマーエレクトロニクス製品でビジネス展開しようとするなら、その企業は鴻海と共に端末生産をする必要があるのだ。

 ノキアとモトローラはかつて鴻海の大口顧客だったが、現在彼らは消費市場から消え去った。この間、鴻海はさらに強大になり、逆にノキアの携帯事業を買い取ったほどである。そして、液晶で栄華を極めたシャープを買収して、日本人のプライドをズタズタにした。

 さらに、鴻海は人類史上初の100万人を抱える工業王国である。ベルトコンベア方式の大量生産技術の祖、ヘンリー・フォードはかつて「100万人を管理できる人はいない」と言った。しかし、鴻海は5年前に従業員総数が100万人を超え、人類史上最大規模の工業企業となり、工業生産ラインの頂点を極める存在となった。

 郭会長は、「毎日100万人を管理しなければならないかと思うと頭痛がする」と愚痴を言いながら、依然として人類史上最強の状態で巨大企業を管理している。反応速度、効率、すべてにおいて中小企業に後れを取ってはいない。こうして鴻海は、世界の40%のコンシューマーエレクトロニクス製品を製造しているのである。

 しかも、今の鴻海が持っているのは、決してローエンド製品の製造ラインだけではない。グーグルでさえその特許を買いに来ている。

 鴻海の知的財産権部門の名称は「智権管理部」という。500余人を抱えるグループで、数万件にも及ぶ鴻海の特許を管理している。

 2013〜2014年、グーグルは何度も続けて鴻海に通信技術、ディスプレイ、ウェアラブルデバイスの特許買い入れを求めている。これらの特許を買わなければ、グーグルはハードウェア分野へ参入することができないからだ。

 2011年、鴻海グループは米国における特許取得数で世界9位となったが、ファーウェイが初めてトップ50に入ったのは2014年のことであった。米マサチューセッツ工科大学の世界の特許取得数ランキングにおいて、世界トップ20位の中で唯一ランクインした華人企業となった。

 鴻海はシャープを買収した後、すぐさまシャープに知的財産権管理企業をつくらせた。これは同社にとって、最も重要な資産なのである。

つなげまくる鴻海何をやろうとしているのか

 ここ2年間の鴻海は、世界各地で、また中国国内で、大金をはたいて買収を行っている。

 世界では、前述したシャープや、ノキアの携帯電話事業の買収以外にも、欧米トップのITソフトウェアとハードウェアの整合サービス企業S&Tに投資し、アリババと共同で日本のソフトバンク傘下のロボット企業SBRHに投資する等々。

 中国では、清華大学、北京汽車集団、テンセント、アリババなどの多くの一流企業と提携し、ナノ技術、コアチップ製造、ビッグデータ、新エネルギー自動車、インターネットレンタカー、モノのインターネット(IoT)、Eコマース、金融など多くの領域で投資を行っている。

 鴻海は何をしようとしているのか。

 鴻海の子会社に富士康科技集団という企業がある。電子機器の受託生産(EMS)で世界最大手で、英語名は「フォックスコン」で、キツネとコネクターを合わせた造語である。この二つの言葉は郭会長が最も好きなものだという。

 コネクト──すなわち彼らはつなげている。狂ったようにつなげまくっている。フォックスコンは、中国の改革開放工業史の中でも、集約性が最強で、チェーンが最長で、規模が最大の集成者である。上はトップクラスのブランドとリンクし、下は多くの中小企業とリンクしている。

 郭会長は、「我々は一つのプラットフォームをつくりあげており、多くの中小企業、起業者を助けることができ、今後商品を売ろうとする時には、自前のIT部門さえもいらなくなる。われわれはすべての問題の解決を手伝う。人々は創造力を解き放ち、彼らの創意によるものをこのプラットフォームに載せるだけでよく、そうすればすぐに販売することができる。こうしたものを、われわれは今つくりあげようとしている」と、かつて雑誌『励志人物』(2012年12月26日号)に語った。

 彼がやろうとしているのは、簡単にいえば、製造業のサプライチェーンのシステム開発企業、集成企業、販売ルート企業を提供することである。その結果、すでに世界に対し強大な発言権を持つに至っている。その存在感は、ソフトバンクの孫正義、アリババの馬雲(ジャック・マー)、テンセントの馬化騰といった世界的トップたちがわれ先に鴻海と提携しようとしていることからもわかる。

 郭会長は「本当のインターネット経済は中国ではまだ始まっておらず、現在のインターネット経済は単なる若者の時間つぶし(kill time)にすぎない」と発言しながらも、「現在、機は熟している、と我々は考えている。これまでインターネットは、中国では風見鶏の天国だったが、今後は実力主義者のチャンスになるべきだ。Eコマースでも、クラウドでも、モバイルインターネットでもいい。これら3つのいずれにおいても、鴻海は全世界で強みがある」と明かしている(『21世紀経済報道』など中国メディアより)。

中国はフォックスコンに逃げられてはならない

 アリババグループの王堅CTO(最高技術責任者)は、「製造業からすると、アップルのフォックスコンに対する評価には他のいかなる中国企業も及ばない。もしフォックスコンの能力を解き放てば、中国の製造業全体のイノベーション能力を向上させることができるだろう」と語る。

 しかし、中国社会は現在、技術を蔑視し、製造業を圧迫して矮小化している。郭会長自身も以前、「台湾と大陸では、代理加工業には前途がないとみなされ、特許技術の価値も認められず、土地のようなものだけに価値があると考えられている」と語ったことがある。

 中国の製造業を「創造業」に転換させようとするならば、フォックスコンのような業態を淘汰するのでなく、それを中国の土地でオープン化、プラットフォーム化、インテリジェント化させるべきだ。

 いかなる産業のアップグレードも、すでにある産業チェーンの生態、技術研究開発の蓄積、川上、川下産業をリンクさせる能力の上に成し遂げられるものであって、中身が空っぽでは飛ぶことはできない。

 今では米国やインドが鴻海を狙っているが、いずれも根拠のない行為ではない。

 多くの中国人は「米国のコストは中国よりも高く、インド人は中国より怠け者で、恐るるに足らず」と思っている。しかし、そう高をくくっていると足をすくわれる結果になるだろう。本物の趨勢はひとたび形成されると、挽回しようと思っても難しい。巨頭が行くところに、中小企業群は成長するからである。

 実際、総合コストからみれば、中国はもうそれほどメリットを持ってはいない。もし中国に労働力・知識・技術投入に対する支えがなく、実体経済への畏敬がなく、誰もが投機的売買主導のバブル経済に浸ってばかりいるならば、フォックスコン(鴻海)はここに留まる理由がない。

 郭会長は、「大陸の若者は現在ちょっと道を見失っているようだ。彼らは一足飛びに天に昇ることを望んでいる」と中国新聞社(中国の国営通信社:2012年2月22日付)に語っている。

 天に昇るには、少なくともはしごがどこにあるのかを知らねばならない。もしフォックスコン(鴻海)が中国から逃げ出せば、そこにつながる中小企業群は行き場を失う。中国社会は、大事なはしごを失うことになるだろう。

 (在北京ジャーナリスト 陳言)

 http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%8c%e6%81%90%e3%82%8c%e3%82%8b%e9%b4%bb%e6%b5%b7%e3%81%ae%e3%80%8c%e3%83%88%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%97%e6%8e%a5%e8%bf%91%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%80%8c%e7%b1%b3%e5%9b%bd%e9%80%83%e4%ba%a1%e3%80%8d/ar-BBxq7AP?ocid=LENDHP#page=2
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